アウェーの地・北朝鮮は「宇宙に行く」感覚で 13年前とは違う森保J“Z世代”を阻む障害【コラム】

“Z世代”の森保ジャパンはどのような精神で臨むべきか

 この2試合から教訓にすべきなのは、やはり周囲の雑音や異様な環境に惑わされないこと。その1点に尽きる。2011年に平壌で戦った面々は昭和生まれが大半で、ピッチが整っていなかったり、ホテルで水が出なかったり、ネットが通じなかったりしても、幼少期からの経験値を駆使してさまざまな対応策を講じることができた。

 だが、今の森保ジャパンは平成生まれ中心で、Z世代が大半を占める。携帯を持たずに行動したことはほぼないため、「ネットがない世界」というだけで戸惑いを覚えるだろうし、物事がスムーズに進まないだけでイライラするはず。ただ、北朝鮮ではそれが当たり前。むしろ「宇宙に行った」くらいの感覚で「滅多に行けない場所で楽しんでやる」といった心構えが必要だ。

 どんなことが起きても平常心を持ち続けられなければ、平壌での試合に勝ち切ることはできない。いかにして選手たちをそういう状態にさせるかというのが、森保監督にとっての最大の課題だ。

 アジアカップでは正直言って、マネジメントに失敗したと言わざるを得ない指揮官だが、今回は絶対に許されない。伊東純也や三笘薫、中山雄太、冨安健洋といった中核を担うメンバー不在が有力視されるなか、どのように敵地でタフな集団を作り上げるのか。指揮官の手腕が改めて問われる一戦になると言っていい。

 今回のアウェー・北朝鮮戦で敗れるようなことがあると、2次予選突破に暗雲が立ち込めることもないとは言えない。6月シリーズで9月以降の最終予選に向けた新たなトライをする時間的余裕もなくなるため、日本にとってマイナスにほかならない。「史上最強」の呼び声高いチームなのだから、それ相応の実力を改めて示さなければならない。予想外の出来事が数多く起きるであろう異国での一戦で、日本の地力を示し、相手を圧倒してほしいものである。

(元川悦子 / Etsuko Motokawa)

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元川悦子

もとかわ・えつこ/1967年、長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに転身。サッカーの取材を始める。日本代表は97年から本格的に追い始め、練習は非公開でも通って選手のコメントを取り、アウェー戦もほぼ現地取材。ワールドカップは94年アメリカ大会から8回連続で現地へ赴いた。近年はほかのスポーツや経済界などで活躍する人物のドキュメンタリー取材も手掛ける。著書に「僕らがサッカーボーイズだった頃1~4」(カンゼン)など。

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