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サーの真の後継者 モウリーニョが貫く勝者の哲学
スペシャル・ワンたる由縁
明らかにコールは、決勝ゴールのヒーローとなって非難された衝撃をばねに、自らを改めた。まず相手に点を与えないというモウリーニョの勝利のメカニズムを理解し、闘将が満足する変身を遂げ、正反対ともいえる、ふたつ目のコメントを引き出したのだ。
これも勝利には天国の天使となり、敗北に地獄の鬼と変わるモウリーニョの面目躍如といえるエピソードだろう。ファーガソン監督もハーフタイムでミスした選手を徹底的に罵倒する『熱風療法』で有名だった。2人の最大の共通点は、このように勝利と敗北で真逆となって現れる感情の発露だったのではないだろうか。
勝って喜び、負けて悔やむ。それもこれだけ激しく感じて周りにも伝染させることができれば立派な才能だ。選手の掌握力もモウリーニョと、サー・アレックスの際立った強みであるが、その背景には、勝ちと負けで天と地の差となる闘将の激情があった。それがすなわち、彼らが他を寄せ付けない勝者たる由縁なのだ。
◇プロフィール
ジョゼ・モウリーニョ
1963年1月26日、ポルトガル生まれ。引退後、通訳などを経て00-01年シーズンからベンフィカの監督に就任。02年シーズンの途中からポルトを指揮し、03-04シーズンに欧州チャンピオンズリーグを制覇。その後はチェルシー、インテル、レアル・マドリードなどのビッグクラブで数々のタイトルに輝く。言動でも脚光を浴びる。昨季から再びチェルシーを率いる。
【了】
森昌利●文 text by Masatoshi Mori
ゲッティイメージズ●写真 photo by Getty Images