久保建英が“技巧テク”でJリーガーを手玉…連続プレー写真で切り取った“らしさ全開”場面【コラム】
【カメラマンの目】来日ソシエダの久保建英、持てるテクニックで存在感を発揮
スペイン1部レアル・ソシエダは5月29日、「JAPAN TOUR 2024」で東京ヴェルディと対戦し、2-0で勝利した。来日スケジュールを考えれば、ソシエダのどの選手も万全のコンディションで、東京での親善試合に臨んだわけではないだろう。シーズンを戦い抜いた疲労の蓄積がなかったと言ったら嘘になる。試合に対して高いモチベーションを保つことも難しかったはずだ。
しかし、国立競技場のピッチに立ったソシエダの選手のなかで、最も注目されていた背番号14は右サイドを主戦場にして、随所に彼らしいプレーをピッチで描き観客を沸かせた。強行日程で行われた試合で、久保建英は持てるテクニックで存在感を発揮した。
対戦した東京ヴェルディもシーズンの真っ最中ということで、主力を温存し若手主体のメンバー構成でこの親善試合を戦った。しかし、その若手たちが奮闘する。
経験豊富な久保でも自在にプレーをすることができず、訪れた局地戦の多くで勝利したと胸を張ることはできなかった。だが、それでも世界を舞台に戦う久保は、人々の印象に残るプレーをいくつか作り上げ、それを連続写真で記録することができた。
1つは久保が東京V守備網に対して、巧みな切り返しで突破を試みた場面だ。サイドラインをなぞるようにドリブルで敵陣へと進出した久保は、マーカーが接近するとボールの勢いを止めて縦への突破から横への切り崩しに変更する。この素早い展開に東京Vのマーカーは対応できず、尻もちをついてしまう。
それでも東京Vのマーカーは、すぐに立ち上がり久保の動きを止めにかかる。久保は追いすがるマーカーを跳ね返し、さらに新たな敵も左のアウトサイドを使ってボールを逃がして振り切った。ボールの動きに緩急をつけ、素早い方向転換で相手を翻弄する高い技術が詰まった連続プレーだった。
さらにもう1つ印象に残ったのが、マーカーの接近にも慌てない冷静さが光ったプレーだ。ボールを持った久保をマークしようと東京Vの選手が間合いを詰める。久保は前掛かりとなった敵の動きを見逃さず、タイミング良くボールを出して股を抜いてかわした。素早い判断と高い技術が融合したプレーだったと言える。
試合全体としては公式戦ではないため、両チームともに勝敗には強いこだわりを持っていなかった。ソシエダ、東京Vともにメンバーもベストとは言えなかった。しかし、そうしたマイナス要素があるなかで、久保はプレー時間も48分と短かったが、彼らしいテクニックを駆使したプレーで観客を魅了したのだった。
徳原隆元
とくはら・たかもと/1970年東京生まれ。22歳の時からブラジルサッカーを取材。現在も日本国内、海外で“サッカーのある場面”を撮影している。好きな選手はミッシェル・プラティニとパウロ・ロベルト・ファルカン。1980年代の単純にサッカーの上手い選手が当たり前のようにピッチで輝けた時代のサッカーが今も好き。日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員。