久保建英のゴラッソ直前にファウル? “荒れ試合”でも輝く姿を元主審が絶賛「最高だった」【見解】
【専門家の目|家本政明】古巣マジョルカ戦で7ゴール目の久保や判定事象に言及
スペイン1部レアル・ソシエダで日本代表MF久保建英の躍動が止まらない。現地時間2月18日のラ・リーガ第25節マジョルカ戦(2-1)で7ゴール目を挙げた久保について、元国際審判員・プロフェッショナルレフェリーの家本政明氏が直前の判定事象も交えながら語っている。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部・金子拳也)
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久保はレアル・マドリードからさまざまなクラブへレンタルを繰り返した経験を糧に、2022年より完全移籍で加入したソシエダで才能が開花。所属初年度(2022-23シーズン)に公式戦44試合9ゴール9アシストをマークすると、迎えた今季はここまで30試合7ゴール4アシストと勢いそのままにチームを牽引する。
2月18日の古巣マジョルカ戦(アウェー)でも、左足で放った無回転に近い強烈なシュートで同点ゴールをもたらす。チームは2-1で逆転勝利を挙げた。ソシエダは、久保がゴールした15試合で14勝1分と“不敗記録”が続いており、スペイン紙「ムンド・デポルティーボ」でもこの驚きのデータが取り上げられている。
家本氏は、マジョルカ戦での久保のゴールを見て「久保選手のゴールは素晴らしかった。最高だった」と絶賛。ここまで好調を続ける日本人MFの活躍を喜んでいる。
一方久保のゴール直前、味方がボールを奪った攻撃の起点(APP/Attacking Possession Phase/アタッキング・ポゼッション・フェイズ)の場面にはファウルの疑いもあった。縦パスを受けた後ろ向きのマジョルカFWベダト・ムリキに対し、ソシエダDFイゴール・スベルディアがホールディングのような形で対応。左側よりMFミケル・メリーノもプレッシャーをかけボールを奪っている。
最後はスベルディアの右足が相手の足にかかっているようにも見え、ボール奪取のあとにムリキは倒れてファウルをアピールする光景もあった。試合ではVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)のチェックも入ったが、特に反則は認められず久保のゴールが確定している。
2人で激しくプレッシャーをかけたシーンだっただけに、マジョルカ選手側も抗議を示していたが家本氏は「VAR側に主審の判定を覆すだけの十分な証拠がなかった、もしくは綺麗にボールをつついた角度の映像があったということだと思う」と見解を示す。
「現場でノーファウルと判断したものをVAR側が映像で見ても、ホールディングをしているような要素はあるけれどそれがはっきりとした明白な間違いと言えるだけの十分なものではなかった。少し躊躇いがあるということは、はっきりとした明白にはならないということ。最終的に、主審の判定をVARがフォローした形になったのだと思う」
ゴール直前の判定に一定の理解を示した家本氏。試合はその後荒れ模様となり、両チーム合わせてイエローカードが12枚、累積でマジョルカに退場が1名出ている。難しい試合となったなかで、上手く試合を運んだのは後半アディショナルタイムに劇的勝ち越し弾を決めたソシエダだった。
「久保選手も含め、ソシエダ側は主審の判定を受け入れ、受け止めながら、フットボール集中していた。そうした点が勝利につながったのではないか」
家本氏はアウェーで勝ち点3をもぎ取ったソシエダを称賛しつつ、最後に「やはり、久保選手の得点はもう彼の調子の良さを象徴するようなゴールだったね!」と改めて絶賛の言葉を贈っていた。
家本政明
いえもと・まさあき/1973年生まれ、広島県出身。同志社大学卒業後の96年にJリーグの京都パープルサンガ(現京都)に入社し、運営業務にも携わり、1級審判員を取得。2002年からJ2、04年からJ1で主審を務め、05年から日本サッカー協会のスペシャルレフェリー(現プロフェッショナルレフェリー)となった。10年に日本人初の英国ウェンブリー・スタジアムで試合を担当。J1通算338試合、J2通算176試合、J3通算2試合、リーグカップ通算62試合を担当。主審として国際試合100試合以上、Jリーグは歴代最多の516試合を担当。21年12月4日に行われたJ1第38節の横浜FM対川崎戦で勇退し、現在サッカーの魅力向上のため幅広く活動を行っている。