浅野拓磨はどこへ? 移籍の原動力と新天地の指標「試合に出続けてもやっぱり難しい」【現地発コラム】
ドイツ1部ボーフムが契約満了の10選手を発表、浅野拓磨が求める「成長に必要なもの」
ブンデスリーガ2部3位デュッセルドルフとの昇降格プレーオフで奇跡とも思える1部残留を果たしたボーフムは、5月31日に今季限りで契約満了となる10選手との別れを発表。そのリストの中には浅野拓磨の名前もあった。
2021年7月にセルビアのパルチザンから、当時ブンデスリーガへ復帰を果たしたボーフムへと移籍。3シーズンで公式戦90試合に出場し14得点7アシストをマーク。1部リーグの中で厳しい戦力ながら3年連続残留へ大きな貢献を果たしている。
特に昨季(2022-23)は第33節終了時で17位と勝ち点差1の16位と自動降格の危険性も残していた最終節で、強豪レバークーゼン相手に1ゴール1アシストの大爆発でチームを3-0の勝利へと導き、自動残留を果たした。それこそ今季無敗優勝を果たしたレバークーゼンが、リーグで最後に負けた相手こそがこのボーフム戦という事実が何より印象深い。
3年間所属したクラブと別離することになったわけだが、PK戦までもつれ込んだデュッセルドルフでの昇降格プレーオフ後に、「ボーフムに戻ってくる可能性は全然ありますけど」と前置きしたうえで、今後の去就についても少し言及した。
「僕の中では次の成長をしていくために必要なものが、ほかのチームに行けばまた見つかるのかなという感覚がある。今は自分でもどうなるんだろうと思っていますし、なんにも言えないんですけど。ただ、次のステップに進みたいなという気持ち、成長できるチームに行きたいなというのはある」
浅野が吐露「サッカー人生で満足できるシーズンがないんです」
自身がプレーしたい環境を決める要因はさまざまだろう。ヨーロッパを舞台とする戦いに参戦できるUEFAチャンピオンズリーグ(CL)、UEFAヨーロッパリーグ(EL)、UEFAヨーロッパカンファレンスリーグ(ECL)でプレーするクラブでプレーしたいという考え方や、自身のサッカー観と合う指導者の下でプレーしたいという決め方もある。厳しいポジション争いに身を置くことでチャレンジしたいという思いを優先し、移籍先を探す選手もいる。
浅野はどんなイメージを次のステージに描いているのだろうか。
「チャレンジなのかな。とにかく成長したいんですよ。だから成長できるチームに行きたい。どこにいたとしても自分次第なんですけど、環境が自分を成長させてくれるのは間違いない。このチームでも3シーズンやっていろいろなことが分かった。今までのサッカー人生で1シーズンの結果を見て満足できるシーズンがないんです。ボーフムで成長はできました。ただ試合に出続けてもやっぱり難しいものは正直感じる。試合に出続けて結果を残し続けるためには……。(それができたら)1つ先に行けそうな感じもある。それを前半戦に経験できた。前半戦の感覚を持ち続けられるようなチームを求めている感じはある」
十分なブンデスリーガ歴でドイツ国内移籍か、思い切って他国への移籍を決断か
足を止めずに勇敢に戦い続ける姿にボーフムサポーターはいつでも温かい拍手を送っていた。爆発的な瞬発力と何度も長い距離を上下動できる運動量を武器に、猛烈なダッシュでゴール前に飛び込み、加えて思いもよらぬタイミングでシュートを放つ。前線からの守備やボールを収めるスキルも備えている。
ボーフムで3年、ハノーファーで1年、シュツットガルトで2年とブンデスリーガ歴は十分あるだけに、ドイツ国内だと順応もしやすいだろうし、思い切って他国への移籍の可能性も考えられる。
「今の自分がどうこう言うより、未来の自分が過去を振り返って成長できたかどうか感じる」
そんなことをつぶやくように話していた浅野。果たしてどこを次の戦いの場に選ぶのだろうか。
(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。