U-23日本代表は「赤っ恥をかかされる寸前」 カタール戦で露呈した創造性とアイデアの欠如【コラム】
相手からGK退場の「贈り物」を受け取ってなお苦戦
U-23日本代表は4月25日、パリ五輪アジア最終予選を兼ねたU-23アジアカップの準々決勝でカタールと対戦し、延長戦の末に4-2で勝利した。しかし、かつてアジアサッカー連盟の機関紙「フットボール・アジア」の編集長やPAスポーツ通信のアジア支局長を務め、ワールドカップ(W杯)を7大会連続で現地取材中の英国人記者マイケル・チャーチ氏は、この日の若き日本代表が見せたパフォーマンスについて決して高評価していない。
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日本はGKユーセフ・アブドゥラーが退場して前半41分から10人となったカタールを延長戦の末に4-2で破り、準決勝へ進出した。しかし、五輪への切符を勝ち獲るまであと1勝、あるいはアジアで優勝できるかということへの説得力を与えるのには不十分な試合だった。
延長戦で決めた細谷真大と内野航太郎のゴールは、下馬評では決勝トーナメント進出もあまり予期されていなかった急造で迫力に欠けるチームを退けるものになったが、日本は危うく赤っ恥をかかされるところだった。
カタールの不注意により先制点を得ても、日本は自分たち自身で困難に陥り続けた。試合開始1分を回ったところで山田楓喜が決めたシュートは素晴らしいものだったが、日本はその優位性を生かそうとしなかったのだ。
たしかに藤田譲瑠チマと山本理仁は中央のエリアを支配していたが、この創造性豊かな選手たちは相手の深い位置で構える最終ラインを切り裂くのに十分なことができなかった。もっとも、細谷のセンターフォワードとしての動きが効果的だったかどうかには疑問が投げかけられるところだが……。
そして、カタールの同点ゴールの場面は予想外の出来事が起こったわけではなかった。アーメド・アル・ラウィのヘディングシュートがゴールを打ち抜いた時、日本の守備陣は全員がどうすればいいのか分かっていなかった。大畑歩夢が寄せることなくクロスを上げさせたあと、木村誠二と高井幸大は行方不明だった。関根大輝は反応が遅れた。
細谷への理解しがたい不必要なアタックでカタールのGKユスフ・アブドゥラーが退場になるという贈り物を受け取ってなお、日本は自分たちを苦しめ続けた。
アジアカップ8強で敗れた森保ジャパンと同じ轍を踏みかける
前半が同点で終わり、後半の立ち上がりはモスタファ・メシャルのピンポイントボールにジャセム・ガベルが合わせてイリディオ・ヴァレ監督が率いる急造の開催国チームがリードを得た。このプレーはカタールによる完璧なセットプレーだけでなく、日本の守備がいかに甘いかも雄弁に語った。
その後、カタールによる低い位置で圧縮した守備を打ち破るべく日本は奮闘したが、予想通りの苦境に陥った。松木玖生がハーフタイムで交代したからなのか? それは前半のイエローカードが気にかかったからなのか? 日本はアイデアを欠いた。
ここ数か月の中で、このようなことを見たのは2回目だ。カタールには準々決勝で日本を墓場に追いやる展望が開けただろう。森保一監督が率いたA代表がアジアカップの同じラウンド(準々決勝)でイランに敗れたのと同じ轍を大岩剛監督が率いるチームも踏みそうになっていたのだ。
アイデアのないなかで山田や佐藤恵允が奮闘していたが、山本のコーナーキックから木村がついに同点ゴールを決めた。荒木遼太郎と平河悠が投入されたにしても、わずかなだけの変化はカタールを延長戦まで持ちこたえさせた。
結局、カタールの抵抗もむなしく細谷のシュートが交代出場したGKアリ・ナデルの下を抜けてゴールが決まり、内野のシュートで勝負は決した。
日本はもっと説得力あるものを表現すべきチームでありながら、あまりにも創造性という点で不足していて満足できる水準のパフォーマンスではなかった。
その代わり、この日本チームにスペクタクルなものはないものの堅実で実力はある。このチームでは誰もチームとしてのベースから逸脱することがないだろう。しかし、そのようにして彼らは生き残り、五輪出場まであと1勝に迫り、2度目のアジアチャンピオンへの可能性も残したのだ。
(マイケル・チャーチ/Michael Church)
マイケル・チャーチ
アジアサッカーを幅広くカバーし、25年以上ジャーナリストとして活動する英国人ジャーナリスト。アジアサッカー連盟の機関紙「フットボール・アジア」の編集長やPAスポーツ通信のアジア支局長を務め、ワールドカップ6大会連続で取材。日本代表や日本サッカー界の動向も長年追っている。現在はコラムニストとしても執筆。