森保J、3月北朝鮮との“連戦”「推し先発メンバー」 過酷な平壌決戦へベテラン再招集を提言【コラム】
守護神候補の鈴木彩艶を“後押し”…ベテラン西川周作の再招集で得られるメリット
アジアカップ(カタール)のベスト8敗退から1か月。2026年北中米ワールドカップ(W杯)アジア2次予選・北朝鮮2連戦(21日=東京・国立、26日=平壌・金日成競技場)が近づいてきた。
3月14日にはメンバーが発表されるが、今回は三笘薫(ブライトン)、中山雄太(ハダースフィールド)、旗手怜央(セルティック)らが怪我で招集不可能という状況になっている。冨安健洋(アーセナル)もアジアカップ後は一度も試合に出ておらず、強行招集は難しそう。性加害報道に巻き込まれている伊東純也(スタッド・ランス)を呼び戻すのは困難だろう。森保一監督も今回はかなり人選に苦慮するのではないか。
アジアカップで露呈した「空中戦の脆さ」「蹴り込まれた時の弱さ」という部分にも修正を加えなければならない。冨安がいないのなら、ロングボールを跳ね返せる新たなDFが必要になるし、FW陣もクロスからゴールを奪える選手を呼びたいところ。北朝鮮も日本がアジアカップでイラクやイランに苦杯を喫したゲームを徹底分析し、蹴り込みスタイルを徹底してくる可能性も否定できない。森保監督はそれも踏まえながら準備が求められてくる。
もう1つのポイントはアウェーの北朝鮮戦という未知なる環境だ。2011年11月の2014年ブラジルW杯アジア2次予選の際は、空港で入国審査と荷物検査で4時間の足止め、金日成競技場での観客5万人の超アウェー、相手のラフプレーなど困難が重なり、日本は0-1で敗れている。もちろん欧州を主戦場としている今の代表選手たちは大観衆の中でプレーすることには慣れているだろうが、未知数な要素が多ければ多いほどストレスが溜まるはず。そのあたりも加味しつつ、指揮官は戦える面々をしっかりと吟味しなければならないはずだ。
そういった要素を踏まえると、今回は一時的にでもベテランを呼び戻した方がよさそうだ。特に経験不足を感じさせたGKはテコ入れが必須ではないか。もちろん21歳の鈴木彩艶(シント=トロイデン)を2年後のW杯に向けて育てたいという森保監督や代表スタッフの意向は分かるが、北朝鮮戦のような修羅場をくぐるためにも、経験豊富なGKが近くにいて、お互いに切磋琢磨できる状況の方が望ましい。
そこで浮上するのが西川周作(浦和レッズ)ではないか。13年前の北朝鮮戦で先発した37歳の守護神は敵地の環境を熟知しているし、鈴木彩艶とも強固な信頼関係で結ばれている。鈴木彩艶にしてみればメンタル的に安定した状態で戦えるはず。浦和レッズ時代の自分がどうしても乗り越えられなかった壁を間近に感じつつ、より大きな責任感を背負ってピッチに立った方が成長曲線も上がるだろう。そのくらいの大胆なアクションを森保監督には起こしてほしいものだ。
DF陣は右サイドバック(SB)に毎熊晟矢(セレッソ大阪)、左SBに伊藤洋輝(シュツットガルト)というのが基本線だが、センターバック(CB)は冨安と板倉滉(ボルシアMG)という指揮官が絶対視している2人を並べることはできない。アジアカップで絶不調だった板倉はその後、所属クラブで試合を重ねて復調途上だからまだいいが、冨安のところは町田浩樹(ロイヤル・ユニオン・サン=ジロワーズ)が有力視される。
2人とも高さがあるから、空中戦対策はある程度、計算できるが、いざという時に跳ね返せる経験豊富な人材も入れておきたいところ。そこで浮上するのが、植田直通(鹿島アントラーズ)。今季の鹿島では圧倒的な存在感を示していて、3月2日のセレッソ大阪戦では値千金にヘディング弾も決めている。タテにつけるパス出しなどは課題があるものの、ラフな試合では彼のような選手が力を発揮する。闘争心あふれるメンタリティー含めて期待大だ。
最も困難な判断が強いられる2列目…1トップの上田はゴール数が気がかり?
ボランチは遠藤航(リバプール)と守田英正(スポルティング)は確定で、アジアカップを回避した田中碧(デュッセルドルフ)も復帰するはず。彼らを逆三角形に配置するのが、攻守両面で一番落ち着く。遠藤はリバプール同様、ボールを奪って前への推進力を出す仕事が一番輝くから、アンカーに専念させた方がいい。その分、両インサイドハーフ(IH)が幅広い仕事をこなさなければいけない。守田と田中の安定感は計算できるし、連係面も問題ない。
そこに鎌田大地(ラツィオ)が加わるのが一番いいが、所属先で試合に出ていない鎌田を森保監督が呼ぶかどうかは微妙。アジアカップ参戦組の佐野海舟(鹿島)もそこまで際立っていないし、伊藤敦樹(浦和)も結果が出ていない。川村拓夢(サンフレッチェ広島)も有力候補だが、メンタル的に少し不安のある彼がいきなり北朝鮮戦のようなタフな戦いをこなすのはハードルが高い。もう1枚のボランチはやはり鎌田が無難というしかない。
最も難しい判断が伴うのがアタッカー陣。三笘と伊東の両サイドの槍が揃って不在となるからだ。これまでの序列を踏まえると、右は堂安律(フライブルク)、左は中村敬斗(スタッド・ランス)ということになるが、彼らだとスピードや推進力、打開力が足りない。槍のようなタイプは1人ほしいところ。
右に浅野拓磨(ボーフム)、左に前田大然(セルティック)を入れる案もあるが、彼らはドリブラーではなく、裏抜けタイプ。相手が強固なブロックを作ってきた場合に手詰まりになりかねない。
そうなると、右に久保建英(レアル・ソシエダ)を移動させ、真ん中に堂安、あるいは南野拓実(ASモナコ)を入れて、左には相馬勇紀(カーザ・ピア)やパリ五輪世代の斉藤光毅(スパルタ)の抜擢などを考える必要もありそうだ。誰を出すにしてもリスクはあるが、実績面を踏まえると、無難なのは右に久保、トップ下に南野、左に前田というトリオかもしれない。
そしてFWだが、現状では上田綺世(フェイエノールト)がエース候補ではあるものの、所属先での今季公式戦1点というのが気がかりだ。クロスから強引に競り勝ってゴールを奪うタイプではないだけに、上田を先発させるにしても、違う選択肢を用意しておかなければいけない。
その有力候補と位置づけられるのが小川航基(NEC)。上田と同じオランダ1部に今季から参戦し、リーグ戦8点、カップ戦4点と2ケタゴールを奪っている点は高く評価していい。日本代表も2019年のE-1選手権(釜山)を経験。香港戦でいきなりハットトリックを達成したように、勝負強さも併せ持っている。
もちろん大迫勇也(ヴィッセル神戸)も有望な人材で、今でも日本最高のFWなのは紛れもない事実。北朝鮮戦ということで、ベテランの経験値はほしいところだが、森保監督は何人も年長者を呼ぶことはないだろう。西川を呼ぶと仮定した場合、大迫の可能性は低くなる。やはり今回は小川に流れを変える役割を託したい。
いずれにしても、アジアカップからのマイナーチェンジは必須。ベテラン再招集を含め、大胆なマネージメントを森保監督には強く求めたい。
元川悦子
もとかわ・えつこ/1967年、長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに転身。サッカーの取材を始める。日本代表は97年から本格的に追い始め、練習は非公開でも通って選手のコメントを取り、アウェー戦もほぼ現地取材。ワールドカップは94年アメリカ大会から8回連続で現地へ赴いた。近年はほかのスポーツや経済界などで活躍する人物のドキュメンタリー取材も手掛ける。著書に「僕らがサッカーボーイズだった頃1~4」(カンゼン)など。