町田のサッカーは「ルール違反ではない」 “現実的戦術”を日本代表OB支持「批判はおかしい」【見解】
元日本代表DF栗原勇蔵氏は「理想と現実の差を受け入れて対応しているだけ」と支持
FC町田ゼルビアは、4月21日に行われたJ1リーグ第9節でFC東京に2-1で勝利し、首位に返り咲いた。昨季、黒田剛監督が就任してJ2優勝を果たし、クラブ史上初のJ1を戦う町田のサッカーに対しては厳しい声が上がることも少なくないが、元日本代表DF栗原勇蔵氏は「立派な戦術」との見解を述べている。
町田は昨季、高校サッカー界の名門である青森山田高校を長年率いた黒田監督を招聘し、26勝9分7敗・79得点35失点の成績でJ2を制覇。クラブ史上初のJ1昇格を果たした。
昨季からSNSで散見されたのは町田が「アンチフットボール」だという批判。また、黒田監督が青森山田高校を率いていた時代から武器としてきたロングスローも、さまざまな議論を呼んでいる。
J1に初挑戦している今季、9試合を終えてのファウル数はリーグで2番目に多い141個(湘南ベルマーレ146個に次ぐ)。イエローカード数はリーグ最多の21枚(2番目はアビスパ福岡の20枚)で、反則ポイントも37ポイント(2番目はFC東京の33ポイント)と一番多い状況となっている。
「J STATs」によれば、ボールポゼッションはリーグで最も低い41.8%。アクチュアルプレーイングタイム(試合中に実際にプレーが行われている時間)は、49分20秒でリーグ5番目に少ない(京都サンガF.Cの46分25秒、ヴィッセル神戸48分01秒、サンフレッチェ広島48分59秒、湘南49分19秒に次ぐ)。
一方で、町田はリーグ4位タイの13得点(うちロングスローから3点)を挙げ、得失点差5はリーグ4位。決して守備的とは言えないだろう。
現役時代に横浜F・マリノス一筋18年間プレーした日本代表OB栗原氏は、「人それぞれの考えはあっても、(町田のサッカーを)批判するのはおかしいと思います」と語る。
「時間を使うのも、ロングスローも戦術と言えば立派な戦術。ルール違反をしているわけではない。各チームにさまざまな事情があります。未来のサッカー界のことまで考えれば厳しい声が出ることもあるかもしれませんが、理想と現実的な考えの差。町田はそれを受け入れて、対応しているだけだと思います」
厳しい意見や懐疑的な目が向けられるのも、町田が今、Jリーグの中心にいることを示している証拠でもあるだろう。
(FOOTBALL ZONE編集部)
栗原勇蔵
くりはら・ゆうぞう/1983年生まれ、神奈川県出身。横浜F・マリノスの下部組織で育ち、2002年にトップ昇格。元日本代表DF松田直樹、同DF中澤佑二の下でセンターバックとしての能力を磨くと、プロ5年目の06年から出場機会を増やし最終ラインに欠かせない選手へと成長した。日本代表としても活躍し、20試合3得点を記録。横浜FM一筋で18シーズンを過ごし、19年限りで現役を引退した。現在は横浜FMの「クラブシップ・キャプテン」として活動している。