クリンスマン監督解任は「良かった」 韓国人記者が安堵「もうあのサッカーを観なくていい」

ユルゲン・クリンスマン監督の解任が決定【写真:ロイター】
ユルゲン・クリンスマン監督の解任が決定【写真:ロイター】

難航が予想される後任探しはネック

 韓国サッカー協会(KFA)は2月16日、ユルゲン・クリンスマン韓国代表監督の解任を決定した。クリンスマン監督は2023年2月に就任。6勝3分2敗でアジアカップを迎え、アジアカップではグループリーグで1勝2分の2位、ベスト16ではサウジアラビアを1-1からのPK戦で破り、準々決勝はオーストラリアに2-1で勝利を収めたが、準決勝でヨルダンに0-2の敗戦を喫した。

 アジアカップ期間中、多くの韓国人メディアと意見交換をしたがほとんどの記者はクリンスマン監督に否定的だった。その一番大きな理由は、監督が韓国内の視察をほぼ行わず、常に海外で過ごしていたため。「監督は世界のサッカーがどう動いているのかを見ておかなければならない」というのが理由で、韓国内の視察はチャ・ドゥリコーチ1人が行っていたということだった。

 また、韓国記者たちの間で噂になっていたのは、クリンスマン監督の年俸の低さ。一説では、コーチまで含めた年俸は日本も含めた世界の水準を下回っているとされていた。そしてその金額で監督が仕事を引き受けたのは、このアジアカップで優勝することをヨーロッパ復帰への足がかりにしようとしているのではないかということだった。

 また、チーム作りにおいても報道陣からの評判は低く、「個々の能力で勝つことができたのであって、チームとなるのはまだこれから」「ゴールはファンタスティックだったが、あくまで個人技」「守備があまりにもお粗末で、セットプレーや守備の組織力について装備されたものが1つもない」と毎試合手厳しい論評が並んでいた。

 アジアカップで韓国を中心に精力的な取材を続けていた韓国のニュースエージェンシー「NEWS1」のキム・ドンヨン記者は、今回の解任決定を受けて、「とても良かったと思う。もうあの良くないサッカーを見る必要がなくなった」と安堵の様子だ。

 だが、続けて「しかし、韓国はいい監督と契約しなければならない。それはとても難しい仕事だ。それが心配だ」と、難航しそうな次期監督選びに思いを馳せていた。

 なお、現在有力視されているのは、かつて日本でもプレーしたことがあるホン・ミョンボ氏、チェ・ヨンス氏など。日韓ともに自国監督が率いることになるかもしれない。

(森雅史 / Masafumi Mori)

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森 雅史

もり・まさふみ/佐賀県出身。週刊専門誌を皮切りにサッカーを専門分野として数多くの雑誌・書籍に携わる。ロングスパンの丁寧な取材とインタビューを得意とし、取材対象も選手やチームスタッフにとどまらず幅広くカバー。2009年に本格的に独立し、11年には朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の平壌で開催された日本代表戦を取材した。「日本蹴球合同会社」の代表を務め、「みんなのごはん」「J論プレミアム」などで連載中。

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