J1序盤戦の主役は?…「ベストイレブン」選出、浦和やFC東京など4クラブの新戦力厳選【コラム】
序盤戦(10節)を終えて活躍が目立った11人を選出
J1初参戦のFC町田ゼルビアがインパクトを放つ一方で、序盤戦(10節)を終えて首位に立つのはセレッソ大阪だ。ただしここ2試合は勝利がなく、無敗を維持するサンフレッチェ広島も10戦中6つが引き分けと、勝ち切れない試合が続く。
王者・ヴィッセル神戸は上位に付けるものの取りこぼしが目立ち、優勝候補に挙げられていた浦和レッズはいまだ波に乗れていない。ここまで絶対的な強さを示すチームは存在せず、今季のJ1は混戦の予感を漂わせている。
個人に目を向ければ、新戦力やJ1での実績に乏しかった選手の奮闘が光る。選出した「序盤戦ベストイレブン」も新鮮味を感じられる顔ぶれが並ぶこととなった。
GKは広島の大迫敬介を選んだ。リーグ最少失点を誇るチームにおいて、開幕からハイパフォーマンスを続ける。スコアレスドローに持ち込んだ神戸戦をはじめ、印象的なセーブを連発し、無敗を維持するチームを最後尾から支えている。
両サイドバックはC大阪の2人を推す。川崎フロンターレから加わった左の登里享平は絶妙な立ち位置と判断でビルドアップをスムーズにし、右の毎熊晟矢はタイミングの良い攻め上がりとセンスあふれるポジショニングで、攻撃の起点となる。両者ともに守備での貢献度も高く、首位に立つチームの原動力となっている。
センターバックの1枚は、町田の新戦力、ドレシェヴィッチとした。強靭なフィジカルを誇るコソボ代表は対人の強さはもちろん足業にも優れ、高精度のフィードで攻撃の起点も担う。もう1枚は大迫とともに広島の堅守を支える佐々木翔を選出。34歳のベテランは衰え知らずのフィジカルを武器に局面の争いを制し、気の利いた縦パスで攻撃のスイッチを入れる。
首位のC大阪ではアンカーを担う田中駿汰の働きも見逃せない。北海道コンサドーレ札幌時代はセンターバックを務めたが、新天地では最終ラインの前でフィルターとなりながら、攻守のつなぎ役をしても機能。躊躇のない縦パスでC大阪の攻撃にスピードと勢いをもたらしている。
浦和の新戦力、サミュエル・グスタフソンはコンダクターでありながら、守備の強度も備わり、総合力の高さが際立つアンカーだ。ビルドアップの中心を担い、アシストもできれば、ゴールも奪える。チーム自体はまだ構築段階にあるが、新監督の下で攻撃スタイルを標榜する浦和の浮上のカギは、このスウェーデン代表MFが握っているだろう。
町田のアタッカー、磐田の10戦10発ストライカーは特筆の活躍ぶり
攻撃のタレントで最もインパクトを放っているのが、町田の平河悠だ。キレのあるドリブルで縦への推進力をもたらし、質の高いクロスをエリア内へと送り込む。個の力が求められる町田の前線において、このアタッカーの存在はもはや欠かすことができない。サガン鳥栖戦での3アシストは圧巻の一言だ。
その平河とともにU-23アジアカップで躍動した荒木遼太郎も今季の序盤戦の主役の1人だろう。近年は鹿島で燻ぶっていたものの、新天地のFC東京で完全復調した。ライン間でボールを引き出し、素早く前を向きゴールへと迫る。その攻撃センスの高さは特筆すべきで、出場6試合で5得点と高い決定力も示している。
柏のマテウス・サヴィオも開幕から好調を維持する。左サイドハーフと2トップの一角としてプレーし、ここまでリーグトップの4アシストをマークする。エースの細谷真大にいまだゴールがないなかで、技術とスピード、プレー強度の高さを備えたブラジル出身の10番の存在感は高まるばかりだ。
最前線は磐田のジャーメイン良で決まりだろう。かつてはドリブラーのイメージが強かったが、CF(センターフォワード)起用が増えた昨季に得点能力が開花。9得点を挙げて昇格に貢献すると、J1の舞台でも開幕からゴールを量産。川崎戦で4ゴールを記録するなど、強烈な左足と打点の高いヘッドを武器に10試合で10得点と早くも二桁に乗せた。29歳の遅咲きのストライカーもまた、今季のJ1に新しい風を吹き込んでいる。
原山裕平
はらやま・ゆうへい/1976年生まれ、静岡県出身。編集プロダクションを経て、2002年から『週刊サッカーダイジェスト』編集部に所属し、セレッソ大阪、浦和レッズ、サンフレッチェ広島、日本代表などを担当。2015年よりフリーランスに転身。