日本代表の6月連戦で唯一“固定先発” 左WGの「鳥肌級」衝撃にOB脱帽「あぁやっぱり」【見解】

日本代表の中村敬斗【写真:徳原隆元】
日本代表の中村敬斗【写真:徳原隆元】

【専門家の目|金田喜稔】中村敬斗が見せた久保建英への“一級品パス”を激賞

 森保一監督率いる日本代表(FIFAランク18位)は6月11日、ピースウイング広島で開催される初の国際試合となった北中米ワールドカップ(W杯)アジア2次予選最終節でシリア代表(同89位)と対戦し、5-0で勝利を収めた。「天才ドリブラー」として1970年代から80年代にかけて活躍し、解説者として長年にわたって日本代表を追い続ける金田喜稔氏は、6月シリーズを通じて唯一“固定先発”となった23歳アタッカーを激賞した。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部)

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 6月シリーズで花実を咲かせた1人はMF中村敬斗(スタッド・ランス)だろう。3バックを採用したミャンマー戦とシリア戦の2試合、唯一同じポジションとなる左ウイングバックで先発起用された選手であり(堂安律は別ポジションで連続先発)、2試合を通じて目に見える結果を残した。

 ミャンマー戦で圧巻の2ゴールを叩き込めば、シリア戦では絶妙なクロスでFW上田綺世(フェイエノールト)の先制となるヘディング弾をアシストし、MF堂安律(フライブルク)のゴールでは起点になる絶妙なパスを通し、開始19分で2点に絡んで見せた。そんな中村のパフォーマンスを金田氏は絶賛する。

「5発のゴールラッシュで日本が完勝したが、ゲームの流れを決める1点目が早々に取れたからこそであり、それは中村のクロスから生まれた。今や中村の存在がチームの安心感の源になっている。躍動した選手は多かったが、シリア戦前半のMVPを選ぶなら中村だろう」

 金田氏がとりわけ舌を巻いたのは、前半19分に生まれたチーム2点目の場面で中村がMF久保建英(レアル・ソシエダ)に通した一級品のパスだった。

「中村は前半1番良かったと言える出来だった。上田へのアシストは極上だったし、堂安のゴールは中村の圧巻パスが起点だった。堂安のゴール前、サイドバックのような位置から中央の久保に通したパスは鳥肌級。まず、あの低い位置で相手に寄せられながら久保が見えていたこと。ワントラップ後に久保の勢いを殺さない約30メートルのパスを通したこと。この2つを具現化した時点で、すでにビッグチャンスを作っていたし、結果的に堂安の見事なゴールへとつながった。起点は中村であり、『あぁやっぱりあそこも見えてるんだ』という嬉しさと驚きがあった」

 6月シリーズのMVPとも言える活躍を披露した中村の存在感は群を抜いており、金田氏も「日本の武器」と評し、進境著しい23歳のアタッカーに惜しみない賛辞を送る。

「中村は視野が広く、キック精度が高いうえ、ドリブルで仕掛けて簡単に取られない。ミャンマー戦ではキック精度の高さを生かして2ゴールをマークしていたが、この日はアシストやゴールの起点としてキック精度が際立った。攻撃の総合力が高く、やっぱり凄いと思わせてくれるプレーぶりだった」

 怪我で戦線から離脱しているMF三笘薫(ブライトン)とのポジション争いも注目を集めるなか、ハイレベルな競争が日本代表にいい刺激を与えそうだ。

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金田喜稔

かねだ・のぶとし/1958年生まれ、広島県出身。現役時代は天才ドリブラーとして知られ、中央大学在籍時の77年6月の韓国戦で日本代表にデビューし初ゴールも記録。「19歳119日」で決めたこのゴールは、今も国際Aマッチでの歴代最年少得点として破られていない。日産自動車(現・横浜FM)の黄金期を支え、91年に現役を引退。Jリーグ開幕以降は解説者として活躍。玄人好みの技術論に定評がある。

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