名古屋グランパス戦力「中間評価」 “大化け”の24歳はS評価…夏の補強“最優先ポイント”は?【コラム】

名古屋の今季戦力を中間評価【写真:Getty Images】
名古屋の今季戦力を中間評価【写真:Getty Images】

リーグ戦に出場した既存戦力25名をS~Dの5段階で「中間評価」

 長谷川健太監督体制で3季目を迎えた名古屋グランパスは、シーズンを折り返した今季ここまでのリーグ戦20試合で8勝3分9敗の10位と黒星が先行。不安定な戦いぶりが顕著になったなかで、ここまでのリーグ戦に出場した既存戦力25名をS~Dの5段階で「中間評価」したうえで、夏の補強ポイントを考察する。

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 絶対的な“戦力評価”という面で見れば今季の陣容はかなり充実したものにはなった。大化けした24歳DF三國ケネディエブスを筆頭に補強した選手たちは順当に実力を発揮し、既存戦力も昨季に増して良いパフォーマンスを見せている選手が多い。

 無得点での開幕3連敗というアクシデント含みのスタートにはなったが、このチームは苦境にある時は負傷者が、それも主力に続出している時である。新戦力には慣れる時間が必要と考える長谷川監督の大局観ある采配によっても名古屋の選手たちはうまくマネジメントされているところがあり、後半戦へと突入する現状では、起用できる選手の数と信頼度は選手層の厚みと比例する。

 リーグ戦の折り返しを迎えた時点での負傷離脱者はFWキャスパー・ユンカー、MF和泉竜司、DF河面旺成、MF小野雅史の4名。前十字靭帯断裂の小野は今季絶望だが、そのほかの3名に関しては6月終盤から夏にかけての復帰が期待でき、ここから戦力は再び厚みを増していくことになる。

 ルヴァンカップで流れを掴んだMF中山克広が右ウイングバックのファーストチョイスとなり、周囲とリズムが合ってきたMF椎橋慧也がボランチのスタメンを掴んだあたりからチームはステップアップした感があり、開幕当初からチームを牽引してきたFW永井謙佑とMF森島司の負担も減って一時は上位争いへと加わった時期も。

 シーズンの折り返し地点にかけては勝点3がなかなか奪えない難しさも味わっているが、指揮官がよく口にする「ゴール期待値」は常に数字的にも見た目的にも強く感じさせる内容にはできているので、これも長谷川監督がよく言う「決めるところで決めていれば」という部分で今後の戦いはいかようにも変化していくだろう。

決定力不足が顕著も…前線の人材は「不足していない」

 夏の補強に関して、山口素弘GMは「どこに補強するところがある?」と煙に巻くが、前半戦で選手のやり繰りに困ったポジションは明確で、ボランチとウイングバック、できれば左センターバックの3つになる。

 このうち2つを補強できれば、マルチロールの和泉と内田、DF吉田温紀、そして3バックならどこでもこなせる三國で後半戦はまかなえるだろう。残念ながら天皇杯で初戦敗退となったことで試合数は減り、ルヴァンカップは勝ち残っているが連戦のスケジュールはここから減る。

 優先順位としては小野の長期離脱が決まっている左ウイングバックの厚みが出せる補強で、そこに続くのが現状は稲垣と椎橋でほぼまかなっているボランチのセクション。3バックはDF野上結貴とMF内田宅哉、吉田に三國で多重的にフォローできるので、スペシャリティーが必要な2つのポジションに何か解決策を用意したいところ。それができれば和泉を前線に回して攻撃陣が厚くなり、選手起用のマネジメントの質は上がる。

 決定力不足に悩む前線だが人材は揃っている。怪我から復帰したFW山岸祐也が復調し、そこへユンカーが復帰すれば、補強より即効性があるのは間違いない。また監督が期待を寄せる新人のMF倍井謙やMF榊原杏太が殻を破ればアタッカーは激戦区に早変わり。FWパトリックや永井、森島は安定して力を出せているだけに、水物とも呼ばれる攻撃面は引き続き挑み続けるほかないのが現実であり真実だ。

 後半戦も現状の戦いぶりを大きく変える必要はない。3-4-3から4-4-2への可変システムに関してはいかに発展させていけるかがポイントで、右肩上がりの可変の逆、左肩上がりの可変パターンも今後は探ると指揮官は言う。

 繰り返すが人材は揃っており、負傷や慣れ、システムの理解や経験不足などさまざまな理由においてすべての力が出し切れていないところがここまでの勝敗や順位に表れている。そこは名将と呼ばれる監督が現場のトップにいる以上、権謀術数の限りを尽くしてものにしてくるはずだ。

 現時点の大きな課題は、端的に言えば決定力。ここさえ解決できれば、名古屋は一気に浮上する可能性もある。決定機の数も質も、決して不足はしていない。後半戦もリーグとルヴァンカップの両睨みは十分に可能なだけに、“眠れる獅子”たちの目覚めが待たれる。

名古屋グランパスのリーグ戦出場25名「中間評価」S~Dの5段階評価内訳

■S評価
ランゲラック、武田洋平、三國ケネディエブス、森島 司、和泉竜司、内田宅哉、永井謙佑
■A評価
ハ・チャンレ、河面旺成、野上結貴、山中亮輔、中山克広、稲垣 祥、パトリック、ユンカー
■B評価
吉田温紀、米本拓司、椎橋慧也、小野雅史、倍井 謙、山岸祐也
■C評価
井上詩音、久保藤次郎、榊原杏太、酒井宣福
■D評価
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今井雄一朗

いまい・ゆういちろう/1979年生まれ。雑誌社勤務ののち、2015年よりフリーランスに。Jリーグの名古屋グランパスや愛知を中心とした東海地方のサッカー取材をライフワークとする。現在はタグマ!にて『赤鯱新報』(名古屋グランパス応援メディア)を運営し、”現場発”の情報を元にしたコンテンツを届けている。

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