町田に垣間見た”強さの真髄” U-23日本代表MFを”おとり”に…対策を逆手に取る底力と精神力
町田が川崎を1-0で撃破…”平河封じ”も攻略
町田ゼルビアは4月7日、J1リーグ第7節で川崎フロンターレと対戦し、敵地で1-0の勝利を収めた。U-23日本代表に選出されたMF平河悠は、躍進する町田の中心選手として活躍しているが、この日は川崎の厳しいマークに遭った。それでも、川崎の対策を逆手に取る町田の底力、そして、そのために”おとり役”を厭わない平河のメンタリティーに、首位に君臨する町田の強さの真髄を垣間見た。
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町田からは平河、FW藤尾翔太がパリ五輪アジア最終予選に挑むU-23日本代表に選出。2トップの右を務める藤尾と右サイドの平河が、同じくU-23日本代表に選ばれた川崎DF高井幸大を挟み込む構図となった。必然的に町田の右サイド、川崎から見た左サイドが注目の攻防戦となったが、試合は前半32分、MF仙頭啓矢の縦パスで左サイドを突破したMF藤本一輝がグラウンダーのクロスを放り込むと、走り込んだ藤尾が押し込んで先制点を奪った。
その後も町田は左サイドの攻撃を中心に川崎のゴールマウスへ迫るなか、後半4分に左サイドのクロスから最後は藤尾が再びヘディングでネットを揺らしたが、ビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)の確認の結果、直前のプレーでオフサイドを取られ、ノーゴール判定になった。それでも1点のリードを守り切った。試合を通して、攻撃の中核を担う右サイドの平河に厳しいマークがつくことになったが、左サイドで川崎を攻略し、対策を見事に逆手に取ってみせた。
試合後、黒田剛監督は「川崎も(平河への対策に)重きを置いてきたのか、藤本がかなり手薄になっていたところから前半に得点が取れた」と説明し、藤本一輝も「狙っていた形だった」とコメント。結果的にこの日は見せ場が少なかった平河も、「家長(昭博)選手がこちらのサイドに流れてきていてことで、守備の時は逆に相手が1枚多くて、自分たちの攻撃の時は逆サイドが空いていることは分かっていたので、左サイドに任せるというわけではないが、警戒されている自分がおとりになって周りを生かせればいいと考えていた」と、おとりとしての役割を振り返った。
町田が証明した”対策を凌駕する底力”と”フォア・ザ・チーム精神”
川崎にとって不運だったのは、土壇場でのMF橘田健人の欠場、さらに、早々のDFジェジエウの負傷交代だった。守備のキーマンの不在でセカンドボールをことごとく奪われ、町田の波状攻撃に歯止めをかけることができなかった。それでも、MF脇坂泰斗は「(川崎から見た)右サイドが手薄になっていた時間帯はあった。左サイドに人数をかけすぎてしまって、瀬川選手が1人で相手2人を見るような形になってしまう場面があった」と、バランスの傾きを認めている。
右サイドの守備を担っていたMF瀬川祐輔は「今日は形を決めずに流動的に対応することになっていたので、例えばアキさん(家長)が右から左サイドに流れている場面でボールをロストした時は、こちらのサイドを狙われるカウンターを受けたり、GKがキャッチしてすぐに始められた時に下がる対応などは難しかった」と、本業ではない右SBで出来る限りの働きぶりは示したものの、実際は新しいポジションでまだ試行錯誤中の瀬川にとって過酷な任務となった。
町田は今後も平河が配置される右サイドへの対策が強まる試合も多々出てくるだろう。それでも、左サイドでも引けを取らない破壊力を証明した町田の”対策を凌駕する底力”、そして、たとえ自身が試合から消えてもチームのために黒子に徹することもできる平河の”フォア・ザ・チーム精神”に、昇格組にしてJ1の舞台で快進撃を見せる町田の強さの一端を見ることになった。
(城福達也 / Tatsuya Jofuku)