森保監督に6月推薦「呼ぶべき&回避すべき選手」 三笘のポジションは「別の人材にチャンスを」【コラム】
6月シリーズ大胆な入れ替えはナシ…五輪出場組はU-23日本代表の活動に合流も
日本代表の森保一監督が約1か月の欧州・カタール視察を終えて4月30日に帰国。ここから6月シリーズのメンバー選考が本格化することになる。
ご存知の通り、次の代表2連戦はミャンマー(6月6日=ヤンゴン)とシリア(11日=広島)が相手。3月の北朝鮮戦が急遽、中止になり、勝ち点3を与えられたことで、日本は2026年北中米ワールドカップ(W杯)アジア2次予選突破が決定。6月シリーズは消化試合という位置づけだ。
とはいえ、9月から最終予選がスタートすることを考えると、そこまで大胆な入れ替えには踏み切れない。指揮官はそう考えているという。
「可能な限り、選手や戦術をミャンマー戦とシリア戦で先に向けて試したいと思いますが、試し過ぎて9月にいいパワーを持てないことも考えられる。これまで招集してきた選手を中心に積み上げも考えながら、新たなチャレンジをできる部分はしたい」と森保監督は帰国時にも強調。主軸メンバーは基本的に呼んでチーム底上げを図るつもりのようだ。
ただ、6月にはパリ五輪に向けたU-23日本代表の活動もあり、パリ世代の久保建英(レアル・ソシエダ)や鈴木彩艶(シント=トロイデン)、オーバーエイジ(OA)枠でのメンバー入りが濃厚と言われる板倉滉(ボルシアMG)らはA代表回避となる見通し。それによって空いた枠には、これまでトライしていない新戦力を積極的に試してほしいところだ。
その候補者を考えてみると、まず今季J1で10ゴールをマークしているジャーメイン良(ジュビロ磐田)と同7ゴールの大橋祐紀(サンフレッチェ広島)の2人が真っ先に浮上する。ジャーメインは29歳、大橋は27歳と年齢的には若いとは言えないが、FWとして目覚ましい飛躍を遂げているだけに、まさに旬。W杯が2年後ということを考えると、戦力になり得る可能性は十分にあるのだ。
現在の代表FW陣は、上田綺世(フェイエノールト)、浅野拓磨(ボーフム)、前田大然(セルティック)の3人が軸。そこに3月シリーズに久しぶりに呼ばれた小川航基(NEC)が参戦している状況で、絶対的エースに君臨する存在はまだいない。もちろん2023年の代表戦で7ゴールを挙げ、1~2月のアジアカップ(カタール)でも4点を叩き出している上田が一歩リードしているのは確かだが、FW陣はもっともっと競争があっていい。
仮に上田が五輪のOA、前田がケガ明けで招集回避となれば、ジャーメインと大橋を揃って呼んでテストできる環境は整う。そのためにも、彼ら2人には今後のJリーグでさらに得点を積み上げることが必要不可欠だろう。
攻撃的MFに関しても、久保が五輪優先となれば、呼ばれるべきなのは鎌田大地(ラツィオ)をおいてほかにいない。2022年カタールW杯の主力である彼は2023年11月のミャンマー戦(吹田)で先発し、ゴールを奪った後、腰に痛みが出て途中離脱。そこからは所属先での苦境もあって招集外が続いているのだ。
けれども、森保監督は4月の視察でわざわざラツィオの試合を観戦。鎌田への強い関心を寄せ続けている。
「監督が代わってからいいプレーをしたということではない。彼はどういう起用がされてもベストを尽くしていたと思う。今のサッカーになってより良さが出ているし、彼も思い切ってやれている。イキイキとハツラツとした彼にボールが集まるやりがいのあるサッカーをしているのだろうなと感じました」と前向きにコメント。次は呼んで再び中心に据えたいという思いがにじみ出ており、実際にそうする公算は大だ。
ボランチについても、超過密日程の遠藤航(リバプール)を休ませた方がいいという見方も根強い。その方が遠藤不在時のテストもできる。守田英正(スポルティング・リスボン)、田中碧(デュッセルドルフ)、旗手怜央(セルティック)、川村拓夢(広島)、佐野海舟(鹿島)と人材は数多くいるから、彼らの組み合わせを多様化できれば、先々の安心材料にもつながりそうだ。
特に川村はここまで出場機会が少ないため、もっと代表の実戦の場を与えた方がいい。広島のミヒャエル・スキッベ監督も「拓夢は将来の日本サッカーを担う逸材」と絶賛しているだけに、ここで本格的に戦力に組み込むことが重要と言える。
コンディション不安の冨安、負傷明け予定の三笘&中山は“回避”を提言
一方で、ケガで長期離脱している三笘薫(ブライトン)と中山雄太(ハダースフィールド)、ケガが癒えたばかりの冨安健洋(アーセナル)をどうするかという問題もある。三笘と中山は6月ならギリギリ間に合いそうではあるが、無理をさせる状況ではない。冨安についても「プレーに問題がなければ招集の候補に入る」と森保監督も語ったが、リスクはかけたくない。彼らのポジションは別の人材にチャンスを与えるべきだ。
三笘のポジションに目を向けると、五輪に平河悠(FC町田ゼルビア)が参戦するとしたら、斉藤光毅や三戸舜介(ともにスパルタ・ロッテルダム)を抜擢するのもありだ。3人のいずれかをA代表でトライするのはいい選択だ。
中山の左サイドバック(SB)にしても、バングーナガンデ佳史扶(FC東京)など若手を見てみるのも一案。冨安と板倉のセンターバック(CB)も欧州1年目の藤井陽也(コルトレイク)、ヴィッセル神戸の山川哲史、名古屋グランパスの三國ケネディエブスらも候補者になり得る。急成長しているタレントを見逃す手はないだろう。
いずれにせよ、6月シリーズは新たなトライができる数少ないタイミング。だからこそ、将来性のありそうな選手は積極的に呼んでほしい。ケガや過密日程の選手は休ませ、コンディションを整えさせることが最優先。もちろん合宿中のミーティングに同行する程度なら問題ないが、負荷をかけることは避けた方が得策だ。
森保監督には「チームのベース強化」「戦力底上げ」の両取りができるようなベストな陣容を考え、最大限の成果を目指してほしい。アジアカップ8強敗退、3月シリーズで1試合中止になった日本代表はまだ完全に立ち直ったわけでない。何となく楽観ムードでいたら、最終予選突入後に痛い目に遭うこともないとは言えない。対アジアの課題克服にも向き合い、秋から始まる重要な戦いに万全の体制を整えるべきである。
(元川悦子 / Etsuko Motokawa)
元川悦子
もとかわ・えつこ/1967年、長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに転身。サッカーの取材を始める。日本代表は97年から本格的に追い始め、練習は非公開でも通って選手のコメントを取り、アウェー戦もほぼ現地取材。ワールドカップは94年アメリカ大会から8回連続で現地へ赴いた。近年はほかのスポーツや経済界などで活躍する人物のドキュメンタリー取材も手掛ける。著書に「僕らがサッカーボーイズだった頃1~4」(カンゼン)など。