パリ五輪メンバー18人を「大胆予想」 トップ下に久保、ベテラン大迫OA推薦の「ベスト布陣」考察【コラム】
CB&SBをこなせる伊藤洋輝をOAに…板倉には「闘将化」を要求
「日本が勝つのが一番嬉しいことで、応援してくれる方に喜んでもらえるのが喜び。最大限にサポートしたい」
4月29日のU-23アジアカップ(カタール)準決勝イラク戦を制して、U-23日本代表がパリ五輪切符を勝ち取る瞬間を目に焼き付けてきた日本代表・森保一監督は前向きにこう語った。となれば、6月シリーズ以降は久保建英(レアル・ソシエダ)らパリ世代のA代表選手、オーバーエイジ(OA)枠で招集される3人も大岩ジャパンの活動に合流することになりそうだ。
そうなると、5月3日の決勝ウズベキスタン戦のあと、大岩剛監督らは速やかに選考作業に入り、本大会メンバーを絞り込むはず。18人という狭き門だけに、誰を入れるかというのは本当に難しい決断になる。
2012年ロンドン、16年リオデジャネイロの両五輪を振り返ると、GK2人、センターバック(CB)3人、サイドバック(SB)3人、ボランチ3人、2列目4人、FW3人という配置で一致している。正確に言うと、ロンドン五輪の時は齋藤学(アスルクラロ沼津)がFW登録になっているのだが、生粋のドリブラーである彼の主戦場は2列目のサイドだった。その例を踏まえると、今回も同じ陣容になると考えられる。
■GK=鈴木彩艶(シント=トロイデン)、小久保玲央ブライアン(ベンフィカ)
まずGKだが、現時点でのA代表の正守護神である鈴木彩艶(シント=トロイデン)とU-23アジア杯で異彩を放った小久保玲央ブライアン(ベンフィカ)で異論はないだろう。U-23アジア杯の小久保のパフォーマンスを見れば、鈴木彩艶もうかうかしてはいられないという危機感を抱くはず。2人が切磋琢磨し、日本のGKレベルを引き上げ、A代表にもつなげてくれれば理想的だ。
■センターバック(CB)=木村誠二(サガン鳥栖)、高井幸大(川崎フロンターレ)、※OA板倉滉(ボルシアMG)
CBに関しては、最終予選で主軸を担った木村誠二(鳥栖)と高井幸大(川崎)に加え、OA枠の板倉滉(ボルシアMG)を入れるのが最善策ではないか。
本来なら冨安健洋(アーセナル)を呼びたいところだが、ご存知のとおり、彼は怪我を繰り返していて、7~8月の五輪と9月から始まる2026年北中米ワールドカップ(W杯)最終予選をすべて参戦というのはリスクが大きすぎる。W杯最終予選で万全の状態でいてもらうためにも、やはり五輪は回避すべき。今回はもう1人の日本の大黒柱である板倉にチームを統率してもらうほうがいい。彼も移籍の可能性があるため、確実に呼べるとは限らないが、ロンドン五輪の吉田麻也(LAギャラクシー)のような統率力を養う意味で絶好の機会。ぜひ板倉には闘将化してほしい。
■サイドバック(SB)=関根大輝(柏)、内野貴史(デュッセルドルフ)、※OA伊藤洋輝(シュツットガルト)
SBは少し難しいが、右に関しては最終予選で目覚ましい進化を遂げた関根大輝(柏レイソル)がファーストチョイス。左にはCBも兼任できるOAの伊藤洋輝(シュツットガルト)か、町田浩樹(サンジロワーズ)を入れたい。2人とも過去の五輪経験がないのが気になるところだが、伊藤は2022年カタールW杯、町田はクラブでUEFAヨーロッパリーグを経験していて、国際経験は問題ないだろう。A代表の主力という意味では伊藤の方が序列は高そうだが、そのあたりは夏の移籍動向やチーム事情で判断すればいい。
もう1人は両サイドのできる内野貴史(デュッセルドルフ)という判断になる。最終予選では大畑歩夢(浦和レッズ)がいいプレーを見せ、存在感を高めたが、登録18人の五輪はアクシデント発生時の万能性が非常に重要になる。ロンドン五輪の徳永悠平、リオ五輪の室屋成(ハノーファー)のような人材がどうしても必要。内野の器用さと国際経験値は頼りになりそうだ。
最前線にもOA採用を…ドリブラー斉藤光毅&三戸舜介オランダ組の選出は?
■ボランチ=藤田譲瑠チマ、山本理仁(ともにシント=トロイデン)、松木玖生(FC東京)
ボランチは最終予選の主軸だった藤田譲瑠チマ、山本理仁(ともにシント=トロイデン)、松木玖生(FC東京)の3枚が順当。最終ラインもこなせる遠藤航(リバプール)もOAで入れたいところだが、戦力的にやや弱いDF陣をテコ入れしたほうが大岩ジャパンには即効性がある。となれば、ボランチはこの3人に任せていいはずだ。
■MF=久保建英(レアル・ソシエダ)、鈴木唯人(ブレンビー)、平河 悠(町田)、山田楓喜(東京V)
そして、2列目はタレントが数多くいるだけに、非常に選考が難しい。久保が招集可能なら、彼が中心になるのは間違いないし、欧州で結果を残している鈴木唯人(ブレンビー)も入ってくる。となれば、残りは2枚。世界と伍していくためにドリブラーが必要なのは確かで、その枠を平河悠(FC町田ゼルビア)、斉藤光毅、三戸舜介(ともにスパルタ・ロッテルダム)の3人が争うことになる。彼らの2人を選ぶ手もあるが、リスタートのキッカー山田楓喜(東京ヴェルディ)はどうしても入れておきたいピース。となると、やはりドリブラーは1枚になる。斉藤と三戸が夏に移籍する可能性なども踏まえると、現状では平河を選出するのが最適解ではないか。
■FW=細谷真大(柏)、藤尾翔太(町田)、※OA大迫勇也(神戸)
最後にFWの3枠だが、エースの細谷真大(柏)とサイドもできるマルチ型の藤尾翔太(町田)は確定。残り1枚を上田綺世(フェイエノールト)、浅野拓磨(ボーフム)、大迫勇也(ヴィッセル神戸)らをOAで入れることになる。
大岩監督が誰を抜擢するかは読めないところもあるが、浅野は夏の移籍が有力視されるだけに招集が難しい。上田も勝負のフェイエノールト2年目のシーズン始動時に不在というのはダメージが大きい。
となれば、国内組の大迫はいいチョイス。本人もロンドン五輪落選経験があり、一度は五輪に出て日本のために貢献したいという思いがあるのではないか。ヴィッセル神戸が許可するかどうか微妙ではあるが、神戸からU-23世代の候補者がいないのは追い風。ぜひ大迫には再び世界舞台に立って、まだ日の丸を背負える人材であることを証明してほしい。
パリ五輪でメダルを獲得するのは非常にハードルが高いだろうが、そこに近づけば、パリ世代の面々のA代表昇格チャンスは広がる。彼らが2026年W杯最終予選、本大会でA代表を底上げしてくれることを期待したいものである。
元川悦子
もとかわ・えつこ/1967年、長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに転身。サッカーの取材を始める。日本代表は97年から本格的に追い始め、練習は非公開でも通って選手のコメントを取り、アウェー戦もほぼ現地取材。ワールドカップは94年アメリカ大会から8回連続で現地へ赴いた。近年はほかのスポーツや経済界などで活躍する人物のドキュメンタリー取材も手掛ける。著書に「僕らがサッカーボーイズだった頃1~4」(カンゼン)など。