14年ぶり日本復帰の川島永嗣が感じたJリーグの成長 欧州に”近づいた”と感じる変化とは?【コラム】
同僚DF森岡が存在感の大きさに感嘆「うしろにいてくれるだけで安心感が全然違う」
「40歳になって、もっとやらなければいけないこと、上達できるところがまだまだあると感じている。若い選手から学ぶことも多いし、新しいチームメイトと一緒にクラブも自分自身も成長させたい」
2010年に川崎フロンターレから欧州に渡り、ベルギー、フランスなどのクラブで長く活躍。今季磐田に加入した元日本代表GKは、シーズンの初めにそう抱負を語った。
「常に上手くなりたいと思い続けられるところは、彼の強みの1つ」と、日本代表のコーチとしてともに世界で戦った横内昭展監督は、プレーだけではなく飽くなき成長欲にも信頼を寄せ、経験や実績に甘んじずに努力をするベテランをリーグ開幕戦から起用。その期待に応え、川島は最後尾で守備陣を支え、ファインセーブで何度もピンチを救ってきている。
14年ぶりに復帰したピッチで感じるJリーグの変化は、それぞれのクラブのスタイルが確立されていることと、スピードアップした試合のテンポ。そして、「どのチームにも決定的な仕事ができる選手がいること」と川島は言う。
「欧州に行った時は、日本に比べて個で打開できる選手が多いし、ゲームテンポも速いと感じた。でもJリーグに帰ってきてここまで、自分は違和感なくやれているし、今は欧州と大きく違うと感じるところはない。チームそれぞれに個性があるし、同じスタイルにしてもやり方が違うので1試合1試合全く気が抜けない。だからすごく楽しいですね」
そのなかで、勝利のために、そして自身が成長するために意識しこだわっていることがある。1つ1つのプレー選択の判断精度を上げることだ。
「自分がどうするかでその後の試合の流れが決まる。シュートストップだけではなく、チームメイトが厳しい状況の時にどうすれば助けられるかとかいうことを的確に判断するには、相手が戦術的にどこを使ってくるかを見極めないといけないし、駆け引きもしないといけない。そうして攻撃にスピードを持たせたり、守備を落ち着かせたりするというところはもっともっとできるはず。仲間と積極的にコミュニケーションを取って、チームがより主導権を握って試合を進めることができるようにしたい」
日本代表の先輩でもあるGKコーチ川口能活氏は、川島にとって頼れる存在だ。
「能活さんとも、シュートを止めるだけではなくその前後に何ができるかという話を頻繁にしている。高いレベルでいろいろなことを経験しているから見ているところが違うなと思うし、そういうことを共有できることは今の自分にとってとても大きい。想像をしていた以上にいい環境でサッカーをやらせてもらっていると思います」
FC町田ゼルビアをホームに迎えた第10節。磐田はそれまで毎試合得点を挙げてきた首位に2-0と完封勝利を飾った。終盤、2点を追う相手に押し込まれるなか、川島は的確なポジション取りとコーチングで身体を張るDFたちとバランスの取れた距離感を保ちながらチームを鼓舞。最後は指先で相手シュートを弾き出す超ファインセーブで勝利に貢献した。
ホイッスルが鳴ると、喜びに弾けた守護神は若い選手に駆け寄り次々にハグ。真っ先に抱きしめられたDF森岡陸は、「相手の攻撃を跳ね返すたびにナイスナイスと言ってくれて、次も頑張ろうと思えた。セービングも凄いけど、うしろにいてくれるだけで安心感が全然違うし、本当にありがたい」と、その存在の大きさを語った。
相手チームのGKとして、川島は磐田の黄金時代を知る。
「個々の能力が高いうえに、チームとしてまとまったサッカーをしながら勝利を重ねていた。勝つだけではなく、魅力的なサッカーを見せられるのがジュビロというクラブ。その伝統を再現できるよう、そういうサッカーをみんなで築いていきたい」
成長を期して日々努力を重ねる41歳の胸には、強豪復活の夢も宿っている。
(高橋のぶこ / Nobuko Takahashi)