J1王者・神戸「大迫封じ」にどう向き合う? 公式戦無得点は“真の姿”なのか【コラム】

川崎戦でノーゴールに終わった大迫勇也【写真:徳原隆元】
川崎戦でノーゴールに終わった大迫勇也【写真:徳原隆元】

川崎とのスーパーカップで0-1敗戦、エース大迫封じられ攻撃停滞

 Jリーグの2024シーズンがスタートする。注目点は色々あるが、やはりJ1王者となったヴィッセル神戸がリーグ連覇を目指して、どういう戦いをするかはJ1の勢力図を大きく左右するポイントである。秋には新フォーマットになるAFCチャンピオンズリーグ(ACL)が控えていることもあり、神戸は国内カップ戦を含めた過密日程にも耐えられる陣容を揃えるべく、積極的な補強を行なった。特に中盤から最終ラインにかけてはかなり厚みが増した印象だ。

 浦和レッズから神戸アカデミー出身のセンターバック岩波拓也、鹿島アントラーズから組み立て能力の高い広瀬陸斗、さらに昨年夏にアビスパ福岡で輝きを放ち、ルヴァン杯の優勝を支えた井手口陽介をセルティックから獲得するなど、ボールを動かしながら攻めるオプションにも対応できる陣容を揃えた。

 さらに川崎フロンターレから昨シーズン8得点のFW宮代大聖を獲得しており、従来の4-3-3や新シーズンに向けて取り組んでいる4-2-1-3に加えて、4-4-2もオプションになりそうだ。FW大迫勇也を中心に、縦に速い攻撃で直線的にゴールを狙い、ハイプレスでボールを奪って押し込む高強度のスタイルは変わらないが、相手の対策に応じた戦術的な幅を広げると同時に、90分をコントロールしていくための引き出しを増やそうとしているのはプレシーズンに行われた、インテル・マイアミとの国際親善試合からも見られた。

 しかし、シーズン最初のタイトルの期待が懸かった富士フイルム・スーパー杯では川崎に0-1で敗れて戴冠を逃した。しかも、相手はACLのラウンド16を前後に戦う事情で、山東泰山とのアウェーゲームから中3日で、スタメンをターンオーバーしてきての結果だった。その中で川崎は神戸のエース大迫を徹底マークしながら、セカンドボールを拾って素早く神戸陣内のスペースにボールを運ぶ戦い方で、神戸を苦しめた。

 そうした相手に対して、神戸は自陣でボールは握るものの縦に効果的なボールを付けられず、大迫を起点とした攻撃も限定され、手詰まり感が出てしまった。状況に応じてボールを握りながら攻めることも必要だが、相手の対策にもはまる形で、本来の縦に速い特長が失われてしまうと、良さが出なくなってしまう。

 JリーグのPRイベントに、神戸の代表として出席した主力センターバックの山川哲史は「相手が実際に今年ありそうなヴィッセル対策をしてきた。そういった舞台で修正するべき点がたくさん出たことはポジティブなことだと思います」と語り、開幕戦に向けて、しっかりとネジを撒き直して臨むことの重要性を唱えた。

 開幕戦の相手は昇格組のジュビロ磐田で、アウェーゲームとなる。山川は磐田について「得点力という部分で言えば、J2の中でもかなり上位だった。相手の強みというのは個人的には消していかないといけない」と山川は守備の要としての働きを強調しつつも「チームとして点を取れるようにやっていきたい」と語る。

神戸対策を講じ得るライバル、あらゆる壁を乗り越えられるか

「シーズン通して、強さを持って、相手が怖いと思うぐらいの迫力を持ってやっていかないといけない」

 山川はこう強調する。磐田が普段の攻撃的な戦い方で来るのか、スーパー杯の川崎のように、神戸の強みを消しながら、隙を突いてくるのかは不明だが、対策の要素はかなり入れてくるはず。神戸のチーム力がライバルに知れ渡っていること、さらに自動降格が3つというレギュレーションを考えても、神戸対策をベースに戦ってくるチームは多くなるだろう。

 インテル・マイアミ戦、スーパー杯と点が取れていない大迫がJリーグで決定力を取り戻すこと、その2試合を欠場したFW武藤嘉紀の早期復帰なども得点の大事なポイントにはなるが、チームとしてどう課題に向き合って行くのか。Jリーグ30年の歴史を振り返っても、連覇というのは困難なミッションであり、まして初優勝のあととなればなおさらだ。見方を変えれば、困難を乗り越えて偉業を達成すれば、常にタイトルを争っていく強豪になって行くための実績と自信を手に入れることになる。

 大型補強の浦和やリベンジを狙う横浜F・マリノス、スーパー杯で神戸が敗れた川崎、ミヒャエル・スキッベ監督が3年目を迎え、新スタジアムで気勢を上げるサンフレッチェ広島、長谷川健太監督が優勝を掲げる名古屋グランパスなど、ライバルも強力だ。しかし、まずは目の前の磐田とどう戦い、勝利を手にできるのか。注目の一戦となる。

(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)

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河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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