久保建英、古巣レアルやバルサ復帰は? スペイン人記者「今夏の可能性はないだろう」と分析する訳【現地発コラム】
古巣バルセロナ戦、途中出場となったソシエダ久保建英は見せ場を作れず
2試合連続のベンチスタートとなったFCバルセロナ戦、久保建英は存在感を発揮することなく試合を終えた。
レアル・ソシエダは、来季のUEFAヨーロッパリーグ(EL)出場権争いのライバルであるベティスに勝ち点を上回られていたことで、アウェーで行われたラ・リーガ第35節バルセロナ戦は、絶対に勝たなければいけない一戦であった。
マルティン・スビメンディ、イゴール・スベルディア、ハビ・ガランの主力3人を怪我で欠くなか、イマノル・アルグアシル監督はいつもの4-3-3ではなく、ウイングバックにアマリ・トラオレとカンテラーノのホン・アランブルを配置する5バックという、守備的な“奇策”に出る。
前節ラス・パルマス戦前に大腿四頭筋に問題を抱えていた久保は、2戦連続でベンチスタート。先発した直近3試合で2得点2アシスト、さらにオウンゴール誘発という大活躍を見せていたシェラルド・ベッカーがまたもやスタメン入りした。
迎え打つバルセロナは前節ジローナ戦で完敗し、スペイン・スーパーカップ出場圏外の3位に転落したため、ソシエダ同様、是が非でも勝利を手にしなければならない状況だった。フレンキー・デ・ヨング、ガビ、アレハンドロ・バルデが負傷欠場、ロナルド・アラウホを体調不良で起用できないなか、シャビ・エルナンデス監督はいつもどおりの4-3-3で戦った。
久保に出番が訪れたのは後半25分。0ー1の悪い流れを変えるため、アルグアシル監督はアンデル・バレネチェア、キーラン・ティアニーと一緒に投入した。システムを4ー3ー3に戻し、反撃を試みた。
いつもどおり右ウイングでプレーを開始した久保は、出場からわずか3分後、右サイドでボールを受け、カットインして左足でシュートを打つも、GKテア・シュテーゲンにキャッチされる。それ以降も時折、味方との連係を見せるも決定機を作るには至らず、チームは終盤のPKで追加点を許した。最後まで得点を奪えないまま0ー2で敗れ、6位ベティスと勝ち点1差の7位に後退した。
この敗戦により、久保のスペインでのバルセロナとの公式戦通算成績は、10試合(先発6試合)、1勝9敗。これまで得点、アシストともに一度もなく、数字的な結果は残せていない。
スペイン紙は軒並み低評価、スペイン人記者は「久保はラ・リーガにとって貴重な存在」
この一戦での久保に対するスペインメディアの評価は高くはなかった。クラブの地元紙「エル・ディアリオ・バスコ」紙は、「右サイドから何度かトライし、出場後すぐに強烈なシュートでテア・シュテーゲンを試したが、手の中に収まった」と寸評し、2点(最高5点)とやや低い評価を下した。
もう1つの地元紙「ノティシアス・デ・ギプスコア」は、「出場するといつも目立っている。危険なシュートとペナルティーエリア内に良いボールを2回入れたが、決定機には結び付かなかった。不快に感じているように見える」と評すも、出場時間が短く採点なし。全国紙の「マルカ」、「AS」の評価はともに1点(最高3点)だった。
カタルーニャのオンライン新聞「エル・モン」でバルセロナ番を務めるほか、歴史や社会、政治などを通じてサッカー文化を扱うスペインの月刊誌「パネンカ」などで記者を務めるジョアン・セブリアン氏に、久保について語ってもらった。
「彼のプレースタイルや元バルサという点から見ても、ラ・リーガにおいて久保建英は必要不可欠な選手の1人だ。特にアタッキングサードにおいて創造性を発揮することができる。ここエスタディオ・オリンピコ(※エスタディ・オリンピック・リュイス・コンパニス)で私たちが見たように、序盤はタッチラインに張りついてプレーし、その後は中に入り、常に顔を出そうとしていた。そして何よりも、技術的なレベルでも、創造的なレベルでも、彼が持っているリソースは非常に価値がある」
「例えばバルサのラミン(ヤマル)にも見られるような、ドリブルを狙うタイプのウインガーがいるが、今のフットボールではチームでのコンビネーションがより重視され、個人のひらめきがあまり大切にされておらず、その存在が失われつつある。だからこそ久保のような選手はラ・リーガにとって貴重な存在なんだ」
久保の来季去就に関しては現在、再びざわつき始めているが、古巣復帰の可能性については難色を示していた。
「現時点で私にはどうなるのか予測がつかない。選択肢の1つに以前から挙がるレアル・マドリードに関してはまず、来季のメンバーがどうなるのか、どのようにフィットできるかを考えなければならないだろう」
「レアル・マドリードにはヴィニシウス(ジュニオール)やロドリゴ(ゴエス)などに加え、違いを生み出せるブラヒム(ディアス)や(アルダ)ギュレルのような選手も控えている。そこに今夏はさらにエンドリッキが加入し、(キリアン)ムバッペもおそらく加わるという事実がある」
「サッカーのクオリティーという点では、久保にはレアル・マドリードの一員になれるだけのものがあると私は思っている。しかし、チームの現状を考えると、今夏復帰の可能性はないだろう」
久保建英のバルセロナ復帰説「以前は狙っているといった話もあったが…」
また、ジョアン・セブリアン記者は久保とバルセロナについて、次のような考えを持っていた。
「バルサに関しても同じ状況だ。経済面はともかくとして、以前は久保を狙っているといった話やそのような議論もあったが、今は全くない。なぜなら今のバルサには久保の得意とするポジションにラミンがいるからだ。さらにラ・レアル戦でゴールしたことでも分かるとおり絶好調だ。もし彼がいなければ、その資質ゆえにバルサはもっと久保を欲したかもしれない」
「今のバルサの陣容を見る限り、右ウイングよりもアンカーやサイドバック、左ウイングなど、ほかのポジションを充実させる必要があるだろう。右ウイングにはラミンに加え、彼ほどドリブルを仕掛けるわけではないが、同じように素晴らしい仕事をする違うタイプのラフィーニャもいる」
久保とソシエダの今季もあと3試合で全日程が終了するが、バレンシア、ベティス、アトレティコ・マドリード相手に、EL出場権獲得という目標を達成しなければならない。何よりもベティス戦はその“決勝戦”となるため、シーズン終わりまで一切気が抜けない日々が続くことになりそうだ。
高橋智行
たかはし・ともゆき/茨城県出身。大学卒業後、映像関連の仕事を経て2006年にスペインへ渡り、サッカーに関する記事執筆や翻訳、スポーツ紙通信員など、スペインリーグを中心としたメディアの仕事に携わっている。