日本代表パリ五輪メンバー18人予想 オーバーエイジはDF&ボランチに割け【前園真聖コラム】
制限なく呼べれば久保建英、鈴木彩艶、鈴木唯人は不可欠
パリ五輪出場を決めた日本は、今後2か月は五輪メンバーに入るためのサバイバルレースとなる。インターナショナル・ウィンドー外の大会となるため各クラブが招集に応じるかどうかこれから先の交渉になるが、まずは現時点で誰が候補となってくるのか。1996年のアトランタ五輪に出場した元日本代表MF前園真聖氏に海外組、オーバーエイジ、U-23アジアカップ組を含めて予想してもらった。(取材・構成=森雅史)
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U-23日本代表はパリ五輪出場を決めました。ですが、ここから「五輪代表」になるためには大きなハードルがあります。
U-23アジアカップでは23人がエントリーできましたが、本大会では18人。人数が絞り込まれますし、さらにオーバーエイジの選手も入ってきます。また、今回招集できなかった海外組も招集される可能性があります。そこで現時点でもし、制限なく呼べるとしたら誰が入ってくるか考えてみましょう。
最初に考えたいのはU-23アジアカップに来ることができなかった海外組です。彼らはメンバー入りしたら間違いなく主軸になります。クラブが招集を許可したとしたら、鈴木彩艶(シント=トロイデン/ベルギー)と久保建英(レアル・ソシエダ/スペイン)の日本代表組は間違いなく外せません。加えて僕は鈴木唯人(ブレンビー/デンマーク)も欠かせないと思います。
鈴木唯人はドリブルで仕掛けることができますし、アシストもできます。4月21日の首位攻防戦、ミッティラン戦ではパスで攻撃の組み立てを行うだけではなく、ペナルティアークからの左足のミドルシュート、さらにペナルティエリアの外からの左足のロングシュートなど豪快な2ゴールを決めて見せました。
5月5日には優勝決定プレーオフのミッティラン戦で同点ゴールにつながるパスを見せるなど、直近7試合で6得点5アシストと好調をキープ。そして、元々U-23日本代表では10番を背負っていた選手です。招集できれば間違いなく活躍できるでしょう。
オーバーエイジ枠はDFとボランチに割くべき
さらに僕は斉藤光毅、三戸舜介(ともにスパルタ/オランダ)の2人も入ってくると思っています。斉藤も三戸もともにドリブルで相手を剥がせるドリブラーで、現在の動きのキレは抜群です。この2人を使わないのはもったいないはずです。
続いて考えるのは、U-23アジアカップに出場した選手たちです。出場時間が多かった選手は外せないと言えるでしょう。小久保玲央ブライアン(ベンフィカ/ポルトガル)、関根大輝(柏)、高井幸大(川崎)、藤田譲瑠チマ(シント・トロイデン/ベルギー)、細谷真大(柏)の5人はまず間違いないと思います。
それから僕がU-23アジアカップで特長を出したと思ったのは平河悠(FC町田ゼルビア)でした。テクニックもアジリティーも、そしてもちろんスピードにも目を見張るものがあり、チャンスメイクしていました。周囲との連係がさらに構築できればもっと活躍すると思います。
ここまでの内訳はGKが小久保と鈴木彩艶、DFは関根と高井、ボランチが藤田、2列目が久保、鈴木唯人、斉藤、三戸、平河、トップが細谷です。
僕は、この段階でオーバーエイジを誰にするか補強しなければならないポジションから考えました。勝ち残るためにはDF、ボランチが必要でしょう。トップを務められるのが細谷1人という問題はありますが、豊富な2列目を生かしてゼロトップという形も考えられると思いますので、ここはうしろの選手にしたほうがいいと思います。
候補としては、板倉滉(ボルシアMG/ドイツ)、町田浩樹(ロイヤル・ユニオン・サン=ジロワーズ/ベルギー)、冨安健洋(アーセナル/イングランド)、遠藤航(リバプール/イングランド)、伊藤洋輝(シュツットガルト/ドイツ)らがいます。この中で僕がいいのではないかと思っているのは、まず板倉です。
板倉はそろそろ移籍を考えていいタイミングではないでしょうか。となると、2012年ロンドン五輪をきっかけにして吉田麻也(LAギャラクシー/アメリカ)がサウサンプトンへ移籍したように、板倉もパリ五輪でプレーすることが五輪チームにも本人にもプラスに働くのではないかと思います。同じように町田も選ばれていいでしょう。
6月の海外遠征で調子が良かった選手が滑り込みか
そしてボランチは、僕は田中碧(デュッセルドルフ/ドイツ)がいいと思います。藤田と田中がコンビを組んだら、中盤の構成力がグッと上がります。最近の試合で田中の守備能力が高いのも証明しています。日本の攻守の中核になってくれるのではないでしょうか。
これまでに挙げた選手は、招集できなかった海外組が5人、U-23アジアカップ組が6人、オーバーエイジが3人の合計14人。残り枠4人は6月の海外遠征で調子が良かった選手で選ぶのでしょう。
U-23アジアカップで出場時間が多かった木村誠二(サガン鳥栖)ですが、これは西尾隆矢(セレッソ大阪)の退場が大きく影響しました。本大会に選ぶのは木村と西尾のどちらがいいか、まだ決まってはいないと思います。左サイドバックもまだ選考途中だと思いますが、U-23アジアカップの出場時間から、今のところは大畑歩夢(浦和レッズ)ではないでしょうか。
また、松木玖生(FC東京)、2得点の山田楓喜(東京ヴェルディ)も魅力あるプレーを見せてくれました。ですが、果たして1試合を通じて活躍できるのかというと疑問が残ります。当落線上でしょう。ただ、松木に関しては攻撃的なポジションとともに守備的なMFとしても活躍が期待できます。そんなユーティリティー性は評価されると思います。
もっとも今後、海外組やオーバーエイジのプレーヤーで誰が呼べるのかでまた選考はどんどん変わっていくでしょう。移籍などで選手が招集しても拒否される可能性もあります。東京五輪の時のように、急に選手枠が増えることもあるかもしれません。
それでも残された切符はわずかです。最後のアピールができる6月3日からの海外遠征までもう1か月を切っています。まずはその遠征に選ばれるよう、選手たちにはリーグ戦で悔いなく戦ってほしいと願っています。
前園真聖
まえぞの・まさきよ/1973年生まれ、鹿児島県出身。92年に鹿児島実業高校からJリーグ・横浜フリューゲルスに入団。96年のアトランタ五輪では、ブラジルを破る「マイアミの奇跡」などをチームのキャプテンとして演出した。その後、ヴェルディ川崎(現・東京ヴェルディ)、湘南ベルマーレの国内クラブに加え、ブラジルのサントスFCとゴイアスEC、韓国の安養LGチータースと仁川ユナイテッドの海外クラブでもプレーし、2005年5月19日に現役引退を表明。セカンドキャリアでは解説者としてメディアなどで活動しながら、「ZONOサッカースクール」を主催し、普及活動を行う。09年にはラモス瑠偉監督率いるビーチサッカー日本代表に招集されて現役復帰。同年11月に開催されたUAEドバイでのワールドカップ(W杯)において、チームのベスト8に貢献した。