G大阪の多彩な攻撃はJ1トップ4でもピカイチ 夏場の消耗戦…上位争いを制する鍵は?【コラム】

G大阪の攻撃を牽引する宇佐美貴史【写真:徳原隆元】
G大阪の攻撃を牽引する宇佐美貴史【写真:徳原隆元】

【カメラマンの目】宇佐美がボールが渡ると攻撃のスイッチが入る確率が高い

 言うまでもないが、リーグ上位に進出しているチームは攻守にわたってプレーのリズムがいい。守備ではボールを持った相手に対して素早く、そして激しい寄せで自由を奪い、攻撃に転じれば手数をかけずに相手ゴールへと迫る。

 7月6日に行われたJ1リーグ第22節ガンバ大阪対横浜F・マリノスの一戦は、攻守に隙のないプレーをピッチで見せたホームチームが4-0と完勝を飾った。G大阪は守備ではエネルギッシュにプレーし、横浜FMが誇る豪華なアタッカー陣を完封。攻撃は坂本一彩やウェルトンの鋭く相手守備網に割って入るドリブル突破や、ボール保持者を味方が次々と追い越し、その前線へと向かった選手に向けてスルーパスを放ち最深部へと進出して行く、多彩な崩しからゴールを量産した。

 攻守にわたって安定感のある試合運びでサポーターたちに歓喜をもたらしたG大阪にあって、宇佐美貴史を中心とした淀みなく相手ゴールを目指す、磨きのかかった攻撃陣の連携は特に目を引いた。

 宇佐美はボールを受ける時の1タッチ目が実に繊細で軽やかだ。トラップミスが少ないため、左腕にキャプテンマークを巻くこのG大阪の7番にボールが渡れば、攻撃にスイッチが入る確率が非常に高い。

 宇佐美は相手のマークを厳しく受けるゴール前でも慌てることなく、対峙した相手DFの間合いを見極め、タイミングよく交わしていく。二重、三重のプレッシャーにも動じることなく冷静にボールをキープし続け、シュートコースが見えると果敢にゴールを狙っていた。派手なプレーではないが、ミスが少ないしなやかな動きから宇佐美の好調さが伺えた。

サイドで攻撃のキーマンになっているウェルトン【写真:徳原隆元】
サイドで攻撃のキーマンになっているウェルトン【写真:徳原隆元】

G大阪は柔の宇佐美と剛のウェルトンが存在感

 試合開始から4分、チームに勢いをもたらす先制点を挙げたのはファン・アラーノ。鹿島アントラーズを経て、G大阪へと移籍してきたが、昨年までのファン・アラーノは両クラブで強いインパクトを残せていなかった。

 だが、そこはサッカーの基本技術が高いブラジル人。ダニエル・ポヤトス監督の指揮も2年目となった今シーズンは、彼が示す戦い方がチームに急速に浸透してきている。そこで、ファン・アラーノは個人技で存在感を発揮するのではなく、戦術を遂行する1つの歯車としての役割に自らの価値を見出したようで、高度な連動性を作り上げるパーツとして上手く機能している。

 G大阪は守備面でも横浜FMにチャンスを作らせなかった。トリコロールの攻撃陣に対して、彼らの連係を断ち切るように、密着マークによる1対1の勝負を果敢に仕掛けていく。横浜FMの攻撃陣は、連携プレーからの崩しを封じたとしてもパワー、テクニックと個人技において高いレベルにある選手たちが揃っている。動きを止め、ボールを奪取するのは容易なことではない。

 だが、中盤の鈴木徳真、最終ラインでは中谷進之介を中心とした守備陣が勝負への激情の魂をプレーに変え、身体を張って局面に勝利し無失点に抑え切った。後半に入るとG大阪は集中力が切れた横浜FMを圧倒し、終わってみれば4-0と結果、内容ともに完勝と言える試合運びを見せた。

 リーグ戦も折り返しが過ぎ、優勝を狙うチームはG大阪に加えてFC町田ゼルビア、鹿島、ヴィッセル神戸に絞られてきた。どのチームも守備が安定し、そして、余計な回り道などせず素早く前線へとボールを運ぶ意識が高い攻撃パターンを持っている。

 この4チームを比較してみると、攻撃に転じた際の相手ゴールへと向かうスピードでは、神戸が最も優れていると感じる。だが、G大阪は柔の宇佐美と剛のウェルトンとタイプの違う選手がいるため4チームの中でも攻撃のパターンが多彩だ。

 これから迎える夏場の消耗戦は、チームとしての戦い方が確立されているとはいえ、技術面において本来の力を発揮するのが難しくなってくる。そうしたなかで4チームがどう乗り切っていくのかが注目される。

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徳原隆元

とくはら・たかもと/1970年東京生まれ。22歳の時からブラジルサッカーを取材。現在も日本国内、海外で“サッカーのある場面”を撮影している。好きな選手はミッシェル・プラティニとパウロ・ロベルト・ファルカン。1980年代の単純にサッカーの上手い選手が当たり前のようにピッチで輝けた時代のサッカーが今も好き。日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員。

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