なぜ長友佑都はA代表復帰できたのか 日本代表OBが語る37歳で一線級&圧巻の経験値の凄み【見解】
【専門家の目|栗原勇蔵】今回の代表復帰はプレー以上に存在感に期待
森保一監督率いる日本代表は、北中米ワールドカップ(W杯)アジア2次予選で3月21日(ホーム/国立競技場)と26日(アウェー/金日成競技場)に北朝鮮と2連戦を行う。3月シリーズのトピックの1つは、DF長友佑都(FC東京)の電撃復帰だろう。カタールW杯以来、1年3か月ぶりとなるA代表の舞台に戻ってきた37歳を、日本代表OB栗原勇蔵氏も称賛している。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部)
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長友はイタリア(チェゼーナ/インテル)、トルコ(ガラタサライ)、フランス(マルセイユ)と海外でプレーし、W杯も2010年の南アフリカ大会から4大会連続で出場してきた、言わずと知れた百戦錬磨のサイドバックだ。
大ベテランの域に入っても、長友本人は2026年の北中米W杯出場の目標を掲げていたが、カタールW杯を終え、2023年にスタートした森保ジャパン第2次政権では昭和生まれがいなくなり、世代交代が一気に進んだ。「ベテランを呼ばない」と言ったわけではないが、森保監督は「積み上げ」を強調し、DF吉田麻也(ロサンゼルス・ギャラクシー)や長友ら第1政権を支えたベテランは招集されてこなかった。
そのなかで、今年カタールで開催されたアジアカップで準々決勝敗退となり、経験豊富なムードメーカーの長友に白羽の矢が立った。今季はリーグ戦開幕4試合連続でスタメン出場、3月16日のJ1リーグ第4節アビスパ福岡戦(3-1)では自身14年ぶりとなるJ1ゴールもマークしている。
18年間横浜F・マリノス一筋でプレーし、36歳で現役を引退した日本代表OB栗原氏は、「長友は僕と歳が3つしか変わらず、(前回北朝鮮との対戦もあった)2011年のW杯アジア予選に出ていた。まだトップでやっていて、13年後に代表復帰は凄い」と感想を語る。
「未知数の北朝鮮とのアウェーゲームがあるなかで、長友の存在はすごく頼もしい。いいタイミングで、ベテランの彼を呼んだと思います。パフォーマンスだけで言えば、長友よりも上の選手はいるかもしれない。プレーはもちろんですけど、存在感への期待のほうが大きい印象です。(第2次政権でムードメーカー役を担ってきた)菅原(由勢/AZアルクマール)もいい選手ですけど、アジアカップのパフォーマンスは決して良かったとは言えない。アジアカップでのチームはバタバタしている感じは否めなかったので、相手が北朝鮮ということでなおさら落ち着かせたい気持ちはあるでしょう。ミスしても『いいんだ、お前は若いんだから思いっきりやれば』と仲間を鼓舞したり、ベテランがいるとなんとかなると思わせてくれる存在。長友に関しては、選手の意見も大事なので、選手の中に相談できる存在を置いてみたいのかもしれません」
合宿初日からチームを盛り上げている長友が、3月シリーズでどのように自分の存在価値を示すのか、見ものだ。
(FOOTBALL ZONE編集部)
栗原勇蔵
くりはら・ゆうぞう/1983年生まれ、神奈川県出身。横浜F・マリノスの下部組織で育ち、2002年にトップ昇格。元日本代表DF松田直樹、同DF中澤佑二の下でセンターバックとしての能力を磨くと、プロ5年目の06年から出場機会を増やし最終ラインに欠かせない選手へと成長した。日本代表としても活躍し、20試合3得点を記録。横浜FM一筋で18シーズンを過ごし、19年限りで現役を引退した。現在は横浜FMの「クラブシップ・キャプテン」として活動している。