6月シリーズで見えた中村敬斗の“新たな価値” 日本代表OBが指摘した相乗効果とは?【見解】
【専門家の目|栗原勇蔵】中村敬斗は縦の仕掛けでシリア戦を「攻めやすくした」
森保一監督率いる日本代表は、6月11日に行われた北中米ワールドカップ(W杯)アジア2次予選第6節シリア戦で5-0と勝利した。3-4-2-1の左ウイングバックで先発出場したMF中村敬斗は、FW上田綺世の先制点をアシストするなど活躍。元日本代表DF栗原勇蔵氏は「シリア戦で攻めやすくしたのは中村敬斗の縦の仕掛け」と評価している。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部)
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6月6日に行われた敵地でのW杯アジア2次予選第5節ミャンマー戦に5-0と快勝した日本は、中村とMF堂安律を除く9人のスタメンを入れ替え挑んだ。
3-4-2-1の左ウイングバックでスタメン出場した中村は、前半13分に突破からの左足クロスでFW上田綺世の打点の高い先制ヘディング弾をお膳立て。前半19分には、再び中村がアウトサイドからMF久保建英へピタリとつけるドンピシャのパスで一気にチャンスへ。ラストは堂安へ渡ると、堂安が左足シュートで追加点を挙げた。
中村は前半45分間だけで交代となったが、日本がシリア相手に3-0と試合を優位に進める原動力となった。
日本代表OB栗原氏は、「今日の試合を攻めやすくしたのは、中村敬斗の縦の仕掛け。左の中村敬斗、右の堂安律はともにカットインが得意のなかで、ディフェンスラインとバイタルのところを固めて、カウンター狙いだった相手にそれをさせず、守備に横の幅のコンパクトさをなくした。あれだけスペースがあれば、技術が高い久保も堂安もやりたいように攻められる」と中村がもたらす効果について高く評価した。
栗原氏は右利きの中村が、左足のキックの精度が高いことでも輝きを放っていたと振り返る。
「日本がいい時は、右に伊東純也、左に三笘薫がいて、縦にも中にも行けて幅が出る。相手のディフェンスの距離感を広げられる効果があるのが縦への仕掛け。中村敬斗は縦に仕掛けたあと、左足でクロスを上げられるのも凄い。スピードがあっても『いちにのさん』でセンタリングを上げると、相手に足を合わせられてしまう。中村敬斗はスムーズにセンタリングを上げていて、あれはかなりの武器だと思います」
森保ジャパンの左サイドには、6月シリーズでは招集が見送られた、攻撃の軸である三笘がいる。栗原氏は「三笘は正直、替えの効かないスペシャルな選手」と前置きしたうえで、A代表10試合8ゴールと台頭してきた中村に期待を寄せる。
「右は久保、堂安、伊東と層が厚い。左は三笘一択な感じでしたけど、中村敬斗が結果を残して台頭してきている。面白い選手がどんどん成長していて、どの相手まで通用するのか楽しみです」
9月から始まるW杯アジア最終予選でも、中村のプレーから目が離せなくなりそうだ。
栗原勇蔵
くりはら・ゆうぞう/1983年生まれ、神奈川県出身。横浜F・マリノスの下部組織で育ち、2002年にトップ昇格。元日本代表DF松田直樹、同DF中澤佑二の下でセンターバックとしての能力を磨くと、プロ5年目の06年から出場機会を増やし最終ラインに欠かせない選手へと成長した。日本代表としても活躍し、20試合3得点を記録。横浜FM一筋で18シーズンを過ごし、19年限りで現役を引退した。現在は横浜FMの「クラブシップ・キャプテン」として活動している。