「1試合でもダメだと外される」 FC東京「最新序列」考察…抜擢&最激戦区は?【コラム】

FC東京を率いるピーター・クラモフスキー【写真:徳原隆元】
FC東京を率いるピーター・クラモフスキー【写真:徳原隆元】

センターバックは世代交代の波が迫る

 FC東京は昨季途中からチームを率いるピーター・クラモフスキー監督が続投し、新たなシーズンを迎えた。昨季リーグ11位からの巻き返しを図るために、プレシーズン中に大きくチームを作り変えてきた。まだまだチームは途上段階で、ここから定位置争いも一層激しさを増していくはずだ。

 指揮官も「毎試合、メンバーが変わるかもしれない。誰が出ても我々のサッカーができるようにしていきたい」と話している。始動から誰も定位置を約束されておらず、実際に競争はどのポジションにもある。そのなかで、5つのポジション争いに的を絞って考察していきたい。

■GK

 野澤大志ブランドンは昨季途中にヤクブ・スウォビィクからポジションを奪い、日本代表にも初選出されるなど飛躍の1年を過ごした。だが、シュートストップ技術に秀でた、今夏のパリ五輪でも活躍が期待される21歳も安泰というわけではない。今季は昨季J2の長崎でフルタイム出場を果たした、波多野豪が武者修行を終えてスカッド入りを果たした。GKスキル全般が向上し、なかでもコーチングは飛躍的な発展を遂げている。開幕戦では波多野が最後尾を任されたが、今季は2人がハイレベルな競争を展開していくはずだ。

 さらに、児玉剛も足元の技術では一日の長があり、よりビルドアップに特化するのならベテランの起用があってもおかしくない。勝ち続けていればGKを変えないのがセオリーだ。そう言う意味で、誰が一番“勝てるGK”なのかが重要になってくる。勝負運を持った選手が青赤のゴールマウスを守ることになるだろう。

■センターバック(CB)

 世代交代の波は確実に迫ってきている。その象徴的な出来事としてプロ2年目の土肥幹太がチーム最古参の森重真人をベンチに追いやり、開幕スタメンに抜擢された。足元の技術に優れ、テンポのいい配給が魅力の19歳はクラブのレジェンドであるGK土肥洋一氏を父に持ち、親譲りの度胸と勝負勘も併せ持つ。ただし、森重の実力が色褪せたわけではない。エレガントかつ経験に裏打ちされた守備の技術では、まだまだ頭1つ抜けた存在だ。ハイラインを保つ戦術的な背景から身体能力に優れたエンリケ・トレビヴィザンがファーストチョイスになっているが、木本恭生も安定感抜群のプレーを練習では披露している。今季明治大から新加入した岡哲平もキックの精度では引けを取っていない。

 開幕以降も、最も入れ替わりが激しいポジションとなるだろう。対戦相手、試合時間や状況に応じた組み合わせは何通りも存在するはずだ。そこで、重要になるのは各選手のコンディション維持と精神的なケアだ。どんなに優れた選手が揃っていても、いつでも試合に出場できる状態をキープできていなければ戦力とはならない。そこは監督のマネジメントと、コーチングスタッフの働きが重要になってくる。

ボランチは松木&原川を中心に最激戦区

■右サイドバック(SB)

 プロ17年目の長友佑都が今季は開幕前から抜群のプレーを見せている。エースキラーとして鳴らした対人能力の高さは少しも錆びついてはいない。それに挑むのは右アキレス腱断裂の大怪我から完全復活を目指す中村帆高だ。ダイナミックなプレーと得点能力も兼備するサイドバックが復調を果たせば、2人の共存によって戦術的な価値も一気に増すはずだ。

 また、左右でプレー可能な白井康介や、アタッカーが本職の安斎颯馬もプレー可能でチョイスは多い。長友本人もこの競争を歓迎し、「1試合でもダメだと外されるぐらいの覚悟を持ってプレーしている」と心に刻んでいるという。

■ボランチ

 間違いなく、このチームで今季の最激戦区だ。原川力、松木玖生のペアで開幕戦を戦ったが、小泉慶、高宇洋、品田愛斗、寺山翼も虎視眈々と定位置奪取に燃えている。一芸に秀でた選手たちだけに、対戦相手によって組み合わせも変わってくるはずだ。

 それぞれが独自の個性を磨いていくことで、次第にかけ算的な組み合わせも見つかるかもしれない。そういう意味では小平グラウンドでの実験的な試みや、セレクトが最も重要になってくる。監督の腕が試されるところだろう。

■左ウイング

 多士済々が揃うこのポジション。開幕戦ではプロ2年目の俵積田晃太が抜てきされた。変幻自在のドリブルのキレに今季は力強さが増し、昨季以上のインパクトを残すはずだ。さらに、遠藤渓太はドリブル、コンビネーションともにハイレベルで、プレシーズン期間中は仲川輝人との連係でゴールを陥れる場面を数多く作っていた。

 この2人がいるだけでも相当強烈なのだが、昨季途中からスカッドに加わったジャジャ・シルバも左ウイングが最も得意なポジションだという。開幕戦では途中出場から日本代表DF毎熊晟矢(セレッソ大阪)をぶっちぎるドリブルも披露。このジョーカーも合わせた三段構えのロケットの中から誰を選択するのか、指揮官も頭を悩ますところだ。

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