川崎なぜ大量失点? 「計算外だった」選手、磐田の「狙い通りだった」戦術プラン【コラム】
川崎は大量5失点で昇格組の磐田に敗戦
川崎フロンターレは3月1日、J1リーグ第2節でジュビロ磐田と対戦。合計9ゴールが生まれる白熱の打ち合いの末、4-5と競り負けた。攻撃面では4得点で川崎の力強さを示した一方、守備面では昇格組の磐田を相手に5失点を喫する波乱の展開となった。なぜ川崎は大量失点を招く事態となったのだろうか? そこには、川崎にとって「計算外だった」選手の存在と、磐田の「狙いどおりだった」戦術プランがあった。
ホーム開幕戦を迎えた川崎だったが、前半6分、18分、29分と立て続けに失点し、開始30分で3点差をつけられる。それでも同36分にFWエリソンのゴールで反撃の狼煙を上げると、後半10分にエリソンが追加点、同15分にはFWマルシーニョが同点弾を奪う。しかし、同35分にPKを献上し失点。同40分に今度は川崎がPKを獲得し、FW山田新が決めて再び同点とするも、同アディショナルタイムに再び磐田にPKがもたらされ、これが決勝点となった。
川崎は壮絶な打ち合いで競り負けることになったが、大量失点を喫する事態となった要因はどこにあったのか。今季から主将を務めるMF脇坂泰斗は、磐田に対する“計算外”、そして磐田が徹底してきた“戦術プラン”に苦しめられたと振り返っている。
磐田について「計算外だったのは、ジャーメインの質。PKは別にしても、どれも簡単なゴールではなかった。そこに至るまでの突破力にしても想定以上だった」と、この日4ゴールのジャーメイン良が、川崎側の印象や情報を大幅に凌駕するレベルであったと吐露。なかでも、2失点目の場面はクロスからジャーメイン良に身体能力のバネを活かしたヘディングを叩き込まれる、まさに“個の力”でねじ伏せられた失点となった。
横内昭展監督も試合後の記者会見で「身体的に高い選手だったが、技術の荒さがあり、繊細さやクオリティーがついてきてほしいという部分があった」と、これまでのジャーメイン良を評価していたなかで「昨年から成長している選手の1人。昨年はJ2の舞台で戦っていたが、十分にJ1の舞台で戦えることを証明した」と、ストライカーとしての“アップグレード”を強調しており、川崎の選手たちにも驚きを与えたことは間違いない。
ポケットを狙う磐田のコンセプト
一方で、1失点目と3失点目においては、組織力で奪われた失点だった。共通していたのは“ペナルティーエリア脇のポケット”を狙われたプレーだ。1失点目は川崎の右サイドからMF山田大記に股を通されるスルーパスを左ボックスのポケットに供給され、失点の起点となったのに加え、3失点目についてもMF中村駿にまたも股を通されるスルーパスを左ボックスのポケットに供給され、ジャーメイン良の得点につながった。
脇阪はどちらの失点においても「(ポケットを狙うプレーは)準備してきていたプレーだったんだろうなと。センターバックが吊り出されることが多く、目線が変わったあとの守備で2点やられた。どこに立つのか、誰につくのかのコミュニケーションも不足していて、対応力に問題があった」と課題を口にしている。
磐田の3点目を演出した中村は「相手の股を通すのを含めて狙いどおりだった。あのエリアの受け渡しについては、斜めから入ってくる動きなど、練習で合わせていたので、事前にコミュニケーションを取れていたからこその得点だった」と振り返り、「川崎への対策というよりは、自分たちの攻撃として(ボックスのポケットを)狙っていくというのはチームの狙いでもある」と、磐田のコンセプトとして取り組んでいると語った。
磐田にとっては昇格組としてJ1に旋風を巻き起こす可能性を提示できた一方、川崎にとっても開幕から間もないタイミングで明確な課題が浮き彫りになったと考えると、長いシーズンを踏まえて収穫のあった一戦と言えるはずだ。