FC東京の2024年版スピードサッカー ファインダー越しに感じた縦への徹底ぶり【コラム】

FC東京の仲川輝人【写真:徳原隆元】
FC東京の仲川輝人【写真:徳原隆元】

【カメラマンの目】仲川輝人が攻撃のタクトを振るう

 サッカーには勝利の方法に絶対の正解がない。それゆえに指揮官が目指す勝利への方途はさまざまだ。5月3日に行われたJ1リーグ第11節FC東京対京都サンガの一戦は、お互いがチームのスタイルをピッチで明確に打ち出す展開の試合となった。

 アウェーとなる京都は曺貴裁監督が指揮してからこのチームの代名詞ともなっている、豊富な運動量を武器に前線からの積極的な守備で試合のペースを握りにいく。選手たちは味方の位置をよく理解し、攻撃となればボール保持者が、より前線にいる同じユニフォームを身に纏った仲間へと素早くボールをつないでいく。決して強引にゴールを目指すわけではなく、理詰めで攻撃を仕掛ける。京都の選手には戦術の動き強く意識し、その遂行に全力を傾けていることが見て取れた。

 しかし、ホームとなるFC東京もチーム戦術が徹底され、ボールを縦に運ぶことを念頭においた鋭いカウンター攻撃を展開した。そのスピードサッカーの起点となったのが、3トップの後方でタクトを振った仲川輝人だ。

 仲川はボールを受ければ少ないタッチで相手マーカーを交わし、前線へと力強く進出していく。スピードに乗った突破が威力を発揮したが、ドリブル一辺倒になることもなく、状況によって前線へのスルーパスを選択して攻撃陣をリードした。

 このカウンター攻撃はFC東京が守るゴール側からカメラを構えていて、選手たちがファインダーの中で見るみるうちに小さくなっていき、一気にボールが敵陣へと運ばれていることが、その様子ではっきりと分かった。サポーターたちも攻めどころを理解し、攻撃のスイッチが入るとスタンドも大いに沸いた。

 仲川は少ないタッチで相手守備陣を交わし攻撃の起点となったが、自陣でボールを受けたときは、高い技術に裏打ちされた巧みなステップワークを駆使して京都のマーカーを翻弄した。敵陣では素早く、そして自陣では冷静にプレーする姿は対照的だった。

 FC東京のカウンター攻撃は後半に入るとさすがに体力も消耗し、勢いも弱まり京都の守備の前に素早い攻撃が行えなくなっていく。そうなるとボールを持った選手が選択するパスも近くの味方となり、プレースピードも弱まっていく。

 京都の守備を交わすための逃げのパス回しとなれば、ダイナミックさに陰りが見えてしまうところだが、この試合のFC東京はそのまま完全に勢いを失うことはなかった。後半は勝負どころと決めた時に、大きく逆サイドへボールを送り京都守備陣に揺さぶりをかけるなど、要所で効果的な仕掛けを見せた。そのカウンターの形はドリブルやパスと多彩だった。

 FC東京の印象はシーズン前の沖縄キャンプを経て、宮崎でのサンフレッチェ広島とのトレーニングマッチを取材した時には、高い守備力が真っ先に目に留まった。この試合でも京都の攻撃に対して、守備に回る時間帯もかなりあったが、そこは落ち着いて対応し、まずまずの安定感を見せた。

 リーグ開幕から11試合を消化し、チームの立ち位置も見えてきた。そうしたなかで、この京都戦はFC東京が上位を狙うためのスタイルが明確に表れた試合だった。

(徳原隆元 / Takamoto Tokuhara)

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徳原隆元

とくはら・たかもと/1970年東京生まれ。22歳の時からブラジルサッカーを取材。現在も日本国内、海外で“サッカーのある場面”を撮影している。好きな選手はミッシェル・プラティニとパウロ・ロベルト・ファルカン。1980年代の単純にサッカーの上手い選手が当たり前のようにピッチで輝けた時代のサッカーが今も好き。日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員。

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