U-23日本退場劇の裏で…「19歳CBに明るい未来」 英記者が見たパリ世代の伸びしろ【コラム】
パリ五輪最終予選の初戦で勝利、大岩ジャパンを英記者はどう見た?
U-23日本代表は4月16日、パリ五輪最終予選を兼ねたU-23アジアカップのグループリーグ初戦で中国と対戦し、MF松木玖生の決勝ゴールで1-0と勝利した。かつてアジアサッカー連盟の機関紙「フットボール・アジア」の編集長やPAスポーツ通信のアジア支局長を務め、ワールドカップ(W杯)を7大会連続で現地取材中の英国人記者マイケル・チャーチ氏がこの試合を総括し、一発退場となった行為を厳しく見つつ、その試合で安定感を示した19歳センターバックのプレーを称えている。
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火曜日にジャシム・ビン・ハマド・スタジアムで行われたU-23アジアカップ初戦の中国戦。主審のケイシー・レイベルトが試合終了のホイッスルを吹いた時、日本代表を率いる大岩剛監督は安堵のため息をついたことだろう。
サムライブルーは75分以上もの間、10人で戦わなければならなかった。西尾隆矢の不必要なレッドカードによって引き起こされた嵐をなんとか乗り越え、難しいグループリーグの初戦で貴重な勝ち点3を手にした。
これは当然の結果だったのだろうか? 西尾の狂気の瞬間がなければ、より快適に勝利することができたかもしれない。
中国のジャ・フェイファンに対するセレッソ大阪DFのリアクションは軽率で、不必要なものだった。そして、レッドカードを見た時に驚いた様子も滑稽と言わざるをえない。
複数のカメラがすべての動きを追跡し、VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)が無数の角度から映像を監視している現代の試合で、このようなリアクションが見逃されるはずがない。
西尾の未熟さは、チームに大きな影響を与える可能性があった。オリンピック出場に向けたグループBの争いはよりタイトなものとなるかもしれなかった。
ひとまずそうならずに済んだのは、間違いなくチームメイトたちの冷静なアプローチによるものだ。彼は自分に欠けていたプロフェッショナリズムを示してくれた周りの選手たちに感謝すべきだろう。
レッドカードが出るまでは日本が試合の主導権を完全に握っていた。松木玖生の得点本能によって大岩ジャパンは試合開始わずか8分でリードを奪い、さらに多くの得点も期待された。
試合開始直後から日本は中国陣内でプレーする時間が長く、相手の脅威はカウンターアタックのみだった。
しかし、レッドカードが試合全体の流れを一変させた。山本理仁が途中交代となり、松木玖生が深い位置に下がった。そして、大岩監督は西尾に代わるセンターバックとして木村誠二を投入した。
これによって細谷真大は前線で孤立し、反対に中国に前に出ていく勇気を与えてしまった。
幸いにも、小久保玲央ブライアンが何度も素晴らしいセーブを見せて中国の反撃を阻止した。高井幸大は中国のフィジカルにも屈しない力強いパフォーマンスを披露。この19歳のセンターバックには明るい未来が待っている。
大岩監督は金曜日のUAE戦では、この試合のようなドラマが起こらないことを願っていることだろう。
長い時間1人少ない状況で戦うことになったため、この日本代表がアジアのタイトル、そして3枠しかないオリンピック出場権の獲得に値する力があるのかを正しく判断することは難しい。しかし、少なくとも勝ち点3を手にした日本が正しい道を進んでいることだけは間違いない。
(マイケル・チャーチ/Michael Church)
マイケル・チャーチ
アジアサッカーを幅広くカバーし、25年以上ジャーナリストとして活動する英国人ジャーナリスト。アジアサッカー連盟の機関紙「フットボール・アジア」の編集長やPAスポーツ通信のアジア支局長を務め、ワールドカップ6大会連続で取材。日本代表や日本サッカー界の動向も長年追っている。現在はコラムニストとしても執筆。