福岡イラン人FWロング弾炸裂の瞬間「あ、見た」…浦和戦ゴール直前に見えた光景【コラム】

福岡のシャハブ・ザヘディ【写真:徳原隆元】
福岡のシャハブ・ザヘディ【写真:徳原隆元】

【カメラマンの目】福岡のFWシャハブ・ザヘディが決めたロング弾に注目

 その時、心のなかで「あ、見た」と思わず呟いていた。

 560ミリの望遠レンズを装着したカメラのファインダーにアビスパ福岡のFWシャハブ・ザヘディを捉えた。湯澤聖人の後方からのパスが浦和レッズDFに当たってコースが変わり、ザヘディへとつながる。ボールをキープしたイラン人FWは大股のストライドからのドリブルで前線へと進出し、そこからやや内側へとボールを運ぶ。

 背後から浦和DFの渡邊凌磨が追い、佐藤瑶大とマリウス・ホイブラーテンが前方で待ち構える。ただ、佐藤とホイブラーテンはゴールとはまだ距離があったため、シュートはないと判断したのか、ザヘディの出方を伺うように間合いを一気に詰めることをしなかった。

 しかし、このあとの刹那に起こる失点を考えると、2人はもっと素早くそして激しくマークに行くべきだった。

 J1リーグ第5節の浦和対福岡戦。前半28分にアウェーチームのFWザヘディは浦和ゴールまでかなりの距離のある位置から左足を一閃する。低い弾道の強烈な一撃は、GK西川周作の懸命に伸ばした左手をかわしてゴールネットに突き刺さった。

 一連のプレーにシャッターを切り続けた写真から、このロングシュートが成功した一因を知ることができる。それは撮影の最中にも分かったことだ。

 ゴールが決まるにはさまざま技術的な因子がある。その1つにシュートを放つ前にゴールの位置を確認してから打つというのがある。蹴るべき場所を定められれば、シュートの成功の確率が上がるのは当然である。

 だが、相手のプレッシャーを受ける試合では、必ずしもそうした余裕があるとは限らない。浦和守備陣のシュートに対応する意識が低かったということもあるが、ザヘディはドリブルをしながらルックアップし、しっかりとゴールの位置を確認している。その動きがカメラのファインダーを通して見て取れた。そして、豪快に左足を振り抜いたシュートは見事にゴールネットを揺らした。

 来日して日も浅くまだ環境に慣れていないなかで、こうした身に付いているゴールへの定石の動きができるのは、ザヘディのFWとしてのポテンシャルの高さを表していると言えるだろう。

 現時点では福岡でのプレーは6月末までと時間が限られているが、前線のキーマンとして活躍することが期待される。

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徳原隆元

とくはら・たかもと/1970年東京生まれ。22歳の時からブラジルサッカーを取材。現在も日本国内、海外で“サッカーのある場面”を撮影している。好きな選手はミッシェル・プラティニとパウロ・ロベルト・ファルカン。1980年代の単純にサッカーの上手い選手が当たり前のようにピッチで輝けた時代のサッカーが今も好き。日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員。

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