大岩ジャパン、パリ五輪にこの18人を連れていけ! 「ベスト布陣」考察…OA枠活用法は?【コラム】
板倉滉と町田浩樹のCBにオーバーエイジ2枠を割く
U-23日本代表は、カタールで開催されたU-23アジアカップで「パリ五輪の切符を掴めるのか」と不安視する声も聞かれたが、無事に8大会連続となる五輪の出場権を獲得した。ここからはパリ五輪に出場する18人の枠を争う熾烈なサバイバルがスタートする。本大会ではアジアカップに呼ぶことができなかった海外組やすでにA代表に入っている選手、オーバーエイジの選手たちが加わることを考えると、その争いが激化するのは間違いないだろう。大岩剛監督がどんなメンバーを選んでいくかは気になるところ。今回は招集が困難そうな選手は除き、考え得るベストな18人を予想していく。(文=林遼平)
◇ ◇ ◇
<GK>
・鈴木彩艶(シント=トロイデン)
・小久保玲央ブライアン(ベンフィカ)
GKは高い確率でこの2人がメンバー入りするのではないだろうか。1月のアジアカップを含め、A代表の守護神として活躍する鈴木彩艶がファーストチョイスとなり、U-23アジアカップで見事なパフォーマンスを披露した小久保玲央ブライアンが次点となる。
この2人の立ち位置についてだが、U-23アジアカップの小久保のパフォーマンスは文句のつけようがないものだった。ただ一方で、アンダーカテゴリーの大会であることも考慮しなければいけない。小久保とは違い、鈴木はA代表の一員として、プレッシャーや責任のかかるなかでトップレベルの戦いを経験してきている。互いに切磋琢磨しながら本大会を目指すことになるが、守護神は鈴木でいくと予想する。
<センターバック(CB)>
・高井幸大(川崎フロンターレ)
・板倉滉(ボルシアMG)※オーバーエイジ枠
・町田浩樹(ロイヤル・ユニオン・サン=ジロワーズ)※オーバーエイジ枠
まずCBは何人オーバーエイジを呼ぶことができるかが焦点となるだろう。基本的に1枚は確実に呼びたいという状況を考えると、ファーストチョイスには板倉滉を推す。コミュニケーション力に秀でる板倉が入れば、オーバーエイジと五輪世代との融合に大きな影響をもたらせるはず。代表でもキャプテンマークを巻く機会があるように、キャプテンシーという面でもチームをまとめる存在となることを期待したい。
もう1人、OAを加えられるなら左サイドバックと兼用できる町田浩樹も気になる存在だ。ユニオンSGで評価を高めるレフティーは、このチームに必要な高さとビルドアップ力向上に大きく貢献できる。サイドバックと併用できる点でも招集したい存在であることは明らかだ。
町田が入るとすれば、あと一枠の争いとなる。アジアカップでクオリティーの高さを見せた高井幸大やセットプレーでの強みを示した木村誠二、そして長らくチームの主力だった西尾隆矢が争うことになるが、高さやビルドアップ面で大きな成長が見られる高井を選んだ。
攻守に厚みをもたらす田中碧をオーバーエイジ枠で起用
<サイドバック(SB)>
・関根大輝(柏レイソル)
・内野貴史(デュッセルドルフ)
・バングーナガンデ佳史扶(FC東京)
SBは、U-23アジアカップで力強いパフォーマンスを見せた関根大輝が右の最有力候補。左は大畑歩夢が存在感あるプレーを見せたが、A代表に呼ばれた実績などを考えるとバングーナガンデ佳史扶が逆転で入る可能性はある。よりレベルの上がる相手と対峙した際に、体格を含めて当たり負けしない強さがあるバングーナガンデを加えると予想した。
またもう1つの枠については、純粋な右サイドバックとして力を発揮できる半田陸と両サイドを器用にこなせる内野貴史で悩んだが、アジアカップ中、常にチームのために声を出す姿や選手間ミーティングを促す動きが見られたように、周りに影響を与えられる点で内野を選んだ。
<中盤>
・鈴木唯人(ブレンビー)
・藤田譲瑠チマ(シント=トロイデン)
・松木玖生(FC東京)
・田中碧(デュッセルドルフ)※オーバーエイジ枠
最も難しいのが中盤の枠だ。今大会同様に「4-3-3」でインサイドハーフとボランチを置くシステムで考えた時に、鈴木唯人と藤田譲瑠チマの2人がファーストチョイスとなる可能性が高い。世代を牽引してきた攻撃の要である鈴木唯、そして攻守の大黒柱でありキャプテンを務める藤田は外せない存在だ。
そして、オーバーエイジ枠で田中碧を起用したい。アンカーとインサイドハーフができ、攻撃にも守備にも絡むことができるのはポジティブな要素。東京五輪の悔しさを持つ選手だけに、もし選ばれればメダルへの想いは強いはず。攻守の安定感は抜群なだけに、チームを落ち着かせられる存在としても重宝したいところだ。
最後の1枠については次のウイング枠も踏まえた話になるのだが、久保建英や三戸舜介といった選手たちがインサイドハーフでプレーできるため、どちらかというとクリエイティブ力よりハードワークできるような戦える選手が欲しい。そこで考えた時に、荒木遼太郎や山本理仁を抑えて松木玖生を加えた。また“隠し球”として佐野航大を入れるという手も考えられる。NECで圧倒的な存在感を放つ男も候補に入ってくるはずだ。
動き出しに特化した福田師王を推奨
<ウイング>
・久保建英(レアル・ソシエダ)
・斉藤光毅(スパルタ・ロッテルダム)
・三戸舜介(スパルタ・ロッテルダム)
・小田裕太郎(ハーツ)
ウイングの争いは、さまざまな視点で考えられる。今大会のパフォーマンスを大きく評価するなら平河悠や藤尾翔太、山田楓喜といった選手たちが候補に名を連ねてくることは間違いない。一方、海外で戦う選手たちのパフォーマンスを評価するなら斉藤光毅や三戸舜介、小田裕太郎らが候補となってくる。
久保建英を呼べるなら言わずもがなとして、ほかの3枠は人によって選考が異なるだろう。そのなかで今回は欧州組を優先した。アジアカップのパフォーマンスは見事だったが、対戦相手のレベルが決して高くなかったことも考慮しなければならない。これからより相手のレベルが上がってくるなかで、欧州でプレー機会の多い3人のほうが対抗できるだろうと考えた。
<FW>
・細谷真大(柏レイソル)
・福田師王(ボルシアMG)
最前線はA代表デビューも飾り、U-23アジアカップでエースストライカーとして活躍した細谷真大が最有力候補。フィジカル的にも世界を相手に戦える能力を持っており、パリ五輪でもゴールという結果で違いを見せてくれることを期待したい。
最後の1枠は、悩んだ結果、福田師王を推す。最前線に関しては小田裕太郎を起用する考えもあるなかで、動き出しに特化した選手がほしかった。ボルシアMGでトップ昇格してから決して多くの出場機会を得ているわけではないが、欧州で最前線を張る才能は無視できない。出し手となれる選手が多いだけに、スーパーサブとしての活躍も期待してメンバー入りさせた。
今回のメンバー選考の基準として、18人という枠も考え、基本的には複数ポジションをこなすことができる選手を優先した。アジアカップのメンバーからは大きく入れ替わることになるが、それだけ欧州で活躍する選手が増え、世代全体のレベルが上がってきている証拠。メダル獲得は簡単なミッションではないが、強固なスカッドを組むことでパリ五輪での成功を目指していきたい。
林 遼平
はやし・りょうへい/1987年、埼玉県生まれ。東日本大震災を機に「あとで後悔するならやりたいことはやっておこう」と、憧れだったロンドンへ語学留学。2012年のロンドン五輪を現地で観戦したことで、よりスポーツの奥深さにハマることになった。帰国後、サッカー専門新聞『EL GOLAZO』の川崎フロンターレ、湘南ベルマーレ、東京ヴェルディ担当を歴任。現在はフリーランスとして『Number Web』や『GOAL』などに寄稿している。