J1リーグ“東京勢”が「危険水域」の可能性 開幕3戦で早くも明暗…勝ち組&負け組は?【コラム】

今季3節を終えたJ1リーグを考察(※写真はイメージです)【写真:徳原隆元】
今季3節を終えたJ1リーグを考察(※写真はイメージです)【写真:徳原隆元】

J1開幕3試合を終え、20チームの明暗が早くも鮮明に

 2月23日に開幕した今季のJ1リーグは、3試合を消化したばかりだが、20チームの明暗が早くもはっきりと分かれている。

 好スタートを切ったのはサンフレッチェ広島だ。開幕戦で優勝候補に挙げられていた浦和レッズを2-0で撃破すると、続くFC東京戦は勝ち切れなかったものの、第3節のサガン鳥栖戦では4-0と快勝。2勝1分と無敗を維持し、7得点1失点という数字も圧倒的だ。

 2年連続3位の成績を残した広島にとって足りなかったものは、多くのシュートを放ちながらもとどめを刺せなかった決定力に尽きる。それを補うために湘南ベルマーレから獲得した大橋祐紀は開幕から2戦連発の3ゴールをマーク。期待に応える活躍で、チームに活力をもたらしている。ほかにも大迫敬介をはじめ、満田誠、川村拓夢、東俊希ら経験を積みながらも伸びしろを残す20代半ばのタレントが揃っており、チームとして成長過程にあるのも大きい。

 盤石の3バックに怪我人が出た際の選手層に不安を残しているものの、3年目を迎えたミヒャエル・スキッベ監督の下で躍動する広島が、このまま今季のリーグ戦の主役となったとしても不思議はないだろう。

 良い意味で予想を裏切っているのは柏レイソルだ。下馬評は決して高くなかったものの、第2節で王者ヴィッセル神戸を撃破すると、第3節のジュビロ磐田戦でも勝利を収め、2勝1分と好スタートを切った。

 際立つのは堅い守りだ。神戸を零封したのをはじめ、3試合でわずか1失点と安定した守備を備える。一方で得点力には課題を残すが、今季はまだゴールのない細谷真大に結果が生まれてくるようだと、勢いはさらに加速していくかもしれない。

 昇格チームのFC町田ゼルビアの躍進は、サプライズとは言えないかもしれない。積極補強で十分な陣容を手にし、黒田剛監督の戦術も徹底されている。平河悠という期待のタレントも台頭してきており、チームにはポジティブな要素があふれている。

 柏と同様に得点力に物足りなさを残すが、強度やトランジションの速さなど、調子に左右されない要素がベースとして備わっているだけに、今後も大きく崩れることはないだろう。

名古屋は怪我人、補強策不発で泥沼3連敗に

 一方で苦しいスタートとなったのは名古屋グランパスだ。開幕3連敗と結果を出せず、しかもそのすべてが完封負け。今季は中谷進之介をはじめ、堅守を築いた守備陣の主軸が多く抜けた一方で、アビスパ福岡から山岸祐也を獲得したのをはじめ、攻撃的なタレントを多く迎え入れている。

 そこからは堅守速攻スタイルからの脱却を目指す意図が汲み取れたものの、蓋を開けてみれば、攻守両面で良いところがない。得点源のキャスパー・ユンカーをはじめ攻撃陣に怪我人が増えているのが誤算とはいえ、ここまで補強策が成果として表れていないのは痛恨だろう。早急に手を打たないようだと、危機的状況に陥るかもしれない。

 北海道コンサドーレ札幌、東京ヴェルディ、FC東京の3チームもここまで勝利がない。

 札幌も名古屋と同様に出入りの激しいオフを経て、チームの骨格が定まっていない印象だ。7年目を迎えたミハイロ・ペトロヴィッチ監督のスタイルが浸透しているとはいえ、田中駿汰ら主戦級が抜けたダメージは甚大だ。4年ぶりに復帰した鈴木武蔵が救世主となれるか。

 16年ぶりにJ1を戦う東京Vは、いずれも善戦しながら終了間際の失点で勝点を取りこぼしている。山田楓喜、木村勇大ら活きの良いタレントはいるものの、経験不足からの勝負弱さは否めない。1つの勝利が好転のきっかけとなる可能性もあるが、逆に結果が出ないようだと、このままずるずると引き下がってしまう恐れもあるだろう。

 FC東京は新戦力の荒木遼太郎の奮闘虚しく、苦戦が続いている。積極補強を敢行するも、荒木以外の新戦力は鳴かず飛ばずで、指揮官が求める攻撃スタイルも実現できていない。頼みのディエゴ・オリヴェイラもここまでゴールを奪えていない状況では、なかなか希望を見出せないだろう。概ねメンバーが固定されているなかで、大胆なテコ入れが必要かもしれない。

 ちなみに昨季、初優勝を成し遂げた神戸は開幕3連勝とスタートダッシュに成功し、2位の横浜F・マリノスも2勝1分だった。3位の広島(2分1敗)、4位の浦和(1勝2敗)は出遅れたものの、5位の鹿島アントラーズ、6位の名古屋、7位の福岡も開幕3試合で2勝を挙げている。つまり昨季の上位7チームのうち5チームが、開幕3試合で勝点6以上を手にしていたことになる。

 一方、最下位で降格した横浜FCも含め、17位の柏、16位のガンバ大阪はいずれも開幕3試合で勝利を挙げることができなかった。

 たかが3試合、されど3試合。スタートダッシュの成否がシーズンの成績につながることを考えれば、ここまで勝利がない4チームは、実はすでに危険水域に足を踏み入れているのかもしれない。

(原山裕平 / Yuhei Harayama)

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原山裕平

はらやま・ゆうへい/1976年生まれ、静岡県出身。編集プロダクションを経て、2002年から『週刊サッカーダイジェスト』編集部に所属し、セレッソ大阪、浦和レッズ、サンフレッチェ広島、日本代表などを担当。2015年よりフリーランスに転身。

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