横浜FMがアジア制覇へ前進、現場が熱量実感…底力の源とは「美しい崩しに拘ることはない」【コラム】

アル・アインとのACL決勝1回戦を2-1の勝利で終える【写真:徳原隆元】
アル・アインとのACL決勝1回戦を2-1の勝利で終える【写真:徳原隆元】

【カメラマンの目】アル・アインとのACL決勝1回戦を2-1の勝利で終える

 悲願のアジア王者に向けて横浜国際総合競技場(日産スタジアム)は、横浜F・マリノスサポーターが作り出した天井知らずの熱気に包まれていた。選手たちの勝利への意気込みも見るからに高い。AFCアジアチャンピオンズリーグ(ACL)決勝の第1戦、横浜FMはサポーターからの絶対な声援による後押しを受け、これで攻撃的に出なければいつ出るんだという高まった勝利への渇望に応えるように、試合開始からアル・アイン(UAE)の牙城の攻略に着者する。

 ただ、この積極的な姿勢が裏目に出る。エルナン・クレスポに率いられたアル・アインは実に試合巧者だった。激しい守備でボールを奪うと、そこから一気にカウンターアタックを仕掛けてきた。多少ゴールとの距離があってもチャンスと見れば積極的にシュートを打ち、それが枠を捉えてくる。ミスを恐れない力強い攻撃には迫力があった。

 アル・アインの攻撃を支えていたのは、反撃の起点となる横浜FMの選手からのボール奪取だ。ボールを持った横浜FMの選手の前にアル・アインの守備陣が素早く立ちはだかり、パスの供給を遮断する。そうした場面がカメラの記録メディアに次々と蓄積されていく。この横浜FMへの素早い寄せがアル・アインの攻守の核となり、効果的なカウンターの発火点となっていた。

 先制点を奪われことにより出鼻をくじかれた横浜FMの攻撃は、アル・アインの戦術に嵌っていき勢いが削がれていく。0-1で折り返した後半は、このまま終わってしまうのではないかという雰囲気もあった。

 しかし、横浜FMは準決勝の第2戦対蔚山現代(韓国)戦でも見せたように、劣勢の展開を突きつけられても慌てるようなことはなかった。膠着状態となりながらも決して諦めることなく落ち着いてプレーしていく。それは自分たちのサッカーに対する自信の表れでもあるのだろう。結果、試合終盤に見事に2ゴールを奪取し逆転に成功する。横浜FMの底力を改めて見せつける試合となった。

テクニック以外のパワーが勝利の鍵になったか

 ただ、繰り返すがアル・アインは試合巧者でタフなチームだ。第1戦の戦いぶりを見ると、正攻法の攻めだけでは、彼らの力技に屈してしまうことも考えられる。もちろん戦術に基づく洗練された攻撃も必要だ。だが、こうした相手と戦う場合は、攻撃に関して必要以上に美しい崩しに拘ることはない。

 テクニックで守備網を振り切ろうとする突破は、アル・アインのファウル覚悟のプレーに止められてしまう可能性が高くなる。そのため、人間の持つパワーを全面に出したプレーが有効に思える。たとえばこの試合で途中出場した宮市亮の力でねじ伏せるような直線的なドリブルや、渡辺皓太が見せた相手の動きを封じる粘り強いマークが威力を発揮するように思う。

 試合後、アンデルソン・ロペスがカメラに向かって見せた、ユニフォームの下に着ていたシャツには“一緒に笑おう”と書かれていた。

 果たして横浜FMはサポーターとともに勝利の美酒を味わえるか。現地時間25日に行われる第2戦が楽しみだ。

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徳原隆元

とくはら・たかもと/1970年東京生まれ。22歳の時からブラジルサッカーを取材。現在も日本国内、海外で“サッカーのある場面”を撮影している。好きな選手はミッシェル・プラティニとパウロ・ロベルト・ファルカン。1980年代の単純にサッカーの上手い選手が当たり前のようにピッチで輝けた時代のサッカーが今も好き。日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員。

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