乾貴士の決勝弾を生んだブラジル人FWの輝き 名勝負につながる明確なチームスタイル【コラム】
【カメラマンの目】千葉対清水は後半終盤まで拮抗した戦いを繰り広げる
見応えのある試合だった。
J2リーグ第5節、ジェフユナイテッド千葉対清水エスパルスの一戦は、お互いが持ち味を発揮し、緊張感のある攻防が90分間繰り広げられた好ゲームとなった。
アウェーの清水は、リーグ開幕前の鹿児島キャンプでのゲーム形式の練習で見たスタイルが、この試合でも威力を発揮した。推進力のあるカルリーニョス・ジュニオが左サイドから突破を図り、中央の乾貴士が攻撃全体のタクトを揮う。左サイドに比べ右からの崩しが少ないと見ると乾が幅広い範囲でプレーし、全体のバランスを取りながら千葉ゴールを目指した。
対するホームの千葉はメンデスら高い集中力を持った守備陣が、清水が前線の選手へと供給するパスコースを素早く予測し、その受け手をマークしてボールを奪取すると、一気に前線へとボールを運ぶサッカーを展開する。千葉は清水の攻撃に比べてゴールへのチャンスは少なかったが、ボールを奪ってからの動きがよく訓練されていて、ショートとロングのパスを織り交ぜたスピードのあるサッカーを武器に得点を狙う。
スタイルに違いはあるものの、両チームとも戦い方に明確な意図をもっており、それが実践されると試合の流れはスムーズになる。長所を出し合うことによって試合は噛み合い、ゴールを予感されせる攻防は見応えがあった。
試合は後半に入ると千葉の守備力がより目立つようになった。そこからボール保持率も上がっていき、一気に前線へと向かうだけでなく、局面をグループで崩していくプレーも増えていく。ホームチームの意地として、試合の主導権を簡単に渡し続けることはしなかった。
しかし、攻撃がペースダウンした清水にあって、ゴールを目指す姿勢を強く見せたのが背番号10のブラジル人だった。後方の選手がボールの出しどころに逡巡していると、カルリーニョス・ジュニオはジェスチャーで右でも左でもいいからボールを前に出そうと味方を促す。この強気な姿勢が1-1で迎えた後半終盤の乾と松崎快のゴールを生み出した。
試合は3-1で清水の勝利に終わり、勝敗によって両チームの明暗は別れた。だが、敗れはしたものの千葉サポーターにとっては、これからシーズンを戦ううえで昨年から継続されているチームのスタイルを改めて確認できたと思う。
明確な方向性が示された90分間は、両サポーターにとって内容的に納得のいく試合だったのではないだろうか。
徳原隆元
とくはら・たかもと/1970年東京生まれ。22歳の時からブラジルサッカーを取材。現在も日本国内、海外で“サッカーのある場面”を撮影している。好きな選手はミッシェル・プラティニとパウロ・ロベルト・ファルカン。1980年代の単純にサッカーの上手い選手が当たり前のようにピッチで輝けた時代のサッカーが今も好き。日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員。