A代表6月シリーズ、五輪優先も大幅変更“回避”へ 冨安らも招集…森保監督が描く強化のビジョン【コラム】
森保監督が欧州視察から帰国後に取材対応
日本代表の森保一監督が約1か月の欧州・カタール視察を終えて4月30日に帰国。今回の成果を報道陣に語った。
今回は遠藤航(リバプール)、冨安健洋(アーセナル)、板倉滉(ボルシアMG)ら代表主力級のゲームを中心に10試合以上を観戦。1~2月のアジアカップで招集外となった鎌田大地(ラツィオ)のところにも足を延ばし、今季限りでの引退を表明した長谷部誠(フランクフルト)とも会って話をしたという。
その後、カタールに飛び、大岩剛監督率いるU-23日本代表が挑んでいるU-23アジアカップをチェック。4月29日の準決勝イラク戦で日本が8大会連続五輪出場権を獲得する瞬間を見届けて帰路に着いたという。
「最後に見たのがU-23の試合だったので、大岩ジャパンの若い選手の躍動ぶりは印象に残っている。自分たちでパリ五輪の出場権を掴み取る気持ちが伝わって来る素晴らしい試合で日本に元気を届けてくれた。優勝を決めて日本に帰ってきてほしい」と指揮官は前夜の熱戦に興奮冷めやらぬ様子だった。
こうしたなか、やはり注目されるのは、6月シリーズの強化。大岩監督とはまだ正式に話をしていないものの、パリ五輪強化には全面的に協力する構え。となれば、久保建英(レアル・ソシエダ)や鈴木彩艶(シント=トロイデン)らパリ世代のA代表組はもちろん、オーバーエイジ(OA)枠3人もそちらの活動に帯同する可能性が大だ。
実際、森保監督が指揮を執った2021年夏の東京五輪でも、6月シリーズには吉田麻也(LAギャラクシー)、酒井宏樹(浦和レッズ)、遠藤のOA3人が五輪代表の活動に参加。彼らを除いたメンバーで2022年カタール・ワールドカップ(W杯)アジア2次予選を消化した。
この時も最終予選進出は決まっていたが、森保監督は権田修一(清水エスパルス)や長友佑都(FC東京)や南野拓実(ASモナコ)といった当時の主軸を招集。そこに新戦力に加える形で底上げを図っている。
「6月(のA代表)は、可能な限り、選手や戦術をミャンマー戦とシリア戦で先に向けて試したいと思いますけど、試し過ぎて9月(の2026年北中米W杯アジア最終予選)にいいパワーを持てないことも考えられる。これまで招集してきた選手を中心に積み上げを考えながら、新たなチャレンジをできる部分はしたい」と指揮官は慎重な姿勢を示していた。
冨安のような怪我を抱えている選手についても「あまり代表の期間が空くと別のチームになっていることもあり得るし、連係が難しくなることもある。(怪我などで)プレーの継続に問題がなければ、(全員が)招集の候補に入ると思います」と語っており、やはりコアメンバーは基本的にする招集する方針のようだ。
つまり、新戦力の枠は五輪代表に回る選手、怪我人やオフを取らせる必要のある選手を除いた数人。おそらく4~5人程度になるのではないかと予想される。
「今季J1・10ゴールを挙げているジャーメイン良(ジュビロ磐田)や7ゴールの大橋祐紀(サンフレッチェ広島)を試してほしい」という声も少なくないが、もちろんチャンスはあるだろう。ただ、小川航基(NECナイメヘン)や町野修斗(キール)などコンスタントに試合に出ている欧州組もいるため、本当に新顔の抜擢があるのかどうかは未知数。しばらく代表から遠ざかっている鎌田や伊東純也(スタッド・ランス)らも含め、最終予選に向けて誰を試すのが最も効果的なのかを指揮官はここから模索していくことになる。
いずれにしても、6月シリーズを逃すと、新戦力を思い切ってテストする場はそうそうない。3バックなど戦術の幅を広げるチャレンジにも踏み切って、やれることはすべてやっておいてもらいたい。2026年北中米W杯優勝という大目標を掲げている以上、現状のままでいいわけがない。限られた時間を最大限有効活用して、より強固な組織を構築すべく、斬新なトライを見せてほしいものである。
(元川悦子 / Etsuko Motokawa)
元川悦子
もとかわ・えつこ/1967年、長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに転身。サッカーの取材を始める。日本代表は97年から本格的に追い始め、練習は非公開でも通って選手のコメントを取り、アウェー戦もほぼ現地取材。ワールドカップは94年アメリカ大会から8回連続で現地へ赴いた。近年はほかのスポーツや経済界などで活躍する人物のドキュメンタリー取材も手掛ける。著書に「僕らがサッカーボーイズだった頃1~4」(カンゼン)など。