フットサル全日本選手権4強決定 V経験クラブ名古屋、浦安、町田、立川が準決勝へ
2大会ぶりの優勝を目指す立川は最終試合にPK戦の末勝利、疲労の蓄積が懸案材料
第29回JFA全日本フットサル選手権は3月1日に準々決勝の4試合を駒沢オリンピック公園総合運動場屋内球戯場で行った。2023-24シーズンのFリーグで7連覇16度目の優勝を果たした名古屋オーシャンズや2位に躍進したペスカドーラ町田らが準決勝に勝ち上がっている。
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ベスト8進出クラブは、すべてFリーグ・ディビジョン1のクラブとなった今回の全日本フットサル選手権。第1試合では名古屋オーシャンズが湘南ベルマーレと対戦。昨年の準決勝ではPK戦の末に湘南が名古屋を破り、決勝進出を果たしていたが、今回は名古屋がリベンジを果たす。前半にFP堀内迪弥のゴールで先制を許したが、後半に5ゴールを奪って5-1で勝利。大会前にはFP八木聖人が左膝前十字靭帯損傷の大怪我を負い戦列を離れており、ゴールを決めたFP金澤空らはゴール後に八木のユニフォームを掲げて喜んだ。
第2試合ではシーズン途中から調子を上げたバサジィ大分とバルドラール浦安が対戦した。オーシャンカップでは決勝に進出している浦安は、常に先行する試合展開のなかで大分に3-2で競り勝った。この試合では大分GK上原拓也と浦安GKピレス・イゴールと、両GKの活躍が光ったが、今季限りでの引退を表明しているFP大島旺洋のゴールが決勝点となり、自身のキャリアをタイトル獲得とともに終わらせる可能性を残した。
ペスカドーラ町田とY.S.C.C.横浜の第3試合は、前半と後半で全く違うゲームとなる。前半に主導権を握ったのは横浜だったが、ゴールはFP菅原健太の1点にとどまった。2023-24シーズンのFリーグMVPであるブラジル人GKジオバンニを温存する町田だが、GK土岡優晟が大活躍。守護神の奮闘に応え、前半終了目前に日本代表FP山中翔斗がミドルシュートを決めて同点に追いつくと、後半は持ち味のプレッシングで横浜を苦しめる。FP礒貝飛那大とFP野村啓介が得点を重ね、横浜を3-1で破って決勝に勝ち上がっている。
この日の最終試合となった立川アスレティックFCとシュライカー大阪の一戦は、PK戦までもつれる大接戦となった。FP中村充の針の穴を通すようなスルーパスをファー詰めでFP湯浅拓斗が決めて立川が先制する。しかし、大阪もFP磯村直樹が7秒の間に2ゴールを挙げて一気に逆転した。2失点目はキックオフ直後のビルドアップでFP菅谷知寿のパスミスから奪われたものであり、立川の流れが悪くなりかねなかったが「シーズン中にカズ(菅谷)には何度も助けられてきた。気落ちする選手はいなかったと思う」(FP酒井遼太郎)という言葉通り、直後にキャプテンのFP上村充哉が同点ゴールを決めて2-2とする。
第2ピリオド以降は、両チームともにチャンスを作ったが得点は動かずに試合はPK戦に突入した。PK戦では、今季限りでの退団を発表したFP野村悠翔、前半に2ゴールを挙げた大阪のFP磯村直樹が決めきれずに大阪が敗退に。勝っていれば、この試合のヒーローとなっていた磯村は敗戦が決まると涙を流し、「自分がゴールを決めてチームが勝つということが、Fリーグに入ってからはFリーグ選抜時代も含めて一度もない。今日こそはという思いだった一方で、PK戦の時は『こういう時は外すんだよな』という思いが消せなかった。こういうメンタルで蹴ってはダメだった。監督に指名された際に辞退するべきだった」と、肩を落とした。
準決勝の見どころは? 名古屋はフエンテス監督が未獲得の選手権タイトルを獲れるか
この結果、準決勝の組み合わせは名古屋オーシャンズ対バルドラール浦安、ペスカドーラ町田対立川アスレティックFCとなっている。
優勝の大本命は、やはり名古屋だろう。八木やFP宮川泰生(選手権に帯同しているものの左脛骨疲労骨折)が負傷しているものの、全選手のクオリティーの平均値は他クラブを圧倒している。また、この試合の途中から出場時間を延ばしたFPギレルマオも、最前線で絶大な存在感を発揮して日本のフットサルに順応している様子を見せた。気がかりなのは、先週の試合に続き、日本代表FP清水和也が太ももを負傷したこと。この日の後半はベンチで治療を続け、試合後には松葉杖をついて会場を後にしていた。この後、4月にはW杯予選を兼ねたAFCフットサル・アジアカップも控えているだけに、試合当日の状態次第では欠場することもあるだろう。
その名古屋と準決勝で対戦する浦安は、オーシャンカップの決勝で敗れた相手にリベンジするチャンスだ。同時に、この1年間で、どれだけのものが積み上げられたかを図る機会にもなる。GKピレス・イゴールがゴールを預かる守備には計算ができるが、準々決勝で気になったのは決定力不足。オーシャンカップ決勝ではゴールを決めたFP空涼介も、GKとの1対1などのチャンスを生かしきれず、試合を難しくした要因となった。FP本石猛裕やFP柴山圭吾といったピヴォもボールを収めることはできたが、フィニッシュを決めきれなかった。チームを勢いづかせることのできる決めるべき人が決められるかが、決勝のカギとなりそうだ。
準々決勝の町田は、スロースターターだった。この大会は、かなりハードなスケジュールで組まれており、試合間の時間が短い。そのため選手がアップできる時間も短めになっており、普段どおりの準備ができないことが影響しているチームは少なくない。初日を終えてどんな準備をするのか。準決勝第1試合が終わってから、第2試合のアップに出てきてから、どんな準備をしているかも注目だ。今シーズンのリーグ戦で、長い間、首位に立ちながらも、最終節にタイトルを逃した悔しさはチームのなかにくすぶり続けている。シーズンをタイトル獲得で締めくくりたいという思いは、チームのなかで高まっており、まずは決勝への切符を掴めるかが試される。
町田との東京ダービーに挑むことになる立川は、なによりも疲労の蓄積が不安材料だ。前日の準々決勝では、大阪と死闘を繰り広げた。カウンターの打ち合いになるような場面も少なくなかった試合で、多くの選手が疲労を蓄積させ、FP中村充やFP上村充哉、ベテランの元日本代表FP皆本晃らが足をつらせる場面もあった。彼らが駒沢屋内競技場を後にしたのは、21時近く。準決勝のキックオフまでは、17時間というハードスケジュールだ。この試合を最後に退団する選手は多く、これまでに他クラブからオファーを受けても、立川の選手やチームへの愛着から契約を延長してきた比嘉リカルド監督の最後のシーズンをタイトルで飾りたいという思いも強い。運動量が不可欠なスタイルで戦う立川だが、今大会を制するためには、どれだけ消耗を抑えつつ、勝負所でパワーを出して得点を奪えるかがカギになりそうだ。
(Futsal X・河合拓 / Taku Kawai)
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