OA推薦は浅野拓磨…識者が徹底対談で導き出した“最適解” 主将マークが最も向いている現役A代表は?

オーバーエイジ(OA)の人選を議論【写真:徳原隆元】
オーバーエイジ(OA)の人選を議論【写真:徳原隆元】

【対談後編】OAの候補は冨安、板倉…強烈な個を持つ堂安か

 大岩剛監督率いるU-23日本代表は4月16日にパリ五輪最終予選を兼ねたU-23アジアカップのグループリーグ初戦・中国戦に臨む。8大会連続の五輪出場が懸かっているパリ切符を掴み取ることができるのか――。日本サッカー界の至上命題とも言えるなかで、「FOOTBALL ZONE」ではJリーグや年代別代表、日本代表まで幅広く取材をする河治良幸氏と元川悦子氏が大岩ジャパンについて熱論を交わしてもらった。後編ではオーバーエイジ(OA)の人選を議論していく。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部・小杉舞)

   ◇   ◇   ◇   

元川 OAは夢ベースの話になっちゃうけど……冨安健洋(アーセナル)は呼びたくても怪我があるからね。トラブルが起きないようにということを考えたら、アーセナルも拘束力のない大会に対してNG出すのかなという気もする。いろんなポジションができて、あれだけのメンタリティーを持っている人間だからいてくれたら鬼に金棒でしょうけど。

河治 東京五輪は協会も命運をかけていたから、OAも現役A代表の3人。吉田麻也、酒井宏樹、遠藤航という3人を呼んだ五輪だった。ただ、ロンドン五輪では麻也を呼べたのも欧州でやっている大会で移動距離も少ないし、まだシーズンが始まっていない時期だった。でもやっぱり基本的に招集に応じてくれるのは『ここで五輪に出ることが、選手の価値を高めることになる』と考えているクラブ。既にビッグクラブだったり、プレミアのクラブは、当然呼ばれたくない。

元川 田中碧(デュッセルドルフ)はいいかもしれないね。自分もステップアップしたいだろうし、価値が高まれば移籍金も挙げられる。大きな魅力がある大会。

河治 板倉もボルシアMGにいてくれる限りは、招集の可能性があるかもしれない。やっぱり五輪経験がある選手の方がいい。

元川 呼ぶんだったら五輪とワールドカップ(W杯)両方の経験があった方がいい。だから(五輪経験のない)伊藤洋輝よりも板倉……となるけど、ただロンドン五輪ときには吉田麻也が少し年上のOAで入った。伊藤はそういう存在。ここでモチベーションを発揮して引っ張るみたいなことも五輪経験はないけど、W杯は出ているし、五輪以上の大きなところでやっているわけだからそういう可能性もある。

河治 ただポジション的にはいっぱいあるし左SBもほしい。メンタル的に強烈なリーダーシップを取ってくれる人材もほしい。やっぱり、ぐいっと引っ張ってくれる人となると……。

元川 板倉だよ。

河治 でもこういうのは、状況が人を育てるというところもある。長谷部誠のキャプテンマークもそうだけど、伊藤はむしろここでそういうことをさせることで、ぐいっと代表でも上がってくる、そういうリーダーシップに期待したい。

元川 でも今現状でそういうことができる人となると、違うんじゃないですか。あと堂安律は五輪目指しているんだよね。

河治 それこそキャプテンマークとなると一番向いている。

元川 前の方でカツを入れるみたいなのは堂安が一番向いている。ただポジションはFWじゃない。だから1枚、サイドを削って入れるかという問題はあるよね。

河治 そうなんだよね。堂安がいれば右が基本にはなるけど、状況的によって鈴木唯人のようなポジションもできる。ただ、三戸舜介(スパルタ・ロッテルダム)や山田楓喜(東京ヴェルディ)もいる。久保建英も出てくる可能性もあるしね。

元川 堂安もフライブルクから次移籍するとなればビッグクラブしかない。フライブルクでは十分主力で出ているから、移籍となればステップアップ以外は考えられないだろうし。……浅野拓磨は? 浅野だと五輪もW杯も出ていて大舞台に強いし人間的にもいい、リーダーシップがある人ではないけど、ここ一番で頑張ってくれるし、ボーフムから移籍したい、条件的には合致する。

河治 浅野はいい人選かもね。

パリ五輪出場できなかったら…A代表へもたらされる多大な影響

元川 浅野なら周りともすぐ馴染むし、ハレーションを起こすこともないだろうし。弟や妹、兄弟が多いから年下の扱いにも慣れているだろうし(笑)。

河治 確かに、浅野はいい気がするよね。FW呼ぶなら上田綺世ではなくて、サイドもできてハードワークもできてというのもアリかなと思う。

元川 (カタールW杯で)ドイツ相手にゴールしているんだよ。遠藤航はさすがに2度も呼べないだろうし。リバプールであれだけ出ているし。

河治 遠藤も監督が変わるし、ちゃんとキャンプ、ツアーを全部消化しなくちゃいけない。いずれにしても、ちょっとこの世代は全体的に少しタレント不足だと思う。パリ世代はU-20W杯がなくなっちゃったり、コロナ禍で遠征できなかったり。そういうのもあって結局U-20W杯で目立つ活躍ができず、海外移籍も少なかった。もし五輪に出られないってことになると、同じ世代が次のW杯に行くことになる。下からの突き上げがないと、東京五輪世代が続けてW杯の中心になってくるし、日本の今後を考えても非常に困る。

元川 ジーコジャパンの二の舞になってしまうこともあり得るよね。

河治 パリ世代からぐんぐん伸びてくれないと。

元川 東京五輪が1年伸びたことも大きいよね。24歳になって東京五輪世代はかなり救済された。予定通りに行われていたらこれだけ順調にA代表に選ばれていたかというと分からない。今ではほとんどが中心選手になっているんだから、奇跡的。割合でいうと黄金世代を超えるかもしれない。

河治 U-23アジア杯で結果もそうだけど、これからA代表に入ってくる選手がこの1年でどれだけ出てくるかというのが重要。パリ五輪でのメダルも大事だけど、究極は北中米W杯に向けてどれだけA代表で活躍する人材が出てくるか。

元川 カタールW杯、スペインは日本戦で3人も10代の選手がスタメンだった。協会も底上げが必要と言っていた。ここで五輪を逃したらとんでもないことになる。東京五輪世代が予想以上に伸びているというのはあるけど、せめて所属クラブでこの選手これだけやれているのに森保さんなかなか呼ばないよねと話題になるぐらいになっていかないとね。

[プロフィール]
河治良幸(かわじ・よしゆき)/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

元川悦子(もとかわ・えつこ)/1967年、長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに転身。サッカーの取材を始める。日本代表は97年から本格的に追い始め、練習は非公開でも通って選手のコメントを取り、アウェー戦もほぼ現地取材。ワールドカップは94年アメリカ大会から8回連続で現地へ赴いた。近年はほかのスポーツや経済界などで活躍する人物のドキュメンタリー取材も手掛ける。著書に「僕らがサッカーボーイズだった頃1~4」(カンゼン)など。

(FOOTBALL ZONE編集部・小杉 舞 / Mai Kosugi)

page 1/1

今、あなたにオススメ

トレンド

ランキング