なぜ浦和ショルツの警告が急増? 81試合3枚→12試合4枚に見る戦術変更の“負担”
ショルツは次節出場停止に
浦和レッズのDFアレクサンダー・ショルツは、6月1日に行われたJ1リーグ第17節ヴィッセル神戸戦(1-1)で今季4枚目のイエローカードを受け、次節セレッソ大阪戦が出場停止になった。2021年の浦和加入から約2年間イエローカードを一度も受けていなかった選手だけに、今季の戦術変更とそれによって懸かる負担の大きさが浮き彫りになっている。
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ショルツは21年夏にデンマークのミッティランFCから加入。直近のシーズンでUEFAチャンピオンズリーグ(CL)に出場し、デンマーク1部リーグのMVPにも輝いていたセンターバックは、強さだけでなく高い守備の技術を披露。21年のシーズン後半戦から22年シーズンのすべてをイエローカードなしで終え、23年8月の第23節がJ1で初のイエローカードだった。最終的に23年はイエローカードを3枚受けるも出場停止にならずシーズンを終え、J1最少失点に大きく貢献してベストイレブンにも選出されていた。
今季の浦和はペア・マティアス・ヘグモ監督が就任し、かなり攻撃的な方向へとモデルチェンジを図っている。特にマイボール時に多くの選手が前線へ参加し、ボールを失った時点からブロックを組むよりも即時奪回を目指す姿勢が鮮明に。その分、センターバックは広大なスペースで相手のカウンター攻撃と対峙せざるを得なくなっている。
この神戸戦も後半43分に逆襲の起点を潰すプレーでイエローカードを受けた。今季は負傷離脱での欠場もあり神戸戦がリーグ12試合目の出場だったが、早くも4枚目の累積となり次節が出場停止に。約2年半、リーグ81試合で3枚しかイエローカードをもらっていなかったショルツにしては信じがたい数字になっている。
ショルツは試合後に残念そうな表情も浮かべながら、「自分の中でも不思議ですね。PKを与えたこともありました。それも今までなかったんですけど、変な感じがします。ちょっと自分にとっては不思議な、変なシーズンだと思います。でも、それはサッカーでは起こり得ることなんですが」と話した。
今季の警告はすべてSPAによるもの
一方で、昨季に比べて明らかに失点が増加し、攻撃的にシフトしたこととは関係なくブロックを組んだ状態からあっさりと突破されてしまうような状況もある。それだけにショルツは、「あとはもう少しハードにプレーしようとしているのかなと思います。チームは全体に強くない部分が見えるので、チームがもっと強いところを表現できるように自分が表現している形なので。ただ、イエローカードに関してはなるべくもらわないようにしないといけません」と話す。
ただし、広大なスペースのカウンターを管理するタスクについては「それも大きな要因ですね。今日のイエローカードは相手がショートで試合を始めて、スペースが広大だったので50メートルを走るよりもカウンターを止めようという判断をしました。誰も周りに味方がいなかったので、僕が止めるしかなかった。これは戦術的な部分なので、攻撃的なサッカーではそのような代代償を払うことになります。チームが本当にオフェンシブにプレーしたいので、うしろはイエローカードが出てしまうような形になってしまいます」と話した。
今季のショルツのイエローカードは公式記録ではすべて「C1(反スポーツ的行為)」とされるもの。相手の大きなチャンスになり得るプレーをファウルで止める、通称「SPA」と呼ばれるプレーによるものだ。その負担の大きさは、このデータがかなり示していると言えるのかもしれない。
最終ラインからドリブルで持ち上がるプレーやPKの正確性なども含め、浦和では「神」とすら称されるショルツ。彼をしてこのような状況に陥るだけに、今季の浦和が見せている攻撃的姿勢の裏側にある危うさも確かに存在している。
(轡田哲朗 / Tetsuro Kutsuwada)