J1磐田の控え組“下剋上”なるか? ルヴァン杯で好アピール…スタメン浮上し得る3人【コラム】

磐田の最新序列を考察【写真:Getty Images】
磐田の最新序列を考察【写真:Getty Images】

ルヴァン杯長崎戦で控えメンバーを起用

 ジュビロ磐田はルヴァンカップの2回戦でV・ファーレン長崎に0-1で敗れた。4月17日に行われた11試合はすべて、J2かJ3がJ1に挑む構図だったが、磐田はこの日の試合で敗れた唯一のJ1クラブとなった。

 それでも横内昭展監督は「選手はよくやってくれたと思っています。試合は落として次のステージはもう迎えられませんけれども、その敗因はすべて私にあるなと思っています」と振り返る。そして「この長崎戦に向けて準備してきたことを遺憾なく発揮してくれた」と語り、リーグ戦の名古屋グランパス戦からMF藤原健介を除くスタメン10人が入れ替わったメンバーのパフォーマンスを高く評価していることを強調した。

 実際、1トップのFW石田雅俊や右サイドバックのDF川﨑一輝といった磐田での公式戦デビューの選手も複数いたなかでシュート22本を記録するなど、内容面ではかなり押し込んだ。被シュート数を3本にとどめたなか、セットプレーから決勝点を許してしまった現実はシビアに受け止めるべきだが、今回のメンバーからリーグ戦でベンチ入り、さらにはスタメンに食い込んでくる選手はいるはず。特にアピールが目立ったのはDF鹿沼直生、MFブルーノ・ジョゼ、DF高畑奎汰の3人だ。

 鹿沼は昨シーズンの夏場以降は主力のボランチとして磐田のJ1昇格を支えたが、新外国人のMFレオ・ゴメスやアビスパ福岡からMF中村駿を補強するなど、選手層の厚くなったボランチでベンチに入ることもできなかった。しかし、長崎戦ではセンターバックとしてDF森岡陸とコンビを組み、昨年のJ2得点王で、今シーズンもここまで5得点のFWフアンマ・デルガドを相手に奮闘。流れからほとんどチャンスを許さなかった。ゲームキャプテンを任された鹿沼は、攻撃の起点としても効果的な縦パスや展開で多くのチャンスにつなげた。

 現在、最終ラインではU-23日本代表DF鈴木海音がアジアカップ参戦中で不在。DF伊藤槙人はコンディション不良から回復してきたばかりだ。第8節の名古屋戦でDFリカルド・グラッサとともにスタメン起用された森岡もいるが、攻守両面で磐田を前向きにさせられる鹿沼がリーグ戦でもセンターバックのポジションからチャンスを掴んでいく可能性はある。

 鹿沼の本職であるボランチは副キャプテンでもあるMF上原力也が軸だが、20歳の藤原が台頭してきている。リーグ戦で3試合続けて先発起用されている藤原は名古屋戦から中3日の長崎戦で唯一、連続スタメンで起用されて、セットプレーのキッカーも担っている。その藤原と長崎戦で中盤のコンビを組んだMFレオ・ゴメスなど比較的、選手層の厚いポジションで鹿沼が割って入るのは簡単ではない。現在のチーム状況を考えれば、センターバックとボランチのポリバレントとしてアピールしながらボランチに活路を見出していくことは十分に可能だ。

怪我で出遅れた新助っ人、徐々にフィットし長崎戦で存在感

 新外国人の1人であるブルーノ・ジョゼは、チームにフィットしてきた3月に足首の怪我をしてしまい出遅れてしまった感がある。それでも第6節のアルビレックス新潟戦から3試合続けて途中投入されており、短い時間でも縦の突破力を発揮して、惜しいチャンスを演出している。そして長崎戦でスタメン起用されると、右サイドからの攻撃はもちろん守備強度でも相手のサイドバックを封じ込むなど、存在感を示した。

 ポテンシャル的にはリーグ戦のスタメンでも十分に活躍できると見るが、良くも悪くもボールが集まってくる傾向にあり、個人技が主体になるというのは磐田の攻撃思考からすると“諸刃の剣”感がある。ただ、守備面でもスタートから貢献できることを証明できたことはプラス材料だ。ここまでリーグ戦で右サイドの主力を担うMF松本昌也は周囲とのコンビネーションが得意で、シャドー的な動きでフィニッシュに絡んでいくタイプ。特長が全く異なる2人を横内監督が、どう使い分けていくか。対戦相手のスカウティングが進んできている時期だけに、選手交代も含めて、磐田の強みになり得る。

 J2の大分トリニータから加入したDF高畑奎汰も、実は怪我で出遅れてしまった1人だ。そこから徐々にコンディションを上げてきたが、左サイドバックの主力にはDF松原后が君臨。大卒ルーキーながら右サイドバックでポジションを勝ち取っているMF植村洋斗も左サイドをこなせるため、高畑に割ってはいる余地がなかった。松原が怪我で離脱している間に、高畑は京都サンガF.C.戦と名古屋戦で交代出場。そこからの長崎戦でのスタメンだった。左足のキックに絶対的な自信を持つ高畑。大分では3バックのアウトサイドも担ってきたが、縦にどんどん攻め上がるよりも、ビルドアップに関わりながらタイミングよく高いポジションに顔を出すタイプだ。

 長崎戦はサイドアタッカーのMF古川陽介と縦のコンビを組み、柔軟にインとアウトのポジションを使い分けながら、ドリブルの得意な古川をサポートしてチャンスに絡んだ。大分時代は守備面に課題が見られたが、横内監督の要求する守備のデュエルでも、しっかりと戦えることを示している。長崎戦から中2日の福岡戦では引き続き、植村が左サイドバック、20歳のDF西久保駿介が右サイドバックで先発すると見られるが、流れを変えたい状況や古川との縦のセットで、これまで以上に重要な役割を果たす可能性は高い。セットプレーの左足キッカーとしても魅力だ。

 そのほか、長崎戦では得点力に定評のある石田が1トップで奮闘。ゴールこそなかったもののセンスの高さを垣間見せた。前半に足を打撲してしまい、思った以上にその後のプレーに影響したというのは残念だったが、試合を重ねることで良くなっていくタイプであることを自認しており、横内監督がどうリーグ戦に組み込んでいくか注目したい。

 そして来年の磐田加入が内定しているMF角昂志郎(筑波大)も特別指定選手としてプロデビュー。右サイドからの積極的なドリブルなど、気持ちの強さはプレーに表れていた。今後、どこまで磐田の活動に参加できるかは不明だが、角が右サイドで重要な戦力の1人になっていけば、古川との左右のアタッカーコンビは対戦相手にとっても脅威になりそうだ。

 ルヴァン杯の長崎戦からアウェーの福岡戦までは中2日ということで、長崎戦のメンバーは九州に残り、FWジャーメイン良やGK川島永嗣など長崎戦のメンバー外だったリーグ戦の主力組が合流している。そこから“ルヴァン組”を含めどういった陣容で福岡に挑むのかまずは注目だ。

(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)

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河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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