J初来日助っ人が勝ち点2失うミス…同僚ら支え、躍動に感慨「失敗したらみんなで補う」【コラム】
湘南戦で逆転勝利導く来日初ゴール、磐田レオ・ゴメス「1発の意義」
ジュビロ磐田はホームのヤマハスタジアムで、湘南ベルマーレに3-2と逆転勝利。6試合ぶりの白星となった。負ければ順位が逆転するという試合で、開始1分にFW池田昌生の右クロスから元磐田のFWルキアンに豪快なヘディングシュートを決められる苦しい立ち上がりとなった。
4-2-3-1の磐田とは非対称の3-5-2をベースとする湘南の機動力の高い攻撃に苦しむまま、同29分にはDFリカルド・グラッサが俊足の福田をペナルティーエリア内で倒してしまいPKを献上。一度は守護神のGK川島永嗣が止めたものの、やり直しとなり2度目はきっちりと決められた。
2点のビハインドを負った磐田を救ったのは怪我から復帰して3試合目となるキャプテンのMF山田大記だった。前半アディショナルタイムに右サイドバックのDF植村洋斗から浮き球の縦パスを受けると、ゴール右でトリッキーにディフェンスをかわして、タイミングよく走り込んできたMF平川怜とのコンビネーションで右のニアゾーンを攻略し、最後は左足で韓国代表GKソン・ボムクンを破った。
驚くほど冷静なフィニッシュを見せた山田に聞くと「前半のラストプレーだったので。その前まで僕がシンプルなプレーを選択していたので、相手もそういうプレーを想定してるだろうなと。ああやって逆のプレーをしました」と振り返りつつ、平川の存在も山田の目には入っておらず、理詰めよりも感覚的なイメージの強いゴールだったことを明かした。
その得点の意味について「チームとしては大きかったと思います。(平川)怜の良い落としもあったので、自分1人でどうこうというのはないですけど、非常に大きなゴールだった」と山田は振り返る。後半は湘南の動きに慣れてきた磐田が、ゴール裏のサポーターや約3000人が招待された地元の小学生の後押しを受けて、まさしくチャントどおりの「磐田の反撃」を見せる。
FWマテウス・ペイショットを生かした攻撃の勢いだけでなく、1対1やセカンドボールの奪い合いでも優位に立ち、背後を湘南に狙われてもセンターバックのDF鈴木海音や川島がカバーして、ラインを下げない。さらに横内昭展監督がMF古川陽介、MF金子翔太、MFブルーノ・ジョゼという勝負のカードを切って攻勢に出たところから終盤に猛攻を仕掛けた。湘南の山口智監督は中盤のテコ入れで支配力を回復しようとするが、シンプルに縦の迫力を出してくる磐田をせき止めることができなかった。
後半37分にはルーズボールをブルーノ・ジョゼが前に蹴り出すと、ペイショットとの競り合いで、湘南ディフェンスがクリアし損ねたところを金子が拾ってドリブルを仕掛ける。ゴール左にポジションを取るペイショットにパスが通ると、ブラジル人FWは右足でゴール右に突き刺した。値千金の同点弾をアシストした金子は「ペイショットに対して、相手が競り合いで、1枚ないし2枚で行ってるので、あそこで潰れてくれたら自分のところに転がってくるな」と振り返る。
「日々の努力、ハードワークする選手だからこそ、余計に嬉しい」
そして後半41分には金子が中央から右ワイドに展開したボールを植村がクロスに持ち込むと、セカンドボールを拾ったMFレオ・ゴメスが思い切って右足を振り抜く。鋭い弾道は湘南ディフェンスに当たり、ゴールに吸い込まれた。来日初ゴールが逆転弾となったレオ・ゴメスは自分のパスミスから同点ゴールを与え、勝ち点2を失った第9節のアビスパ福岡戦(2-2)について「試合に出ていなかったらミスはしない。ミスをすることよりも、ミスをしたあとのことをできるだけ意識するようにしてきた」と振り返った。
「自分の中では苦しい状況だったかもしれないが、このように試合に出させてもらっている以上は、常に満足しないでもっと良くなっていくことを意識しなければいけない」
レオ・ゴメスのそうした前向きなメンタリティーも素晴らしいが、ここまで彼を支えてきたのは横内監督をはじめとしたチームスタッフ、そして一緒に戦ってきた選手たちだ。ともに来日した同僚のブルーノ・ジョゼは「レオがこうやって結果を出すことは嬉しいですし、本人とも仲がいいし、日々の努力、ハードワークする選手で。そういう姿を見ているからこそ、余計に嬉しい」と感慨深げに語る。
「1つのミスでチームが割れることもないし、1つの家族として、ファミリーとしてお互いを支え合っていくことが大事なので。成功したらみんなで喜ぶし、失敗したらみんなで補っていくのがサッカーなので」
そうした思いは日本人選手たちも同じだ。キャプテンの山田は「横さん(横内監督)が作っていくチームの方向性を改めて示したり、感じられるチームにはなってきたと思います。反省点はあるんですけど、すごく意義のある試合だった」と語る。怪我から復帰して結果を出した山田や試合に出られない時期を経て、前節の浦和レッズ戦の同点ゴールに続く、大きな仕事をやってのけた金子、そしてミスを乗り越えてチームに勝利をもたらしたレオ・ゴメスなど。そうした選手はもちろん、試合後にはベンチ外で、スタンドから観ていた選手たちもグラウンドに降りて、喜びを分かち合う姿が印象的だった。
12試合11得点という結果で序盤戦の磐田を引っ張ってきたエースのFWジャーメイン良が東京ヴェルディ戦の負傷で離脱し、なかなか得点を取れない試合が続いてきた磐田にとって勝ち点3という結果以上のゲームになったことは確かだ。
河治良幸
かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。