欧州日本人選手アウェー戦スタンドに発煙筒、紙吹雪…愛するチームへ忠誠誓った応援風景【コラム】
【カメラマンの目】本場のアウェーサポーターが繰り広げた熱気
4月12日からヨーロッパに取材に来ている。撮影を予定しているのは日本人選手が所属するチームの試合で、ここまでストラスブール対スタッド・ランス、ダルムシュタット対フライブルクに足を運んだ。
編集部からは日本人選手を応援するグッズを持った日本人ファンがいれば、写真に撮ってほしいと頼まれていた。まずは13日のリーグ・アンの試合。日本人の観戦者は本場サポーターのなかにはまずいないだろうと思い、メインスタンドなどを探してみた。案の定、スタッド・ランスのユニフォームを着た日本人ファンを見つけることはできなかった。
それも予想できたことだった。伊東純也と中村敬斗が所属するスタッド・ランスはアウェー戦だったため、スタンドの大部分はホームサポーターが占めている。そうした状況で、あからさまに敵地のチームを応援するような恰好やグッズを持っての観戦は、常識的に考えてあり得ない。
さらに、本場の集団に交じっての応援もなかなかの勇気がいる。なによりスタッド・ランスのサポーターたちに与えられていた場所は、コーナー付近の一角で試合を見るにはあまり良い場所とは言えない。しかも、前と左右の三方をフェンスに囲まれている。本場のサポーターはその場所を割り当てられているのだろうが、普通の観戦者ならあの一角のチケットは、まず買わないだろうという場所だ。
それでもカメラの望遠レンズを使ってサポーターを見ていったが、やはり日本人ファンは探し出せなかった。本場のサポーターに飛び込んでの観戦は、危険な雰囲気が漂い難しい。しかも、スタッド・ランスサポーターの集団以外では、アウェーチームの応援グッズを持って、安全に試合を見られる場所はない。そのため日本人ファンの観戦者はいたかもしれないが、応援グッズは持っていなかったということなのだろう。
試合でアウェーとなるチームのサポーターの思いは、きっと劣勢となる状況で自分たちが応援しなければ誰がやるんだという強い使命感を持って敵地に乗り込んできている。数的不利を補うために、そして愛するチームのために、あの手この手を使って応援を行う。14日のブンデスリーガでは、フライブルクサポーターが大音響の声援はもちろん、前半と後半の開始にカラフルな発煙筒を焚いて士気を上げた。ピッチには煙が立ち込め撮影どころではなくなる。
さらに試合終盤には大量の紙吹雪をスタンドから撒いた。試合後、フライブルクサポーターの声援に応えるために、彼らが陣取るスタンドに選手たちが向かう。その選手のなかの堂安律を撮影しようと、背後のスタンドにフライブルクサポーターがひしめいている前に立つ。この時、試合中に撒かれた紙吹雪は、足首が埋まるほど地面を覆い隠していた。それにしてもあの膨大な量の紙吹雪をどうやって持ち込んだのだろうか。細かい紙きれとはいえ、その全体の量は簡単に運べるものではない。
そして、ピッチの周囲に散らばる相手サポーターが残していった赤と白のとんでもない量の応援アイテムを片付ける人たちのことを思うと、その苦労が察せられた。道徳的視点から見れば、正しい行為とは言えないだろうが、サポーターのチームを愛する思いは果てしなく深い、といったところか。
(徳原隆元 / Takamoto Tokuhara)