欧州帰り、京都の長身FWはゲームメイクも可能 マルチな才能で「最も光彩を放つ」

ピッチの広範囲でプレーをした原大智【写真:徳原隆元】
ピッチの広範囲でプレーをした原大智【写真:徳原隆元】

【カメラマンの目】原大智が広範囲にわたる活躍で東京Vを苦しめた

 シーズン開幕前に京都サンガF.C.の名鑑やプロモーションに使用する写真撮影の手伝いをやらせてもらった。どの選手もカメラマン側の要望に快く応じてくれて終始、賑やかな撮影となった。ピッチで見せるプレーとは違うが、彼らのプロスポーツ選手としての自覚をそんなところからも感じることができ、楽しい時間を過ごすことができた。

 そうした選手たちのなかで、とびきり張り切って撮影に臨んでくれたのが豊川雄太だった。サポーターなら誰もが知っているだろうが、京都の背番号23は明るい性格でチームのムードメーカー役を担っている。

 J1リーグ第5節のアウェーとなった対東京ヴェルディ戦は開始4分に、その豊川がゴールネットを揺らした。だが、このゴールは豊川を中心に歓喜する選手たちの思いとは裏腹に、オフサイドの判定で得点を取り消されてしまう。

 しかし、京都の選手たちは意気消沈することなく、逆に闘志に火が付いたようにチームは勢いを増していった。前線から積極的な守備を行い、東京Vを追い込んでいく。

 その京都の3トップは中央に長身の原大智、右に豊川、そして左にブラジル人のマルコ・トゥーリオという布陣。この京都が形成する攻撃陣で最も目に留まったのが原だった。

 チームの2点目も叩き出した原はセンターフォワード(CF)というポジションで長身を生かして前線に張り、ターゲットマンとしての役割を与えられているとてっきり思っていた。だが、原のプレーは最前線に限られることなく、広範囲でゲームに絡み攻撃をリードしていく。

 相手マークを受けながらもドリブルで前線へと進出し、積極的にシュートを放つ一方で、ゲームメーカーとしての役割も果たす。両サイドのFWとの関係も良好で、ボールを持った豊川とトゥーリオのサポートにも回ってつなぎ役も務めるマルチぶりを見せた。長身から繰り出すダイナミックなプレーは、京都の選手のなかで最も光彩を放っていた。

 こうして前半は活発な動きを見せた京都のペースで進んだが、試合はそのまますんなりとは終わらない。京都は前線からの守備を試合開始からフルスロットルで行い、東京Vの出足を止めていたが、ゴール裏から見ていて果たしてこのハイペースを最後まで保てるのかとも感じていた。

 その懸念は現実となっていく。やはり後半20分ごろから京都の勢いに陰りが見えてくる。

 それまでは東京Vのキャプテン森田晃樹が最終ラインまで下がり、前線にボールをつなげようとしても京都は激しいマークを見せてパスの出しどころを封じていた。だが、残り25分くらいからは、さすがに運動量が落ち東京Vにペースを奪われ、終盤には2失点を喫することになる。東京Vは開幕からの終盤の失点癖から一転して勝負強さが出てきており、その意地を見せつけられる結果となった。

 試合終盤まで2-0とリードしていた京都にすれば、引き分けは決して満足のいく結果ではないだろう。しかし、攻守に渡って相手選手に対して果敢に挑んでいく京都の選手たちの姿勢は見ていて気持ちが良かった。

 京都がリーグ上位へと進出するためには、後半途中まで見せていたアグレッシブな戦いを、90分間を通して続けられるかに懸かっている。

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徳原隆元

とくはら・たかもと/1970年東京生まれ。22歳の時からブラジルサッカーを取材。現在も日本国内、海外で“サッカーのある場面”を撮影している。好きな選手はミッシェル・プラティニとパウロ・ロベルト・ファルカン。1980年代の単純にサッカーの上手い選手が当たり前のようにピッチで輝けた時代のサッカーが今も好き。日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員。

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