Jリーグで機材トラブル…VAR適用不可の異例事態 幻ゴールも決まった“空白の13分”裏側
審判委員会によるメディアブリーフィングを実施、VAR適用不可となった事象に言及
日本サッカー協会(JFA)は7月10日に審判委員会によるメディアブリーフィングを実施。6月26日のJ1第20節、名古屋グランパスと浦和レッズの試合で「ビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)が適用できない」と場内のビジョンに表示された件について説明された。
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当該試合では後半開始直前に「VARの不具合で後半開始が遅れている」と場内アナウンス。池内明彦レフェリーが両ベンチに何かを説明し、選手たちがピッチに揃ってから約2分後の再開となった。そして後半開始直後、場内のビジョンには「現在機材トラブルが発生しており、VARは適用できません」という表示が出された。
そして、ゲームが進むなかで後半13分30秒ごろに場内のビジョンに「機材トラブルが解消されたため、VARが再開」という趣旨の表示が出た。この間に浦和FWブライアン・リンセンが突破を試みてペナルティーエリア内で転倒した場面、フリーキックから浦和DF佐藤瑶大のヘディングシュートがゴールネットを揺らすもオフサイドと判定された場面といった、VARがチェックを行いそうな場面があった。
JFA審判マネジャーの佐藤隆治氏は、原因はレフェリー・レビュー・エリア(RRA)にあるモニター、主審がオンフィールド・レビューの際に映像を確認するものがバックアップと2つとも電源が落ちてしまったことによるとした。これらは審判サイドで何かをできるものではなく、VARが主審との通信ができているのか疑いを持ったことから前半終了直前に発覚したという。
このような場合の予備として会場にはトランシーバーでVARが映像を確認するビデオ・オペレーション・ルーム(VOR)と第4審判が交信する態勢があり、そこに切り替えていたとした。しかし、ハーフタイム明けに主審がモニターに映像が映っていないことを確認し、確認作業をした結果としてVARから主審に対して「VARシステムがNG」と報告があった。この2点の状況から、主審は「VARオンリーレビューの事象のみ使って試合運営をする」と判断し、これを両クラブに説明したという。
トランシーバーで「PKやレッドカードも介入することは可能」
このため、VOR内では前述したリンセンの転倒や佐藤のオフサイドは映像確認をできていたという。仮に佐藤がオンサイドだった場合は、VARからトランシーバー経由で通信が入りゴールを認める判定に修正をすることは可能だった。
また、佐藤マネジャーは「VARがトランシーバーで細かくレフェリーに伝えることができるため、PKやレッドカードも介入することは可能」と、明らかな証拠となり得る映像がある場合にはオンフィールド・レビューが必要な事象で介入することもプロトコル違反にならないと説明した。しかし、「疑義がある、本来なら映像を見て決めることを無理に音声だけでひっくり返せというわけではなく、確固たる情報がある時はトランシーバーで伝えて判定の変更はできる。その時のやり方は監督やキャプテンなどに説明することが必要」とも付け加えた。
その後、RRAモニターが復活してシステムが元に戻ったので両クラブに説明し、VAR再開のビジョンを表示したという流れだったと説明している。佐藤マネジャーは「両監督はじめチームが理解を示してくれた」と、名古屋と浦和に感謝した。
また、このような場合の大原則を「与えられた環境でベストを尽くす」と説明し、例えばこのゲームなら試合終了までシステムが復旧してもVARなしで試合を行うという判断はしないとした。VARが使用するシステムやモニター、12台のカメラ映像のすべてが100%機能しない瞬間があっても同様の考え方をすると説明していた。