川崎新助っ人、磐田戦のプレー連続写真に見えた歴代タレントとは異なる特徴【コラム】
【カメラマンの目】エリソンのパワーとテクニックが光る
3月1日に行われたJ1リーグ第2節川崎フロンターレ対ジュビロ磐田は、激しい点の取り合いの末にアウェーの磐田が5-4で勝利を飾った。主役となったのは、言うまでもなく4ゴールを決める離れ業をやってのけた磐田FWのジャーメイン良だ。1トップとしての役割を得点という結果でしっかりと果たし、チームを勝利へと導く特出した活躍を見せた。
試合は磐田が川崎自慢の攻撃陣の動きを素早いマークで封じて主導権を握り、次々と得点を重ねていく展開で進んだ。それでも簡単には勝たせてもらえなかった。3-0から同点とされ、そこから試合終盤に川崎を突き放したものの再び追いつかれる一進一退の攻防が繰り広げられたなか、アディショナルタイムも経過していく最後の最後でゴールを挙げて勝利をもぎ取った。
対してスコアの推移が示すように、川崎の攻撃陣も前半30分までの一方的な劣勢の展開に手をこまねいていたわけではなく、驚異的な追い上げを見せた。
磐田DFリカルド・グラッサとマッチアップを繰り返していたエリソンが思うようにプレーできないと見ると、右サイドの家長昭博が変わってその中央のポジションに入り、相手マーカーの意識の混乱を誘う。家長はさらに左サイドにも進出。3人のFWはプレー場所を巧みに変えて突破の糸口を探っていく。そうして前半途中にはペースを取り戻すと、一気にギアを上げて磐田ゴールを攻略していった。
敗れはしたものの戦術のなかに個人の爆発力を活かした川崎の攻撃は、やはり迫力があった。主に左サイドを担当していたマルシーニョは、ボールを受けると多くの場面で自分の突破力を信じてドリブルを選択し、磐田守備陣へと果敢に挑んでいった。
レアンドロ・ダミアンが所属していた昨年などは、彼から前線のマークを怠るなというようなジェスチャーのアドバイスを受けてもいたが、今や堂々の中心選手であり、今シーズンの川崎はマルシーニョのチームと言ってもいいだろう。
川崎の攻撃は主にこのマルシーニョの突破からチャンスが作られ、ゴールへの仕上げとなるプレーを新加入のエリソンが担う。エリソンは外見からも分かるように重心が低く馬力のあるタイプで、実際に磐田の激しいマークを受けても跳ね返す体幹の強さが光った。
そして、ブラジル人らしく足元のボールテクニックでも高いレベルにあることをピッチで証明した。そのプレーを連続写真で捉える。
ゴールを背にしたエリソンはパスを受ける際に敵の接近を察知すると、身体で上原力也をブロックしながら左足の裏でボールを止める。間合いを詰める上原のチャージにも負けず、今度は右足の裏で巧みにボールをコントロールし、自身も身体を反転させてマークを交わす。さらに2人目のマーカーとして追いすがる中村駿も振り切って、味方へとパスをつなげた。この連続プレーにエリソンの特徴が凝縮されていたと言える。
エリソンは川崎のレジェンドとしてサポーターの記憶に鮮明に残るジュニーニョや、最前線のターゲットマンとして威力を発揮したL・ダミアンとも違う、パワーとテクニックの両輪でバランスが取れた好選手だ。川崎の得点源として期待され、この背番号9のブラジル人がチームの躍進に欠かすことのできない選手であることは間違いない。