浦和の「大崩れを防いだ」助っ人…屈強FWと好勝負、名古屋戦で目に留まった守備への貢献【コラム】

浦和のアレクサンダー・ショルツ【写真:徳原隆元】
浦和のアレクサンダー・ショルツ【写真:徳原隆元】

【カメラマンの目】浦和ゴール前での気迫に満ちた守備に注目

 J1リーグ第10節、ホームの埼玉スタジアムに名古屋グランパスを迎えた浦和レッズの立ち上がりは、決して順調な滑り出しとは言えなかった。ボールを持った浦和の選手は名古屋の素早いマークを受けて、前線にゴールの足掛かりとなる楔(くさび)のパスをなかなか打ち込めないでいた。横に逃げるボール回しが多くなり、攻撃に着手できない状況が続いた。

 そうした攻撃のリズムを作れない状況のなかで、前半24分に安居海渡が相手の一瞬の隙を突いて先制点を奪う。このゴールによって浦和は徐々にペースを引き寄せていく。1-0のリードで前半を折り返すと、後半25分には追加点をゲット。その後は名古屋の反撃に対して、序盤の展開とは逆となるプレーで対抗していった。

 浦和はボールを持った名古屋の選手をそれまで以上に激しくマークし、その動きを封じていく。終盤にかけてボールをキープしたのは名古屋だったが、浦和は高い集中力で縦へのボール供給を遮断し、ゴール中央への侵入を許さない。名古屋の劣勢の展開を打破しようとする。後半26分に一気に3選手を交代させた変化にも、浦和は落ち着いて対応した。

 この試合は両チームとも相手の長所を消すプレーに重きを置いていたため、全体の流れとしては、おとなしい展開で進んだ。そうした流れで目に留まったのは、やはり最終的に後半アディショナルタイムの1失点で凌ぎ、試合をまとめた浦和の固い守備だった。

 名古屋の攻めが正攻法だったということもあり、力と力の真っ向勝負の場面が多かった展開で、浦和の守備陣を統率したのがアレクサンダー・ショルツだった。名古屋攻撃陣からクリーンにボールを奪い、中央の守備を引き締めたショルツのプレーを象徴するのが、相手FWパトリックとの勝負のシーンだ。

 ボールを受けたパトリックがドリブルで浦和守備網の突破を試みる。すかさずショルツはマークに行く。パワーファイターのブラジル人FWに対して、デンマーク人DFは負けることなく身体を敵とボールの間に割り込ませる。そして、左足でのクリアを試みるが、ここでバランスを崩して尻もちを付いてしまう。しかし、ショルツは素早く立ち上がり、反転しながら右足でボールをコントロールしてパトリックに渡さず、攻撃のスイッチを入れるべく名古屋陣内に進出して行った。

 開幕3連敗からV字回復し、好調を維持する名古屋が相手とあって、ホームの浦和は終始、試合をコントロールするようなことはできなかった。実際、序盤の浦和は、名古屋の前線からの積極的な守備によって自陣に押し込められる時間帯があった。

 だが、ショルツを中心とした浦和DF陣も名古屋に劣らず冷静に、そして厳しいプレーで対抗し、チームの大崩れを防いだ。これが局面におけるジリジリとした駆け引きが繰り返された試合で、浦和が勝利できた要因と言えるだろう。

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徳原隆元

とくはら・たかもと/1970年東京生まれ。22歳の時からブラジルサッカーを取材。現在も日本国内、海外で“サッカーのある場面”を撮影している。好きな選手はミッシェル・プラティニとパウロ・ロベルト・ファルカン。1980年代の単純にサッカーの上手い選手が当たり前のようにピッチで輝けた時代のサッカーが今も好き。日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員。

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