高卒→渡欧で1年…異例のスピード“昇格”福田師王を直撃 次世代FWが見る現在地【現地発コラム】

今季ブンデスデビューを果たした福田師王【写真:岩本太成】
今季ブンデスデビューを果たした福田師王【写真:岩本太成】

19歳の福田師王はすでにブンデスデビューを飾っている

 ワクワクが止まらない。

 急に何を言い出したかと思われそうだが、ドイツ1部ボルシアMGの福田師王のことである。昨年、神村学園高校からボルシアMGのセカンドチームに加わった福田は、今年の1月にトップチームへの昇格が発表された。現在、ブンデスリーガにおいてFWとしてプレーしている日本人選手はボーフムの浅野拓磨のみ。それほど貴重な枠に19歳の若武者が名前を並べることになった。

 トップに到達するスピードも相当に速かった。1月27日、ブンデスリーガ第19節のレバークーゼン戦で途中出場からブンデスリーガデビューを飾ったが、「ドイツに着いたのが去年のその辺だったんです。そこから1年経って、トップのレバークーゼン戦でデビューできた」という話を考えれば、丸一年でトップの世界にたどり着いたことになる。高校卒業後にJリーグを経由せずにそのまま欧州に渡るパターンは最近増えてきているが、ここまでのスピードでトップに上がったのは異例。加えて、それが5大リーグのチームと考えれば異例も異例である。

 ただ、本人は「もっと早くここまで来たかった」と現状に満足するような姿勢を示さない。それはセカンドチーム在籍時、トップの練習に参加する度に“ここでもやっていける”という実感があったからだ。

「トップの練習試合とかに行かせてもらった時に、自分の得点力が通用するところがありました。その時点でいけるなというふうに思っていました」

 トップで常に練習するようになっても、その自信は揺るがない。むしろ練習を重ねて「シュートを両足蹴れるところ、あとは背後に抜ける動き出し。そこは自信を持っていますし、このチームでもそこは一番じゃないかなと思います」と自身の特長に確信を持ち始めている。

 一方で、改めてレベルの高さを痛感させられた出来事もある。初出場から1週間後に行われたブンデスリーガ第20節のバイエルン戦だ。急遽メンバー入りを告げられてアウェーの地に向かうことになると、再び出番がやってきた。

「最初からここで点を決めてチームを勝たせて、ちょっとスタジアムを黙らせてやろうと考えていました」

 ただ、後半40分からの短い出場時間で何も残すことができなかった。ボールを奪いに行ってもうまくかわされ、球際のところでは相手に跳ね返された。「まず体つき(に差を感じました)。目の前でハリー・ケインや(マタイス・)デ・リフト、(マヌエル・)ノイアーを見てびっくりしましたね。とんでもない奴らがいるなと思った」。世界のトップ・トゥ・トップでプレーする選手たちと対峙し、自分に足りないところを明確に突きつけられた。

板倉滉とボルシアMGで研鑽を積む【写真:岩本太成】
板倉滉とボルシアMGで研鑽を積む【写真:岩本太成】

 それでも、ここで“楽しくなってしまう”のが福田師王である。

「一緒のピッチでプレーしたことでモチベーションになりましたね。もっとフィジカル面のところで頑張ろうと思えた。本当にポジティブに思えていますし、ここからが楽しみでしかないです」

 バイエルン戦の後、リーグ戦のダルムシュタット戦、DfBポカールのザールブリュッケン戦(スターティングメンバー発表後、試合が開催中止)はどちらもベンチ外だった。そこにはもちろん悔しさを感じつつも、「やはり短い時間でも結果を残したらベンチに入っていたと思っています。チャンスをものにすることができなかったので、また頑張るだけです」と前を向いた。すると、ライプツィヒ戦ではベンチ入りして途中出場。日々のトレーニングを楽しみ、成長を遂げようと努力を続けているからこそチャンスをものにすることができている。

 あとはやはり“結果”が待たれる。「今はどの試合もプレーできることにワクワクしているんです」と語った福田は、A代表でプレーするストライカーとの戦いを楽しみにしながら、ベンチ入りを目指してトレーニングに励んでいる。

(林 遼平 / Ryohei Hayashi)

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林 遼平

はやし・りょうへい/1987年、埼玉県生まれ。東日本大震災を機に「あとで後悔するならやりたいことはやっておこう」と、憧れだったロンドンへ語学留学。2012年のロンドン五輪を現地で観戦したことで、よりスポーツの奥深さにハマることになった。帰国後、サッカー専門新聞『EL GOLAZO』の川崎フロンターレ、湘南ベルマーレ、東京ヴェルディ担当を歴任。現在はフリーランスとして『Number Web』や『GOAL』などに寄稿している。

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