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8社とスポンサー契約…東大サッカー部「プロモーションユニット」が目指す有機的な取り組み【インタビュー】
「金銭のやり取りにとどまらない有機的な取り組みを」…スポンサー獲得部隊の狙いとは?
ベルギー1部シント=トロイデンVVとの提携など、近年先進的な活動を見せる東京大学運動会ア式蹴球部(体育会サッカー部。以下、ア式蹴球部)は先日、スポンサー企業である株式会社テレシーの協力の下、ジェフユナイテッド千葉で活躍する元日本代表DF鈴木大輔選手を招いてイベントを開催。現役Jリーガーから“リーダーシップ”を学べる貴重な講義が開かれるなど、またとない機会となった。
こうしたイベントを実現させたのが、ア式蹴球部に存在する「プロモーションユニット」だ。今回は同ユニットに所属する垣内志織さん(東京大学4年生)にインタビューを行い、プロモーションユニットはどのような活動を行っているのか話を聞いた。垣内さんはさまざまな活動に積極的に携わることで、将来的に役立つスキルを身に付け、自分の存在価値を見出すことができていると、そのやりがいについて語ってくれた。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部)
◇ ◇ ◇
ア式蹴球部では、サッカーの競技面以外にも力を入れている。その代表格となるのが「プロモーションユニット」だ。このプロモーションユニットは、企業との関わりを通じてスポンサー獲得を目指して活動しており、現在8社とのスポンサー契約を結んでいる。
スポンサー活動の一環として、企業と学生が交流を図るイベントが開催された。こうした取り組みについて、プロモーションユニットの一員である垣内さんは「金銭のやり取りにとどまらない取り組みが目的だ」と語る。
「スポンサーを探す=単にお金を取ってくるというわけではなく、私たちは金銭のやり取りにとどまらない有機的な取り組みを目指しています。大学生の私たちが社会の第一線で活躍する方々と交流させていただけるということはかなり貴重だと思います。そういった人や経験が活発に交流できるような、有機的な取り組みができればと考えています」
今回、株式会社テレシーと鈴木大輔選手を招いた行ったイベントは、まさにそういった思いが形になった事例だという。
「こういった、ア式全体と企業様を巻き込んだ有機的な取り組みを模索していたところ、テレシーの川瀬さん、そして鈴木選手からお声がかかり、今回このようなイベントを実行することに至りました。
イベントでは、部員とテレシー様、そして鈴木選手が密に関われる機会としてフットサル大会を開催しました。サッカーというコンテンツを通じてみんなが汗を流すことで一気に親睦も深まり、お互いにスーツを着て臨む企業説明会では得られないような、より密な経験ができたと思います。
フットサル大会のあとには、鈴木大輔選手にリーダーシップに関する講義を行なっていただきました。現在もプロの世界で活躍されている方のお話を聞く機会というのは本当に貴重ですし、まさに私たちがやりたかった取り組みでした」
「自分の存在価値を探している」スポンサー部隊が活発化する理由とは
今回のイベントに見られるような先進的な取り組みを生み出しているのは、「全員が自分の存在価値を探している」という部員の主体性があってこそだという。垣内さんはプロモーションユニットの中で自分の能力を生かせる居場所や、やりがいを見つけることができていると語る。
「例えば、私はピッチ内ではマネージャーとして活動していますが、マネージャーの業務は根本的に単純作業であることから、チームの勝利にどれほど貢献できているか可視化しづらく、『自分である理由』を見失っていました。一方で、スポンサー活動であれば、人と交渉するのが得意な自分にしか務まらないのではという自負があり、存在価値を見出せたことが大きかったと思います。
『資金不足』というのは部活にとって比較的急務な課題だと感じています。この深刻な課題に対して、スポンサー企業を集めて解決することは責任を伴いますが、同時に大きなやりがいとなっています。一番の魅力としては、大人と関わる機会が提供されるところかと思います。プレゼン1つにしても、相手の立場で話し方を変えたり、相手の言葉から真に相手が求めていることは何か、考えながら最適な提案をすることは、将来的にきっとどこかで役立つスキルだと思います」
そして、そんな部員たちの主体性はア式蹴球部のある独特の環境によって育まれているという。
「ア式にいると、社会の縮図を体験できると感じます。本当にいろいろな人がいますが、共有しているのは『体育会として勝利して大学に貢献すること』という最も大きな目標くらいで、それに至るモチベーションや属性、役割は人それぞれ全く異なります。だからこそ他人に影響されて自分自身もやる気を失ったり、存在価値を見失ったり、やるべきことをやらない人に対して不満が溜まったりもします。
毎年、人が出入りするなかで、卒部のたび先輩がいなくなることへの危機感が蔓延しつつも、代わりの人が現れてなんとかなっていく。でも、そういったことを繰り返すことで、ゆっくりと確実に形を変化させていく。誰一人、その人じゃないといけない人はいないけど、誰もいなくなってはいけないところ、人と人の小さな葛藤や喜びが日々衝突しながら生きている組織であること。そうしたところは、どこかの大企業にも、社会そのものとも共通したところがあるんじゃないかと思っています」
垣内さんにとって、プロモーションユニットでの活動は、単なる部活動の枠組みを超えて、社会に出る前の貴重な経験を積む場所となっていた。そういった個人の成長が巡り巡って部全体へと還元されることが、東大ア式蹴球部が持つ特長の1つとも言えるだろう。進化を続ける彼女たちの今後からも目が離せない。
(FOOTBALL ZONE編集部)