川崎がJ1上位争いで“主役”の予感 V候補・横浜FM、広島との戦力比較で「遜色なし」【コラム】
【カメラマンの目】昨季王者・神戸を撃破した川崎の戦いぶりにフォーカス
得点を狙う攻め手とその阻止を目指す守備陣の、相反する意思が交差するゴール前の攻防は言うまでもなく激しい。
2024年シーズンの到来を告げる富士フイルムスーパーカップは川崎フロンターレがヴィッセル神戸を1-0で下し勝利を飾った。川崎の勝利の要因は、高い集中力を発揮して神戸の攻撃をシャットアウトした守備陣の健闘にあったと思う。
ゴール裏から神戸の攻撃陣をカメラのファインダーに捉える。その姿を覆うように川崎の選手たちが次々と立ちはだかる。川崎は局地戦で勝利することにより、神戸が作り出す攻撃の旋律を乱し得点へのチャンスを作らせなかった。
その川崎が見せた高い守備力を象徴するシーンにシャッターを切る。神戸の得点源である大迫勇也が、ゴール前で川崎守備陣と激しいつばぜり合いを演じているシーンがそれだ。川崎はこの最も危険な相手のエースに仕事をさせなかったことが、勝利への道筋を作ったと言えるだろう。
昨年のリーグ覇者の神戸に加え、新シーズンの主役となることが予想される横浜F・マリノスやサンフレッチェ広島とのチーム力を比較してみると、川崎が好勝負を演じられる実力を持っていることをこの試合で実感した。
川崎は2月13日にAFCチャンピオンズリーグ(ACL)を戦っており、リーグ開幕前にさらにこのアジア王者を決める大会のホーム試合が控える。早くも多くの試合をこなす状況となっているため、多くの選手がピッチに立つチャンスを得ている。
そうしたなかで臨んだスーパーカップは、川崎が秘めたチーム力のすべてではない。その布陣は川崎のある一面と言えるだろう。しかし、戦いぶりには安定感があった。
手数をかけずにシンプルにゴールを目指してくる神戸に対して、川崎は1対1の場面を中心とした局面での争いを制し、相手にリズムを作らせない戦い方が功を奏し勝利へとつなげた。
また、安定した守備力を誇りチームとしての完成度も高い広島と比較しても、攻撃力は川崎のほうが一枚上に感じた。途中出場した攻撃陣の一角を担うマルシーニョが見せた個人技を武器に状況を打開する突破力は、昨年より鋭さが増しているように見えた。
この試合では家長昭博や新加入のエリソンが出場しなかったが、彼らが形成する前線は、横浜F・マリノスが誇るブラジル人を中心として攻撃陣にも匹敵する力を秘めているように思う。
昨シーズンのリーグ王者の神戸に対して、落ち着いた試合運びで勝利した川崎は横浜FM、広島と比較しても遜色ない充実した戦力を誇る。ライバルとなるチームも含めて、シーズンを消化していけば参加する大会の勝敗によって試合数も増えるだろうが、川崎がリーグの主役の1つになることは間違いないだろう。
徳原隆元
とくはら・たかもと/1970年東京生まれ。22歳の時からブラジルサッカーを取材。現在も日本国内、海外で“サッカーのある場面”を撮影している。好きな選手はミッシェル・プラティニとパウロ・ロベルト・ファルカン。1980年代の単純にサッカーの上手い選手が当たり前のようにピッチで輝けた時代のサッカーが今も好き。日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員。