頭脳プレーも…久保建英は「問題を抱えていた」 スペイン人記者が擁護、“日本代表戦後”に期待【現地発コラム】
フィジカル面の問題を抱えていた久保、怪我明けもカディス戦に右ウイングで先発出場
久保建英は怪我明けとなったラ・リーガ第29節カディス戦で公式戦2試合ぶりに先発復帰するも、再び厳しいマークに遭い、精彩を欠いた。
レアル・ソシエダはここ1か月のうちに、国王杯準決勝でマジョルカに、UEFAチャンピオンズリーグ(CL)ラウンド16でパリ・サンジェルマンにそれぞれ敗れ、残るはラ・リーガのみとなった。
前節グラナダ戦、久保はアジアカップから続く過密日程の無理が祟り、ハムストリングと背中に違和感があったことからベンチ入りするも出番はなし。そんななか、ソシエダは降格圏のチーム相手に逆転勝利を収め(3-2)、公式戦5試合ぶりの勝ち星を挙げ、ラ・リーガで6位に浮上した。
対するカディスは久保が昨年末の対戦で汚いファウルを受けた因縁の相手。1月下旬に成績不振によりセルヒオ・ゴンサレス監督を解任し、新たにマウリシオ・ペジェグリーノを招聘した。
これにより守備的サッカーからパスサッカーへと変貌を遂げており、新監督指揮下でのソシエダ戦前までラ・リーガ7試合の成績は1勝4分2敗。前節アトレティコ・マドリード戦で2-0と勝利して実に24節ぶりに勝ち星を挙げ、3試合連続無敗をキープ。まだ降格圏内の18位に沈んではいるものの、勢いに乗り始めた状態だった。
怪我明けで苦戦した久保、精彩を欠くなかで見せたインテリジェンスなプレー
久保はフィジカル面の問題を抱えていたことで、カディス戦に向けた練習に半分しか参加できなかった。怪我の具合が懸念されたが、公式戦2試合ぶりに定位置の4-3-3の右ウイングで先発出場した。しかし、ハビ・フェルナンデスとロベルト・ナバーロの徹底マークに遭った久保は、怪我明けという理由はあったものの、得意のドリブル突破は成功せず、精彩を欠いた。
苦しみが続くなか、久保によるインテリジェンスなプレーが得点につながる瞬間が訪れる。前半28分、相手が守備を整える前に久保が素早くコーナーキック(CK)をニアサイドに送ると、それに反応したミケル・オヤルサバルがヒールで流し、最後はミケル・メリーノがゴールを決め、先制点を奪うことに成功した。
久保はその後も精度の高いCKから決定機を演出するも、ロビン・ル・ノルマンやマルティン・スビメンディのヘディングシュートは枠を捉えられない。流れのなかで目立つ活躍ができないまま、後半21分にピッチを去った。
その直後、ブライス・メンデスのアシストからアルセン・ザハリャンが勝利を決定づけるゴールを決めてソシエダは2-0で勝利し、2連勝を達成。ホームでは昨年11月以来、公式戦9試合ぶりに勝ち星を挙げた。この結果、ラ・リーガ29試合12勝10分7敗の勝ち点46という成績で、6位の座をキープしている。
現地メディアは全体的に低評価、番記者が指摘「ゴールにつながるプレーもした。でも…」
チームは危なげない試合運びで勝利を収めたものの、この日の久保に対する現地メディアの評価は全体的に低いものとなった。
クラブの地元紙「エル・ディアリオ・バスコ」は、「ベストの状態からはほど遠く、コンディションが万全でないことが目立った。相手を全く突破できず、何度か試みたサイドチェンジも雑だった。しかし、ニアポストでオヤルサバルが1人でいたのを見逃さず、1-0のゴールにつながるCKを素早く蹴ったのは非常にクレバーだった」と寸評し、2点(最高5点)と手厳しい評価をつけた。
もう1つの地元紙「ノティシアス・デ・ギプスコア」は、「今夜は彼の夜とはならなかった。ほぼ何も上手くいかなかったが、先制点のCKを蹴った」と評し、5点(最高10点)。全国紙「マルカ」紙、「AS」紙はともに1点(最高3点)とした。
スペインのラジオ局「カデナ・コペ」でこの試合を実況した、ソシエダの番記者を務めるマウリシオ・イディアケス氏に、この日の久保のパフォーマンスを振り返ってもらった。
「今日は彼のベストゲームとはならなかったね。それでも前半は良かったと思う。いくつかいいプレーを見せていたし、ゴールにつながるプレーもした。でも後半に入ってからはもう少しフィジカルが必要だった。パフォーマンスが大幅に落ちていたけど、彼はハムストリングと背中に問題を抱えていたからね。今週は実質的に練習できていなかったし……」
「でもこの後、4月14日まで2試合しかないから(※4月6日に国王杯決勝が開催されるため、その週末のラ・リーガはなし)、調子は上がってくるはずだ。代表戦から彼が良いコンディションで戻ってくることを願っている」
ソシエダの勝因は? 「明らかにカディスのミス。注意力が足りていなかった」
一方、ソシエダが快勝した要因について、イディアケス氏は次のように分析している。
「前半はゴールするまで互角だった。久保のCKからオヤルサバルのヒールパス、ミケル・メリーノのゴールと上手くつながったが、あれはラ・レアルのプレーの精度が高かったというより、明らかにカディスのミスだった。あの時、彼らは注意力が足りていなかった」
「イマノルが昨日、“我々はとても疲れている”と言っていたが、そんな状態でも後半はラ・レアルのほうがはるかに優れていた。相手のシュートはロベル・ナバーロがペナルティエリア外から放った1本だけだった。今日の勝利は妥当だった」
ソシエダが2季連続でCL出場権を獲得するためには、リーグ戦で4位以内に食い込む必要があるが、残り9節で非常に厳しい状況のため、現実的にUEFAヨーロッパリーグ(EL)への参加を目指す戦いを続けることになる。
マウリシオ・イディアケス記者が話すように、今後過密日程から解放されるため、久保が調子を取り戻し、ゴールを量産した前半戦のようなパフォーマンスを再び発揮できることを期待したい。
高橋智行
たかはし・ともゆき/茨城県出身。大学卒業後、映像関連の仕事を経て2006年にスペインへ渡り、サッカーに関する記事執筆や翻訳、スポーツ紙通信員など、スペインリーグを中心としたメディアの仕事に携わっている。