中国代表は「チーム作りの段階」 W杯最終予選「アジアトップ候補」日本の”攻略法”を母国記者が分析

日本と同組になった中国代表【写真:Getty Images】
日本と同組になった中国代表【写真:Getty Images】

中国人のザン・チェン氏は日本を「アジアで常にトップ候補である」と高評価

 2026年の北中米ワールドカップ(W杯)のアジア3次予選(最終予選)で、日本はオーストラリア、サウジアラビア、バーレーン、インドネシア、そして中国と同組になった。

 中国は2000年代、スン・チーハイがマンチェスター・シティで、リ・ティエがエバートンで活躍するなど、日本よりもプレミアリーグ進出が早かった。また2002年は日韓W杯に出場。グループリーグでは同組に優勝したブラジル、3位になったトルコが同居するという不幸で3敗を喫してしまったが、それでも折からの中国経済の急速な発展をベースに、そのままW杯の常連国になるかと思われた。

 ところが2006年のドイツW杯から5大会連続で出場を逃している。次回のW杯でアメリカに乗り込むことは、彼らにとって悲願だろう。その中国は日本と、そしてこの予選にどう挑もうとしているのか。

 中国初のUEFA(欧州サッカー連盟)とAFC(アジアサッカー連盟)の公式登録フリーランス・ジャーナリストで、現在は北京国安サッカークラブのメディアマネージャーを務める、ザック氏ことザン・チェン氏は、「総合的に見て、日本チームはアジアで常にトップ候補である」と、まずグループの展望を語った。

「どのチームにとっても本当にタフなグループだ。この中では3チームが強い。日本、オーストラリア、サウジアラビアは、ここ数大会のW杯予選で出場経験のあるチームだ。ということは、このグループは2位以内に誰が入るか、興味深い戦いになる可能性が高い」

 そうほかの国を持ち上げつつも、希望を捨てているわけではない。

「私はこのグループが残り3チームにとってあまり絶望的でない可能性があることも強調しておきたい。アクシデントがなければ、強豪トリオが戦力の劣る3チームとの対戦で全勝する可能性があるからだ。そうなればバーレーン、中国、インドネシアの3チームは、次のラウンドに進むための4位決定戦を戦うことになる。それは彼らにとって本当にフェアなことだ」

中国人のザン・チェン記者【写真:本人提供】
中国人のザン・チェン記者【写真:本人提供】

中国は日本戦で「無失点」を目指す

 つまり展開予想としては、上位3チームと下位3チームに分かれるだろうという予測だった。中国、バーレーン、インドネシアは他の3か国に2敗ずつ喫する可能性があり、その場合はこの3か国同士の成績によって4位が決まる。そこでこの3か国の中でトップになれば、グループ4位になり、アジア4次予選に進むことができるのだ。

 そしてその実、強豪と言っている国に対しても諦めているわけではなさそうだ。

 カタールW杯アジア最終予選の中国戦のスコアはアウェーで日本が1-0と勝利し、ホームでも2-0と勝った。それでも僅差だったと言える。そこで今回のスコア予想を聞いてみた。

「実は、今回はどうなるかまったく分からない。なぜなら中国チームはトレーニングとチーム作りの段階にあるからだ。もし彼らが私たちの期待通りに変わってくれれば、無失点で試合を進めたい」

 無失点ということは、少なくとも勝ち点1は狙っているということだ。勝負の世界では謙虚な姿勢ほど怖いものはない。強さを誤認させて勝つというのはよくあることなのだ。では、中国は日本にどのように対抗しようと考えているのか。

「正直なところ、強国トリオに対抗するのは難しいが、それでも適切な戦術を見せるべきだ。ブランコ・イバンコビッチ監督がオマーンを指導した時に、いいパフォーマンスを見せたようにね。イバンコビッチ監督はアジア2次予選の最後の2試合(1-1タイ、0-1韓国)で、新しい選手を多く招集し始めた。エネルギーと意欲のある選手を起用したいという意思表示だ。そして、アグレッシブなプレースタイルを持つ強靭な肉体を持つ選手たちは、彼にとって好都合だろう。チーム・チャイナの守備は彼の最優先事項だろう。

 最近、イバンコビッチ監督は本来プレーしないポジションに選手を配置し、混乱させていると批判された。というのも、今の中国の選手たちは、あまりポリバレントで複雑な役割はこなせないからだ。彼らは具体的で鋭い指示を好む。そういう指示を受けた11人の選手と5人のサブ組がコートで的確にプレーすれば十分な勝ち点を稼ぎ、4位を獲得できる可能性があると私は信じている。2002年のアジア最終予選(UAE、ウズベキスタン、カタール、オマーンと同組で2位のUAEに勝ち点8の差を付けてグループ首位になった)の時と同じようにね」

(森雅史 / Masafumi Mori)

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森 雅史

もり・まさふみ/佐賀県出身。週刊専門誌を皮切りにサッカーを専門分野として数多くの雑誌・書籍に携わる。ロングスパンの丁寧な取材とインタビューを得意とし、取材対象も選手やチームスタッフにとどまらず幅広くカバー。2009年に本格的に独立し、11年には朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の平壌で開催された日本代表戦を取材した。「日本蹴球合同会社」の代表を務め、「みんなのごはん」「J論プレミアム」などで連載中。

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