勝てない札幌…ミシャ監督、異例の30分熱弁 一転解任でも覚悟「クラブがどう判断するか」
東京Vに5失点大敗…怪我人の復帰に期待
北海道コンサドーレ札幌は6月1日に行われたJ1リーグ第17節東京ヴェルディ戦に3-5で敗れ、最下位に転落した。5月29日にシーズン終了までの続投が発表されたミハイロ・ペトロヴィッチ監督だが、主力選手をとどめておくことができないクラブの難しさに直面している。
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続投が発表された直後の大敗をどう受け止めるかという質問を受けたペトロヴィッチ監督は、「今、私は66歳です。49年間、プロの世界で生きています。こういう状況のなかで大事なことは、私がどう思うかとか、私がどう感じているかではない。こういう状況で大事なのはクラブだ。私、監督も、選手も、スタッフも、いつかはクラブを去っていく。しかし我々が去ってもクラブは、そこにある。だからクラブは働く者にとって常に大事なものなのだ」と、前提として最優先なのは自身の去就ではなく、クラブであることを強調した。
そして「私自身、今年で日本では19シーズン目です。広島で6シーズン、浦和で6シーズン、そして札幌は7シーズン目に入っています。フランス時代も5シーズンなどを過ごしましたが、私は比較的に長く1つのクラブで仕事をする傾向にある人間です。私自身、常に心掛けているのは1つのクラブで与えられた環境で、いかにクラブがいい方向に進み、成長していけるか。それを考えて仕事をする人間だ」と言い、世界的な名監督の名前を挙げて、自身の考えを続けた。
「クラブの決定、クラブがどう判断するのか。我々、監督は常にそれを尊重して受け入れていくものだ。その決定に対して、ベストを尽くすことが我々の仕事だと思っている。ジョゼ・モウリーニョ監督は、短期間の中でマンチェスター・ユナイテッド、トッテナム、ローマと3チームを渡り歩いた。それもクラブの決定であり、それが監督業だ。私、ミシャ・ペトロヴィッチが何を思うかと言えば、クラブを大切にして、クラブの決定を大切にする」と、クラブが信頼を寄せてくれる限りは、続投する意向を示している。そして、「私は今の状況でも、必ず我々は這い上がれると信じている。私が思うのは、すべてを我々がやっているすべてのことは、札幌のためだということ」と、クラブのために最善を尽くしており、それを継続する考えを示した。
指揮官が「必ず這い上がれる」根拠にしているのは、負傷者の復帰のようだ。「怪我人である浅野(雄也)、青木(亮太)、宮澤(裕樹)、そういう選手が戻ってくれば、自分たちはまだまだJ1で戦えるチームだ。(鈴木)武蔵に関しても、今シーズンはコンディションが上がらないなかで、怪我も多く、フィットしない状況が続いている」と、この試合で4試合ぶりに出場したFW鈴木武蔵にも言及した。
ペトロヴィッチ監督はクラブが解任の決断をした場合は受け入れる構えを示唆
ペトロヴィッチ監督は、「今、怪我をしている選手が戻ってくるのは、我々のプラスになるし、十分にどこのチームとも戦える力はある。結果が伴っていない試合も非常に今シーズンは多い。そのなかで、どう自分たちが這い上がっていくのか。私はまだ希望を捨てていない」と言いつつも、「最後に言いますが、クラブがどう判断するかは、私は常に承知しています」と、クラブが一転して解任という判断をした場合は受け入れる姿勢も明らかにした。
さまざまな思いが胸の中にはあるのだろう。「私は札幌では、プロフェッショナルな仕事をしてきたと思っている。最初のシーズンは年齢の高い選手が多かった。若い選手を育てながら、1年1年しっかりチームを作り、J1でも一目置かれる存在になったと思う。札幌がどういうスタイルかは、見ている人がしっかり分かるチームを6シーズンで作ったと思っている。大卒で入ってきた選手も、この6シーズンで多くいた。彼らが成長するなかで、チームも強くなった。残念ながら、我々の経営上、資金力がないなかで、そうした選手たちが買われていく現状がある。そのため積み上げていくことができないことが続いている。我々に彼らを引き留める資金力があれば、十分タイトルが狙えたチームになっていただろう」と言い、まず2人の選手の名前を挙げた。
「鈴木武蔵はJ2の(V・ファーレン)長崎から札幌に移籍して成長してJ1で実績を残した。夏に欧州移籍する前に14ゴールを取り、J1の得点ランキングトップに立つような状況で、海外に移籍していた。アンデルソン・ロペス(現横浜F・マリノス)も(サンフレッチェ)広島やFCソウルではレギュラーになれず、札幌で成長して活躍してくれた。彼も得点ランキングの上位にいたなかで、中国のクラブに移籍していった。おそらく、この2人がいればシーズンで25点から30点は計算できた。ビッグクラブでも、そうした選手が移籍すれば、その代わりになる選手を見つけるのは難しい」と切り出すと、その後も次々と札幌を離れた選手たちの名前を挙げていった。
そこには、DF進藤亮佑(現セレッソ大阪)、MF高嶺朋樹(現柏)、MF田中駿汰(現セレッソ大阪)、MF金子拓郎(現ディナモ・ザグレブ)、FW小柏剛(現FC東京)、MFルーカス・フェルナンデス(現セレッソ大阪)、FWチャナティップ(現パトゥム・ユナイテッド)といった選手たちの名前が出てきた。
ペトロヴィッチ監督は「今、名前を挙げた9選手がみんな残り、今いる選手たちとともに、もしくはさらに補強ができていれば、我々はタイトルを狙えるチームだっただろう。チャナティップは推定5億円という大きな移籍金で移籍しましたが、チームにいたら力になってくれたでしょう。そういった選手たちを維持していくことが難しい。1年1年戦っていくなかで、エラーの起こる年が出てしまうのがチームの現状だと思う。もちろんチームは苦しいが、私は札幌が残留できると思っている。それが私とともにであろうが、私とともにでないとしても、とにかく札幌は(J1に)残らないといけないと思っている」と、約30分にも及んだ会見を締めくくった。
(河合 拓 / Taku Kawai)