「3年計画」から4年半…浦和で発生した異例事態、現場&強化中核OUTでヘグモ体制は何処へ?【コラム】
ここ数年のチーム主力が6月末に相次いで退団、主将&副主将が交代
浦和レッズは6月末に3選手が移籍するため退団すると発表した。Jリーグの登録ウインドーや欧州など他地域の移籍市場が開くタイミングであるため、そのこと自体は珍しいわけではないが、その中身がここ数年のチームを主力として支えてきた名前だったことが驚きを与えた。
主将のDF酒井宏樹、副主将のDFアレクサンダー・ショルツ、2022年と23年の副主将だったMF岩尾憲、さらにイタリア・セリエAのASローマから6月末までの期限付き移籍契約だったノルウェー代表FWオラ・ソルバッケンに関しても、交渉がまとまらずに期間満了でチームを離れることになった。
今季に向け、浦和はペア・マティアス・ヘグモ監督が就任し、ここ数シーズンと比べればモデルチェンジの色合いが濃いチーム作りになった。システムも4-3-3に変更され、よりボールを持つこと、守備も高い位置から奪いにいく流れで進んできた。ここまでは得点は増加したものの失点も大幅に増加しているのが事実であり、サイドアタッカーも数多く補強したが負傷者があまりにも多くその効果がどこまで反映されたかには疑問符がつく。
そのなかで、チームを取り巻く環境という意味では昨年末にトップチームの強化責任者だった土田尚史スポーツ・ダイレクター(SD)が退任し、その役割を引き継いでいた西野努テクニカル・ダイレクター(TD)も4月15日に退任。元選手で営業部門や強化部門を歴任してきた堀之内聖氏をSDとして後任の強化責任者に据えた。酒井、ショルツ、岩尾の3人と合わせてみれば、ここ数シーズンの現場と強化の中核が一気に去ったという見方もできるだろう。
一方で、6月26日の名古屋グランパス戦(1-0)、30日のジュビロ磐田戦(3-0)で連勝を飾ったチームは若返った印象も与えるものだった。いずれも30代に入っていた酒井、ショルツ、岩尾が出場していておかしくないポジションに入ったのは、DF石原広教(25歳)、DF佐藤瑶大(25歳)、MF安居海渡(24歳)といった選手たちであり、前線に負傷者が多い関係もあるが、23歳以下パリ五輪世代のDF大畑歩夢やMF武田英寿も連続スタメンでプレーした。後任のキャプテンを務めるMF伊藤敦樹も8月で26歳になる。
また、1993年のJリーグ開幕を浦和の選手として迎えた土田氏や西野氏はいずれも50代半ばだったが、堀之内氏は日本サッカー黄金世代の1つと言われる1979年生まれで10月に45歳を迎える世代。その意味ではクラブが全体的に若返ったという見方もできる。
伊藤は磐田戦後に今後への責任感を語ったが、一方で「前の試合(名古屋戦)からだいぶ若返って、今まで引っ張ってきた選手が抜けた中でうまくまとまっていると思うし、みんなが同じ方向を向いてやっているのは大きいと思う」というチームの雰囲気も話した。そして、新加入が発表されたFW二田理央とMF本間至恩はいずれも欧州からの「逆輸入」獲得だが、二田が21歳で本間が23歳と、すでに海外での経験を積んでいるとはいえ、伸びしろが十分な世代の選手だ。
7月8日に開く登録ウインドーでどれだけ成果を挙げられるか
そうしたチームの中で副キャプテンに任命されたGK西川周作や、今季に再加入したDF宇賀神友弥といった浦和の歴史を知るベテランたちがチームを引き締める役割を担う必要が生まれる面はあるだろう。しかし、若手が増えたことによる躍動感や、磐田戦で見せたようなプレスの強度を維持する運動量に期待が持てるというメリットも存在する。
また、強化の動きという点では酒井とショルツが抜け、大畑がパリ五輪メンバー選出の場合、大会期間中に不在となる最終ライン、特にサイドバックは残りのシーズンで試合がリーグ戦のみという状況の中でも手を打つ必要があると感じられる。ショルツとソルバッケンの退団により、提携国のタイ代表MFエカニット・パンヤを除く外国籍選手も4人となり、枠が1つできた。
堀之内SDは主力の退団にあたっての声明の中で「来年に控えたクラブワールドカップで世界の強豪クラブに対して堂々と渡り合えるチームを作り、ファン・サポーターのみなさまに誇りに思っていただけるような闘いをお見せするその日から逆算して、闘い方の積み上げを図りながら愚直にチーム作りを継続するというクラブの取り組みに迷いはありません」と宣言している。7月8日に開く登録ウインドーでは、新たな強化責任者を中心にした動きがどれだけ成果を挙げられるのかという視点でも見られることになる。
昨季終了から6月末までにクラブの中心だった人物が一気にその場を離れたことは大きな驚きであり、異例という表現になるだろう。しかし、浦和は2019年末に強化体制を一新して、就任した土田SDと西野TDが「3年計画」を打ち出して大きく変革した。それから4年半が経ち、この6月末は次の大きな転換点になりそうな気配を見せている。ここからの浦和がどのようにブラッシュアップされていくのか注目されるところだ。
(轡田哲朗 / Tetsuro Kutsuwada)