補強に成功G大阪、問われる2年目指揮官の手腕 宇佐美の起用はどうなる…開幕の予想布陣は?【コラム】

G大阪の開幕予想布陣を考察【写真:Getty Images】
G大阪の開幕予想布陣を考察【写真:Getty Images】

広島とのPSMでは新戦力が躍動

 昨季はシーズン終盤に実に28年ぶりの7連敗を喫し、一昨年のレギュレーションであればJ1・J2入れ替え戦に回っていたはずのガンバ大阪。

 2024シーズンはダニエル・ポヤトス体制の真価が問われることになるが、サンフレッチェ広島とのプレシーズンマッチは随所に今季目指す方向性が見てとれた収穫多き一戦となった。

 待望のサッカー専用スタジアムのこけら落としだけに広島は青山敏弘や柏好文らクラブの功労者であるベテランを先発起用。一方、G大阪はレンタルバックした一森純や坂本一彩を含めて、先発に名を連ねた新顔は実に6人に上った。指揮官は決して「ベストメンバー」とは口にしなかったが、広島戦の2日前にこう話していた。

「ただのプレシーズンマッチという捉え方もできるが、あくまでも町田戦に向けての大事な一試合として戦いたい」

 明らかに開幕戦の町田戦を意識した機能性の確認だったのだ。

 昨季は目先の勝点にこだわったシーズン終盤こそ変則的な3バックも併用したポヤトス監督だったが基本布陣は一貫して4-3-3。しかし、今季は「ドブレ・ピボーテ(スペイン語で2ボランチ)」を導入し、広島戦でもフォーメーションは4-2-3-1を採用した。

 そんな布陣の変更よりも、広島戦で印象的だったのは坂本と新加入の山田康太を先発に抜擢したポヤトス監督の隠されたメッセージである。広島戦を前に指揮官はキッパリと言い切った。

「現代のサッカーは走らないと勝てない。エネルギッシュさがない選手は今シーズン使えない、というのが自分の頭の中にある」

山田によると「僕はキャンプの最後は試合に出られていなかったし、正直、一彩ともあまりプレーしていない」。しかしながら坂本と山田の献身的なプレスがチームに勢いをもたらしていたのは紛れもない事実である。黒川圭介も言う。

「康太があれだけチェイシングしてくれるのは守備陣も助かるし、DFラインも上げやすい」

 守備での貢献度は言うまでもないが前半4分の決定機も山田がセカンドボールに鋭く反応し、右サイドを駆け上がった岸本武流(彼もまた右サイドでポジティブなアピールに成功した一人である)に好パスを供給したことがきっかけだったが、確かな技術と圧巻のハードワークぶりを持つ山田は、今季のキーマンの一人になる存在であることを82分間のプレーで証明した。昨季、チームが好調だった際、山本悠樹(現川崎フロンターレ)が、やや守備の強度に難を持つイッサム・ジェバリを補う役割を見せていたが、ジェバリを起用するならば賢くハードワーク出来る山田の存在は不可欠になるだろう。

 攻守両面で好選手を獲得。選手層の厚みは近年例がない陣容となったG大阪だが、だからこそ問われるのがポヤトス監督の手腕である。

 2対1で逆転勝ちを収めた広島戦後、指揮官は勝ち試合後にしばしば口にする「パルティード・コンプレット(完璧な試合)」なる言葉を口にし、「試合の内容としてはコントロールをしっかりと出来た」と振り返ったが、広島が選手交代でギアを上げてきた後半は劣勢が続き、先制点も献上。決して完璧な試合だったとは言い難いが、新戦力が多いチームの耐久力を見る上で、あえてテコ入れをしなかったのならば納得だ。

宇佐美やジェバリらも出場が危うい豪華な陣容…手綱を握る指揮官が鍵

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 昨季も選手交代で後手を踏む試合は珍しくなかったが、実力者たちがベンチ入りさえ熾烈な競争を強いられるであろう今季、ポヤトス監督の采配力が問われることになる。

 広島戦の翌日となる2月11日には左ウイングでの起用が濃厚なブラジル人、ウェルトン・フェリペの獲得も発表。キャプテンの宇佐美貴史やジェバリ、ネタ・ラヴィらでさえ出場が保証されない豪華な陣容の中でマネージメント力も不可欠になりそうだ。

 ブラジルではビッグクラブどころか中堅クラブでの経験も持たず、ほぼ無名に近い――ただ、ブラジルでは無名でもJリーグでブレークする例が多々あるのがサッカーの面白さである――ウェルトン・フェリペではあるが機能すれば、ガンバ大阪史上、人数的には最も豪華な助っ人陣になるのは確実。

 1月の「キックオフイベント」で松田浩フットボール本部長はリーグ戦で7位以内の目標を掲げたが、陣容的には「上方修正」されてもおかしくない顔ぶれが整った。

「ガンバを本来いるべき場所に戻す」と就任当初から言い続けてきたポヤトス監督だが、今季、最も問われるのは、情熱に溢れる理論家でもあるスペイン人指揮官の力量かもしれない。

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